絵は見て感じることが大事で、知識はいらないという意見があります。エロゲーの場合はどうでしょうか?アナスタシア先輩が本作品のオープニングを見たら、こう言うでしょう「少し違和感を覚えたの」と。それぞれの思惑が交錯した結果は……。
オープニングを見て感じた違和感の正体は最後に明かしますので、気になる方は最後までスキップしてね!以下ネタバレがありますので、御注意願います。
本作品は単なる女装モノだけでなく、アートテイストが付加されているのが特徴です。
その為、主人公瑞希信(深山瑞希)は女装以外に秘密があります。
・実力派アーティスト瑞木杷虎の弟であること
・画家、瑞木杷虎であること
アートテイストを付加したことにより物語の魅力は増大したのですが、女装を隠す意義は薄くなったと思います。というのは瑞希が墓場まで持っていきたい秘密は画家であることなので、ルートによっては簡単に女装がバレてしまうからです。
そのため女装モノのカタルシスを期待するとがっかりするかもしれません。ただ先に女装がバレることによって、ヒロインとのイチャラブ展開を挟みつつ、物語は終盤へ向かうことが出来るのが長所になります。
本作品は短い共通ルートを経て、各ヒロインの個別ルートに分岐します。各個別ルートでは違和感は少ないですが、全体を見たときに整合性のなさが非常に気になります。(例として、怜奈ルートでは終盤まで怜奈に女装がバレなかったのに、 千晴ルートではあっさり見破られている点など多数あり。)
また共通ルートは鳳后寮寄りの話がメインで、紫月の出番は少なく、幸は名前の紹介さえないというアンバランスな構成です。モブキャラの寮生は一度のみの登場で、その後は幽霊になったのか出てきません。
いっそのこと共通ルートなし、独立した個別ルートのみの構成にした方が、整合性という点では良かったのかもしれません。個別ルートをオールクリアしてグランドフィナーレを迎える。共通ルートなくてもOK!みたいな。細かいことを気にしない・突っ込まないのが、この作品を楽しむのに重要かも?
……さて、本作品の気になる点ですが(笑)
普段聞いたことがない言葉や美術用語などが多用されています。
(キュレーション、シルクスクリーン、インスタレーション、ロココ調など)
不満点はズバリ言葉や用語の説明が少ない事です。これらの用語を多用して、アートな雰囲気をより表現したかったのは分かりますが、ユーザーに伝わらなければ、意味がありません。作中での怜奈のセリフが印象的です「芸術には、もっと広く、大衆に門戸を開いてほしい」
メッセージのルビが小さく見にくいのも気になるし、エピローグ後すぐにタイトル画面に戻り、物語の余韻を楽しむことできないのも気になります。まとめると、もっと作品に丁寧さが欲しかったですね。
さらにアート部分においては、共通ルートで、『深山の配置は暖炉の上だった。あんな場所に絵なんて掛けたら、一発で油が溶け出して駄目になる。』という一文がありますが、深山は日本画です。つまり岩絵の具、粉末上の顔料に固着材である膠(ニカワ)を混ぜたものを使用しています。膠の主成分はコラーゲン、タンパク質の一種です。油が溶け出すなら、おそらく油絵具を使用した洋画になります。つまりこの時点で、主人公は贋作に気付かないといけません。
怜奈ルート終盤、瑞希が怜奈を描くシーンで、『筆、馬とか、動物の毛を使った筆は苦手。植物筆がいいな。』とありますが、植物筆ってなんだろう???確か日本画の筆は、羊毛、馬、猫、イタチ、狸、鹿、リス、全て動物の毛。洋画の筆も動物の毛や合成繊維、そしてナイロンのはず、と突っ込んだら負けですね!!!
おまけにひとつ、千晴ルートの四色型色覚について。見えないものを見えるようには出来ないので、見えるものを見えないようにすればいいと思います。つまりUV400カットレンズを使用した眼鏡をかければ、普通に絵が見えるはず!
以上で妄想は終わりで、いよいよオープニングの違和感についてですが、みなさんは、クレジット順が気になりませんでしたか?
乙女が紡ぐ恋のキャンパスのオープニングは、
原画→キャラ(CV)→【シナリオとサブ原画が同時】→、の順で表示されます。
比較のため、いろんなゲームのオープニングクレジット順を紹介します。
※分かりやすくするために、キャラ(CV)、原画、SD絵、シナリオ以外は省略してます。
パターンA:キャラ(CV)→原画→シナリオ→
パターンB:キャラ(CV)→原画とSD絵が同時→シナリオ→
パターンC:原画とSD絵が同時→シナリオ→キャラ(CV)→
パターンD:原画→シナリオ→キャラ(CV)→
パターンE:キャラ(CV)→原画、SD絵、シナリオが同時→
パターンF:キャラ→シナリオ→原画→
キャラ(CV)を除いて考えると、
パターン1(この場合が多い):原画(+SD絵)→シナリオが続いて表示される
パターン2(まれに):シナリオ→原画(分かる人はこれだけで作品タイトルが分かるかも)
パターン3(これもまれ)原画、SD絵、シナリオが同時に表示される
参考ですが、このメーカーの過去作品は
花乙女:ディレクション→原画→サブ原画→シナリオ→シナリオ→音楽→ムービー→CV
黙ムコ:原画とサブ原画同時→シナリオと音楽同時→キャラ(CV)
今回感じた違和感ですが、
1)原画→キャラ(CV)の流れ
2)シナリオとサブ原画が同時表示!!
もっと詳細に調べた結果、オープニング開始後、
9~11秒間:瑞希の左横に原画表示
12秒:切り替わり
13~15秒:怜奈の右横 【表示なし!!】
15,16秒:校門描写
17秒~:タイトル表示
中略 (キャラ、CV 表示)
51秒半~53秒半:シナリオとサブ原画 同時に表示
まとめとして、
1)原画とシナリオの間にキャラ(CV)を挟むのは珍しい!
2)シナリオとサブ原画が表示されるのは超レアだ!!
当初はオープニング開始後13~15秒半にシナリオライターの名が表示されたのでは???
というのが真実かどうかなんてどうでもいい。
違和感を覚えてしまったことが全てあり、ライターとメーカー側の醜い争いによって被害を受けたのは、
争いの当事者を除く制作に関わったスタッフ達と歪められた作品だ。
絵は見て感じて楽しむもので、知識はいらないとするならば、エロゲーはプレイして楽しむもので、余計な情報はいりません!
いろんな意味で突っ込み所が満載だったので、個人的には楽しめた作品になったけど、すっきりしないなあ。