ヘルミリアさんがただただ愛おしすぎる作品
終わった後確かな満足感を得られる素晴らしい作品でした。
ヒナギク√は設定が良かったし、ハルカ√は単純に知的好奇心を刺激され、ティア√は私服のデザインが好みすぎて小躍りしていましたが、
自分の中でそれらを超えて、更なる高みへと連れて行ってくれたヘルミリア√があまりにも好きなためそちらについて書かせて頂きます。
ヘルミリア√は主人公とヒロインが死ぬ前の境遇を共有できている唯一の物語だと思っています。
お互いに辛い家庭環境が原因となっている点、主人公は現実世界でのヘルミリアの自殺を見てから自分も死のうとしている点、
そして現実世界の主人公をもヒロイン側から救える可能性があったという点です。
最後に総集編的なお話こそありましたが、そもそも現実世界からのアプローチで主人公を救えた物語はこれしかありませんでした。
共通の段階から魔王関係の嘘はプレイヤー側にも完全に見えており、
ヘルミリアが考え方の軸を持ってこれらを発信しているわけではないことが分かります。
基本的に素直になれない、上手に気持ちを伝えられないヒロインだったのですが、
個別全体を通して、神ちゃんさんの世界のリセット的なあれこれを経ても2人で成長していく物語にはとても心を打たれました。
1回目ではヘルミリアの記憶の状態がリセットされてしまいますが、主人公側のアプローチによってヘルミリアを救い出していく。
2回目ではヘルミリアが現実世界の記憶を忘れそうになっていますが、それではよくないと主人公と共に脱出しようとする。
そして最後現実世界ではヘルミリア側からのアプローチで主人公が救われるので、助けた分だけ助けられる関係が構築されているんですよね。
一方的な愛情の押し付けにならない対等なやりとり、これが大好物です。
そして何と言っても主人公がヘルミリアに秘密を打ち明けるシーンが大好きでした。
自分がなぜここにきてしまったか、それを打ち明けることは相当な覚悟を有することで、完全に自分自身の過去の共有なんですよね。
2人が境遇を共有することができるようになったこと、そこから助け合いながら2人とも成長できたこと、それが物語としてとても愛おしかったです。
主人公視点、屋上で突然同級生に告白されて自殺を止められるというのも良く分からん展開ではありますが、
ヘルミリア側の成長と決意が凄すぎるのと、結果的に2人して現実世界で歩んでいく勇気が持てたというのが素晴らしいところです。
ここまでして得たものが飛躍した展開にならず、現実世界で小さな幸せを噛みしめながら生きていくというのも好感触で、
本当にここまで成長できてよかったなあという感想しか出てこない、自分の琴線に触れる大好きな展開でした。
それはそうと現実世界のヘルミリア可愛すぎる。
CV月野きいろさんである点は随所に生かされていますが、最後ちょろっと出てくる主人公の(一応)母親を怒鳴りつけるシーンの演技が特に好きです。
こういう演技は他作品でもありましたが、やはり叫ぶシーンでの感情の乗せ方が本当に上手くて思わず拍手してしまいましたね……。
ここから先は本編とはあまり関係ない話になってしまいますが、ヘルミリア√と本質的に似た部分があるユメミルクスリという作品があります。
(向こうのネタバレになってしまうため未プレイの方は読まなくて大丈夫です)
ヘルミリアは魔王の皮を被っていましたが、あちらの作品ではケットシーねこ子が薬物を使って暴れ回っています。
結果的には薬物から脱却し、普通の人生を送れるようになるまでがメインのお話である点において本質的にはあまり変わらなく、
そのために主人公の存在が必要不可欠であること、主人公がそのきっかけを作ること、
更には最終的に物語の展開を小説などに生かしている点なども含めて似ていて、プレイ中思い出してしまいました。
自分はユメミルクスリのねこ子√も大好きだし、当然ヘルミリア√も同じくらい好きなのですが、
その根幹にはヒロインが現実に戻ってきたときにあまりにも普通の女の子であるというギャップがある気がします。
なんや賑やかな見た目をしている状態で出会い、当然言動も賑やかな感じではありますが、
深堀していくと本当に普通の女の子で、そう生きるための最初の一歩を踏み出すお手伝いができる作品なんですよね。
今作も初めて現実世界の留美としての外見を見た時には本当にワクワクして、そこからどんどん引き込まれていきました。
この子が心の中に魔王としての姿を飼っていて、あんなことを喋るようになるのか…と。
こういうヒロインを作るのには世界観の作り込みや展開づくりが大切になるので、簡単に出会えるようなシナリオではないのですが、
久々に心が躍ったし、はじ論には感謝の気持ちしかないですね。