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no-attさんのマガツバライの長文感想

ユーザー
no-att
ゲーム
マガツバライ
ブランド
light
得点
82
参照数
1209

一言コメント

新世代バトルアドベンチャー。 蓋を開けてみれば100%楽しむためには旧世代(同ブランドの過去作)ありきの話だった。 でもまあ、そんなことは傍に置けるくらいは楽しかった。【追記あり】

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

※追記※
Switch版はいわゆる「未完成版」作品であるような記述が公式から出てきました。Hシーン以外にも主人公に関することなどの内容が歯抜けである可能性が出てきたので、点数は一時的に取り下げさせてもらっています。レビューは掲載時のままですが、必ずしもX(18禁)版と同様の内容について書かれているとは限りません。


※追記2(2022/08/15)※
点数は元に戻さず、再計算したものをつけました。

作品への好感度   B(S・A〜E)
他人へのおすすめ度 D(S・A〜E)※シルヴァリオシリーズ必修


各ルート・エンディングの感想、総評の順になっています。
やった順:共通→彌瑞璃→西環→亜麻袮→翼→しおん
評価:しおん>>翼=共通>亜麻袮>西環>>>彌瑞璃



共通ルート
このブランドの作品では珍しく、五章ある尺のほとんどが日常シーン。人によっては退屈の極みかもしれません。特にlightや燃えゲーを愛好してる人は、日常シーンに飽きやすい傾向があると思うので…

私個人は物珍しかったので楽しめました。せっかくエロゲではなくSwitchで売ったのなら、性的な話をもうちょっと減らしてくれても良かったとは思いますが。
ソシャゲ、課金、YouTuber、村の危機もスマホさえあれば誰かに託せる、元号が令和…など、昔の作品ばかりやってる私はあまり遭遇しないような話題とたくさん遭遇したのも面白かったです。


彌瑞璃エンド
Hシーンくれ。


西環エンド
Hシーンくれ。


亜麻袮(義姉)ルート
このメインライターの描く「甘やかせ系キャラ」は結構どぎついのが多く、もとよりかなり好みが分かれるのですが、個人的には今回のヒロインは割と良いと感じました。顔芸連発も新しかったですし。

またラスボスの片割れである灰厭が使ってくる「界式」の能力についても、前作までは良いものとして扱われてきた力が、クソ以下の外道行為をするために使われるというところが面白かったです。

話をまとめすぎ、コンパクトにしすぎな気はしたものの、見方を変えればいつものくどさが減り、助長すぎずよく纏まってると思いました。


翼(TS?娘)ルート
ルート担当ヒロインは、発売前から物議を醸していた「TS(性転換)ヒロイン」。

TS愛好家の方々に、このキャラクターをどう受け止められたのかはわかりません。
私自身は100%TSヒロインだと断言はできなかったものの、TSものでありがちなエッセンスは感じたため、おおむね良かったと思います。シリアス?系作品でいわゆるTSファン向けの完全TSヒロインを出すにはlightやこのライターじゃちょっと無理かな…感はありましたし。

このルートは姉ルートでは共通ルートで姿を消したままだった一応ライバル枠の一也と、ラスボスの片割れである羅睺が敵でした。
主人公VS一也は嫌いではないもの、話の決着がうーん、って感じだったのでなんとも言えませんが、今回は羅睺が面白すぎました。

羅睺はとにかく自由気ままに動き回り、disりたくなったら容赦なく鼻で笑いながら相手をdisる。頭空っぽの考えなしのように見える瞬間もありながら、裏で様々な保険をかけていたり…と、とにかく今までの同ブランドの作品の敵とは考えられないくらいの無秩序・無軌道っぷり。話し方もおどけていて面白く、やってることは最低最悪。
プレイしていて単純にクソだな、となりムカつきや笑いに昇華できていました。

今までの敵は何か崇高な使命を背負っていたり、神だったり、神に近い存在だったり、国のトップだったりと、やらかすことに同情の余地がある部分や主人公の考えよりむしろ共感してしまう部分があったりしました。
ですが今回は全くそのような気持ちにさせられなかったので、素直に敵として殴ることができて大変気持ちがよかったです。

