終盤になると突然覚醒するアイドル美麗ちゃんが好き
プロデューサーの主人公がかなり有能そうに見えたので、復讐するとしても可能なのかと疑いながら読んでいた面もあったが、
最後にはしっかりヒロインが真の顔を覗かせるような形でプロデューサーを殺しにいったのはとても驚いた。
この終盤の返し技だけでも十分プレイした価値はあったと思う。
表の顔ではプロデューサーのことを慕っているように見せかけて、裏の顔ではしっかり疑っているので、真シナリオはある意味裏の顔の方から繋がっているとも言える。
美麗の行動で興味深いのは、ちゃんと自分のアイドルとしての才能や魅力、今の状況を分かった上で、
それでも自分の周りの人を巻き込んだプロデューサーを殺すためだけに行動しようとしていた点。
訳の分からない男たちに犯されて、お仕事だから仮初の笑顔を作って出かけようとするところで作品は終わってしまうが、
このワンシーンを切り取るだけでも、元居た清純派アイドルみたいなものとは程遠い、すっかり裏の世界に染まってしまったアイドルの顔が伺える。
生きてるのか生きてないのか分からないようなこんな状況でも笑顔を作って出勤しようとするところに狂気を感じるというか。
こんなんでも騙されるファンの人たちがしょうもないとか考えてそうだし、吹っ切れて完全に達観しているようにも見える。
ちなみに、天使や堕天使が売れかけたアイドルがもう一度地に落ちるような題材なのと比較してみると、
こちらはむしろ美麗自身はアイドルとしての伸びしろはまだまだあるように見えなくもない。
物語が始まる地点では落ち目だったとは言え、枕の評判も上々みたいだし、どうすれば男が喜ぶのかをしっかり考えて立ち回っている。
エピローグの全能感から読み取るに、その気になれば自分から売れに行くことはできそうだし、
何なら殺しを手伝ってもらった男たちを上手く巻いて普通の芸能生活に戻ることもできなくはないように感じる。
何より死ぬ直前まであのプロデューサーに疑われなかったのが凄い。
ただあんなにすんなり殺せるのかと拍子抜けはしたので、もうちょい終盤のベッドで決意してから殺しにいくまでの過程を掘り下げて欲しかった。
余談だが、詩乃があんな状況になっても芸能界に食らいつこうとしているのは純粋に凄かった。
今思うと、手垢塗れの天使のメインヒロインの立ち位置がこの作品における詩乃の立ち位置になっている。
どうせなら最後まで見届けたかったのに、AVデビューで話題になるところまでしか描かれていないのは少し残念だった。
ここから先は主人公には認識できない、そういう世界に行ってしまったんだろうなあと思った。