椿と都子さんについて
同じ朱雀院の家に生まれながらも、2人は才能の壁に阻まれている。
都子さんは小さい頃から椿には負けないくらいの実力があって、実際それは朱雀院4姉妹でも一番上だと言われていた。
まあ他の2人が椿恋歌含めて全く出てこないので比較はできないんですが、少なくとも椿よりかはかなり上の位置にいるのだと思う。
都子さんは、箱庭で勝つことに興味を見出せなくなったから突然家出したと言っているので、少なくとも朱雀院の家が用意する敵なんかは全くどうでもよかったことが分かる。
だからこそ自分で家を出る決意ができたのだろうし、自分よりも強い人に出会いたい、そのために自分は死ぬ気で強くなりたいという絶対的な目標がある。
負ければ死ぬような限界領域の場所に自ら身を置いて、ひたすら自身の腕を磨きあげていく。
こういう状況に加えて、朱雀院で一番の才能が相まって、場数を踏むごとに意味不明なくらいどんどん強くなっていったことは容易に想像できる。
これと同じことが椿にできたとは思わないし、仮に同じ状況に身を置いたとしても、椿では成長速度が一歩劣ってしまうのは事実だろう。
しかし椿が全くもって弱いというわけではなく、少なくとも学園内という狭い世界では1位になれる実力を持っていた。
これは長年朱雀院という家が椿に与えた経験、もしくは椿が日々死に物狂いで努力していることに裏付けられている部分が大きい。
現に桜夜みたいな勝負を心の底から楽しんでしまうようなタイプにはどんどん追いつかれてしまうし、
なんなら葵さんみたいな目的をもって椿を潰しにくるような人にも追いつかれてしまう。
あくまでかなり絶妙なバランスの上に成り立っている頂点の称号であって、才能を前にしてしまうとそれが簡単に崩れてしまうような危うさを常に抱えていると言える。
そういう状態で頂点を取り続けていくことは、だんだん負けることへの怖さを生み出してしまう。
勝つために全てを捧げてきたのに負けてしまったらどうなるのか、自分の存在意義を見失ってしまうのではないか、
そういう想いが勝つための試合というよりかは負けないための試合を生み出し、結果的に自分の引き出しを狭くしてしまう悪循環に陥っている。
勝つために行動していないから攻めの引き出しは広がらない。
でも圧倒的な経験値でパターンだけは把握しているから、相手の行動から勝つチャンスを掴み取ることはできる。
葵さんが言っている「椿は対戦相手を見ずにどこか遠くを見つめている」というのは、負けない試合をしているからこそ生まれてくるものだと言える。
椿が見る必要があったのは、目の前の敵が誰であるか、どういう顔をしているかではなく、ただこの試合に負けなかったかその一点に絞られてしまうから。
誰が相手だろうがそんなことはどうでもよく、目の前の試合を負けないように待ちの姿勢で受け流すことだけを考えている。
中途半端な才能を持ってしまったから椿はこういう立ち位置にいる。
才能の至らない部分を努力と経験で中途半端に補えてしまうから、よほどのことがない限り負けはしない。
都子さんは箱庭の中で勝ち続けることがだんだんつまらなくなってきてしまったから、自分の道を選択した。
椿は箱庭の中で勝つことに精一杯になってしまったから、負けない刀の道に進んでしまった。
やっぱり2人の差は才能で、ここだけは埋まることがない。椿が刀輝くんのおかげで自分の道を進めたとしても、おそらく都子さんには追いつけない。
それでいて2人ともが一番強いものとして描かれてしまう。都子さんはおそらく作中1位、椿は学園で1位。
実際椿が負けるシーンって椿√でしか出てこないんですよね。椿√以外では間違いなく学園最強。
他の個別では椿は一番強い、勝てない目標として描かれていて、強いという部分ばかりが取り上げられてしまう。
これを意図的にやっているなら本当に凄いと思う。
本当は椿自身も苦しんでいて、都子さんに及ばない才能を必死に努力で埋めながら葛藤していることは、椿に深く触れないと分からない。
まあなんだかんだで自分は2人とも好きです。
ストイックに強さだけを追い求め、最強の相手と死合いをすることを目標にしている凄まじいまでの強さへの拘りは純粋にかっこいいし、
自分より上の人がわずかながらにいることの苦しみと葛藤はまさに人間が感情を出して悩んでいるという印象が強い。
それでも都子さんになれる人なんてほんの一握りで、自分は多分椿にすらなれないので、椿の方が共感はできるし考えていて面白い。
でもやっぱり強いメイドは好きだから都子さんも大好き。