羅睺(と灰厭)VS彌瑞璃は作中でも五本指に入るくらい好きなシーンです。


しおん√
主人公の祖先が調伏した、元々因縁あり系貧乳人外のじゃろりヒロイン。この手の単純に動作や発言が可愛いキャラが描かれたことが今までなかったように記憶しているので、他の美少女ゲームブランドならありきたりなキャラな気もしますが、新鮮に映りました。
あと北大路ゆきさんの声もドンピシャでハマってました。演技が良かったです。

ルート全体の話自体は割とストンと腑に落ちる作りで、前作ラグナロクで感じたバトルやレスバが長すぎて辛くなるようなこともなく、絆や家族などのメインテーマのゴリ押し感も特に感じなかったところが良かったです。

特に良かったのは一也と浩太郎。
一也は予想よりも登場時間が短く、主人公とはほんの少ししか関わっていません。ですが彼はこの1ルートで辿った変遷に面白さが凝縮されていました。翼ルートは彼にとっては実質バッドエンドでしたし。

浩太郎は逆に登場時間の積み重ねが功を奏してきたキャラクターで、男性キャラでは主人公、羅睺の次くらいには出番が多かったと思います。姉ルートで完全に灰厭に敗北した復讐鬼・ディランが灰厭にリベンジマッチする機会を得たのも驚きですが、それを助けたのが浩太郎というのも驚きです。
ライターの描く裏の全くない親友キャラというのがどういう風になるのか、一也にキャラが負けないかどうかとても心配でしたが、杞憂に終わって良かったです。



その他
・コンフィグ(効果音については2/3のパッチで修正されました)
どうやら一部の効果音の処理が通常とは違うらしく、どれだけ音を調整しても大爆音で流れます。爆発音や金属音に顕著に見られ、戦闘シーンが全体的にとてもきつい。イヤホン非推奨。
また演出が重なった時や選択肢スキップやバックログを開く時等、全体的に過去のエロゲCS移植より動作が重たいです。なんで?


・原画
ビジュアル面では新しくすめらぎ琥珀先生を迎えての新規スタイル。
奇抜で派手、個人的にはとても良かったと思います。顔の表情差分も過去作に比べればとても多く、目まぐるしく表情を変えるキャラクターたちは見ていて楽しかったです。
そのかわりSD表現は無くなってしまいましたが…



総評
前作『シルヴァリオラグナロク』で一度シルヴァリオシリーズが終わったと思ったら、『マガツバライ』として形を変えて要素を引き継いでしまった本作品。

目指したところはTYPE-MOONの『月姫』と『Fate』くらいの関係なのかと思ったのですが…
ソシャゲネタに始まり、果ては羅睺が世界の向こう側を見てしまったり、今作の最強技=前シリーズの最強技だったりなど、過去作ファンへのファンサービスが楽しいラインを通り越し、あまりに過剰でした。

新規ユーザーの開拓にも適していなければ、従来のファンも少し「うへぇ」となる量の過去作ファンサ。どこの層へ売りつけたかったのかがとても謎。

ただライターの持つ従来の説教臭さ、モラハラ要素、文章のくどさは目に見えて減り、新生lightなりの「新世代バトルアドベンチャー」を模索して行き着いた一つの結果なのだろうと感じました。
シルヴァリオシリーズ要素を無視しても、話の質にあまり変わりはないですし。


シナリオ全体に関してもご都合主義、エンディングで某キャラを生き返らせるために一度殺す展開(ラグナロクよりはマシ)、シリアスなシーンに該当する部分の全体的な茶番劇感、明確に羅睺と玄之丞(一応ラスボスの元弟子、主人公の兄貴分キャラという大事な位置のキャラクター)のエピソードが省かれている、一番まずいのでは主人公の影が割と薄い(序盤で多少過去を語られる程度)などストーリーに関しても割とたくさんの不満点があります。不満点はあるけど、羅睺・一也・彌瑞璃など一部のキャラクターがクリーンヒットしたところがあり、信者ブーストもあってかこの点数になりました。

前作・シルヴァリオラグナロク後はlightの今後に対する不安感に襲われていましたが、それがある程度払拭されました。これからも高濱亮氏とlight作品のファンであり続けようと思えた一作でした。

個人的にはSwitchではなく最初からエロゲで出してほしかったと思いつつも話自体はとても楽しめたため、エロゲ版が出ても買うつもりです。今後はなるべく過去作品と切り離した完全新シリーズ、もしくはこの作品のFDの展開に期待しています!