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nezumoさんのかけぬけ★青春スパーキング!の長文感想

ユーザー
nezumo
ゲーム
かけぬけ★青春スパーキング!
ブランド
SAGA PLANETS
得点
85
参照数
771

一言コメント

これといった総括のお話がない代わりに、ヒロインごとに完結したストーリーを楽しめる構成になっている。どれもそれぞれのキャラクターが求める青春が語られていて、いろいろな魅力がある作品だった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「青春」という漠然とした概念を個別でのイベントに落とし込み、
ヒロインの良さを生かしたシナリオが展開されているのがとても良い。

キャラクターによって満足度にムラはあるものの、どれか極端に悪いというわけではなく、
好みの問題で誰でも好きになれそうなのがポイントだと思う。

各個別のイメージとしては、

・「栞里」「凪子」:自分のやりたいことを追求する
・「理々」:恋愛を主軸とした青春を追求する
・「響」:1人じゃできないことを部活動の仲間たちと完成させていく
・「律」:兄妹の生活と家族を主軸にした青春
・「橘花」:自分がやり残した後悔としての青春

各個別の印象はあれど、告白シーンが絶品だったのが響と理々だった。

2つとも専用CGの破壊力がヤバいし、告白シーンだけでその想いの強さが伝わってくる。
こんな告白されたら誰だって落ちてしまうんだよなあ……。

想いの強さとかヒロインの可愛さをこういうところに落とし込むのが上手いなと思っていて、
その点はテキストにも反映されていたと思う。
このあたりは好みの問題になるのかもしれないけど、自分はとても読みやすくて好きだった。
付き合い始めるなりヒロインが途端にめちゃめちゃ可愛くなり、
めんどくさい女の顔を度々覗かせる点も大変よろしい。

主人公の性格の良さは、凪子や栞里の話では特に際立って見えたし(対等な立場から夢を助ける存在として)、
共通ではひねくれ者のような印象を受けた主人公が、だんだん生き生きとした性格になっていくのも良い。
だからこそヒロインの可愛さが個別でついてくるというか。
もう正直個別√でイチャイチャしてるだけで満点の作品だよこれは……。


橘花√は、他の話と比べるとやはり異質なようには思える。
この話だけ「今ある青春を精一杯謳歌しよう!」ではなく「失われた青春を取り戻そう!」になっているし、
(現実の身体とリンクしているのはともかく)後悔がなくなったタイミングで消えるような展開になっていて、
そう考えると出来なかったことに挑戦するようなシナリオにもなっている。

橘花はそのまま消えて、主人公が1人立ち直って強くなっていくシナリオかと思いきや、
橘花は結果的には生き返り、別の内容で感動させるような構成になっていたので驚いた。
最後に生命力を振り絞って写真に映るのも、そのあと消えてしまうのも、
目を覚ますまで主人公が世界中を旅して、橘花の為だけに生きて行くのも全てがズルい。

プレイヤーとしての自分は橘花が目を覚ますことは分かっているかもしれないけど、
主人公には当然そんなことは分からないし、「目を覚ますかどうか分からないけど橘花の為に捧げる10年間」を生きることになる。
これが自分にできるかって言われたら即答はできないし、その愛の強さにも心を打たれてしまった。

生霊だった頃の記憶をなんでしっかり持ってるんだとか多少の疑問点はあれど、あの演出は正直泣いてしまった。
ようやく目を覚ました時に自分のために生きてくれた大切な人のメッセージを見られる人生、最高に決まってるんだよな……。

イチャラブも青春も感動も、大変満足に供給してくれる作品でした。
正直期待値が高かったかと言われたらそんなことはないものの、良い意味で裏切られましたね……。
素晴らしい時間をありがとうございました。