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no-attさんのAIRの長文感想

ユーザー
no-att
ゲーム
AIR
ブランド
PROTOTYPE
得点
82
参照数
67

一言コメント

往年の泣きゲーの名作。未だに名作として語り継がれるだけのポテンシャルがあったと感じた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

作品への好感度   B+(S・A〜E)
他人へのおすすめ度 A(S・A〜E)

各ルート・エンディングの感想、総評の順になっています。
プレイ順:佳乃→美凪→観鈴→SUMMER→AIR→初空の章
評価:SUMMER>AIR>美凪>>>佳乃
評価不能:観鈴



共通
主人公があまりに話し下手すぎてびっくり。自分のプレイした作品の中ではその点においては過去一酷いのではなかろうか、となりました。時々善人な面も見せますが、ヒロインから貰ったものは受け取らないわ、飯盒盗もうとするわ、敬語は使えないわ、ヒロインとの約束はブッチするわでかなり驚きました。ぶっきらぼう主人公の枠を軽く飛び越えています。正直な話、大道芸人の主人公をこういう造詣にする必要があったのか謎です。今までどうやって生きてきたんだろう。


佳乃√
佳乃と主人公がなぜ恋愛をしているのかが全く理解できず、困ってしまいました。霧島姉妹との日常は楽しかったものの、主人公が佳乃のどういうところに惚れたのかがほぼ描写されないため話についていけませんでした。そうして気がついたらベッドで合体していて口から泡が出ました。
泡を吹いてるうちに次いで展開されたのは謎ファンタジー(説明なし)でさらなる困惑。中盤以降は個別√としてはガッカリの極みでした。


美凪√
ヒロインがヒロインとして魅力的だと感じただけでも良かったと思います。普段は感情が見えにくい彼女が、後半に行くにつれて少しずつ感情が見えるようになっていく描写が心に沁みました。みちるに関しては小さい子が頑張る姿に弱いのでやはり号泣。
バッドエンドも丁寧で、非常に好感を持てるシナリオ運びでした。

にしてもふわふわ系ヒロインの身長が170センチ近いのはかなりレアだと思います。


観鈴√
他と比べてもかなり短い話で、これ単体での評価は難しい感じでした。正エンドも含めほとんどのエンドで観鈴と主人公は離れ離れになるのが辛く、観鈴が何をしたんや…!と一人で少し怒っていました。


SUMMER編
いきなり舞台設定や登場人物が変わり驚いてしまいましたし、少し展開を巻きすぎな気はしましたが、それでも何か胸を熱くさせるものがありました。
SUMMER編主人公の柳也、ヒロインの神奈と裏葉がそれぞれ魅力的で、先に待つのが別れだと薄々わかっていても思わずずっと一緒にいてくれ!と思いながら読んでしまいました。特に裏葉は自分好みの立ち位置であり、急にAIRにのめり込むことになった原因でもあります。まさか裏葉みたいなヒロインにこの作品で出会えるとは思わなかったため、嬉しくて思わず舞い上がってしまいました。


AIR編
カラスの“そら”の立場からもう一度DREAM編観鈴√を読み返すという構造のため、シナリオ上見たことある展開が非常に長いです。しかし時々挟まる裏話や、主人公である往人を一歩引いた目で見るのは楽しかったです。
往人が消えて以降は母娘の話になり、そこからはもうみちるの話を超えるほどの号泣。流石に泣きすぎだろ…とヒくくらい泣いてしまいました。


初空の章
好きなキャラである裏葉の話。一枚絵のテイストが変わってしまったことや、雑に場にそぐわない本編使用イラストを使ったことは微妙だったのですが、内容は良かったです。



総評
特に終盤は名作泣きゲーの名に恥じぬ作品だったかと思います。時が過ぎても母娘の愛の物語は色褪せません。反面、主人公が終盤一切目立たないことに対してはやはり受け入れづらい部分がありました。
総合すると、主人公が絶対目立たなければダメ!という人でない限り万人に受け入れられやすい作品だろうという感想になりました。