琴莉との運命をいろんな視点から考えてみる作品。1人のヒロインに向き合い続ける作風が大好き。
出会いから終わりまで、琴莉がこの作品にとって非常に大切な女の子であることを強く感じさせる内容でした。
琴莉√は勿論、結局他の個別でさえも実質琴莉√みたいなものなので、
他のヒロインの恋愛面での良さが殆ど琴莉に持っていかれてしまっているのはいかがなものかとも思いますが、
全シナリオを総動員して琴莉との運命を描き切ったと考えると、他ヒロインが舞台装置であることも清々しく思えてきます。
本来生きている者と死んでいる者は交わらないので、真と琴莉の恋愛は成立するはずがありません。
特殊な世界観なので基本的にはなんでもありですが、琴莉が自分は生きているんだと思い込んでいた間はともかく、
自分は死んでいると認識した以上、やり残したことを終わらせて成仏する必要がある。
本来飼い犬の件が終わったら成仏するべきであるはずだったんですが、そもそも自分が死んでいると認識していないのでそれができず、
その間に真との運命的な出会いと恋愛をしてしまい、それが本作全体を通して描かれる運命的な恋愛に繋がっていきます。
琴莉エンドは2種類ありますが、真が現世に引き留める終わり方は、運命論はともかくとして全くもって納得がいきません。
真は成仏寸前の琴莉を引き留めてしまったという感情が少なからず残るし、琴莉は自分が本来は成仏するべきだったと悟りながら生きていきます。
幸せそうに描かれてはいるものの、結局2人とも何かしらの後ろめたさを抱えながら生きていくことになり、
2人が納得してちゃんと結ばれているとは言えど、モヤモヤの残る終わり方になってしまっているように思えます。
ただ、この終わり方だけは2人ともが作中序盤からの姿のまま結ばれるので、ある意味で正しい姿だとも言えるような気はします。
それに対して琴莉が素直に成仏する終わり方は今作で一番しっくりきました。
本来琴莉は生きている者とは交われないので成仏するものの、しっかり気持ちを伝え、真はそれを受け止めて次に繋げていく。
エピローグでは琴莉との運命を示唆するような生まれ変わった2人が結ばれる描写があり、
たとえ作中での2人が結ばれていなくとも、いつか生まれ変わった先では結ばれるということが確約される。
つまりは2人は魂で結ばれているということになり、2人の結びつきの強さが伺えます。
この終わり方だけは、真が生まれ変わっても結ばれるということを主張してくれます。
運命で繋がれている2人は切っても切り離せないんですよね。
離別的な終わりを演出しておきながらも、最終的にはそういう描き方をしている点が大好きです。
他の3人の個別についてですが、これも琴莉がどのような形で真の傍で生きていくかという選択肢を描いているにすぎません。
結局どの個別に入ろうとも琴莉の存在は切り離せず、琴莉の存在が強く主張されてくるようにできていて、
そこが他ヒロインの純粋な恋愛を遮るところであり、琴莉を運命の存在として描くための説得力を高めるズルいところでもあります。
由美√では琴莉は恋人の由美と切っても切り離せない関係として真の傍にいるし、
梓√では梓との子供という形で琴莉の魂が生まれ変わるし、
伊予√では偶然出会う子犬として生まれ変わり、それを偶然真が拾うことで傍にいることになります。
少なくとも作中では、真がどのような選択肢をとっても琴莉との関係は切り離せず、
全てのパターンにおいて琴莉の魂は真の傍で生きることになる。
特に犬になる、子供になるというのは、魂を引き継いで生まれ変わるという運命の結びつきに更に説得力を持たせている気がします。
結局真と琴莉はどうあっても出会う運命で、生きている中で離れることができないんですよね。
それを作中通して描き切っている点が本当に素晴らしい。
真は普通に生きていて、琴莉は死んでいて、2人が普通の意味で結ばれるようなことは決してありえない。
しかし、「2人が普通に恋をして一緒に生きていく」以外の、様々なパターンでの結ばれ方が描かれています。
どのように生きようとも、結局2人は傍にいて、真は必ずそういう状況の中で生きていく。
ちゃんと隣にいられなくても、形を変えてでは隣にいられるような、
普通の意味では結ばれないけれども結果としては結ばれる、そういう恋愛の形が見られる点が自分にはとても刺さりました。