理不尽な世界で、どう成長するのか
手に取った理由はOPテーマ
本当に良い曲です それと、引き込まれるムービーと音楽でした
ceuiさんの声がよく合ってたと思います 歌詞も世界観にぴったりで、今作における1つの象徴ともいえます
従来のオーガスト作品プレイ済はけよりなのみ
それゆえに、オーガストがどんな路線を歩いているのかはいまいち確定はできないのですが、今作はどうやらメーカーとしては異端な路線だったみたいですね
ですが、普段イチャラブメインで書いていたライターさんがここまでの壮大なシナリオを書けるとは驚きです
これだけのシナリオが書けるならこれからも書いてほしいとは思いましたね
音楽も絵も良し
active planetsは専属なんでしょうか 本当に良い曲を作るなあと、感心させられました
絵についてもいつもの8月作品ですね
シリアスな話なので合わないかなとも最初は思いましたが、そんなことはありませんでした
今作における分かりやすいテーマの1つが、世界の理不尽さ
現実にも存在しうるある意味身近なテーマなんですが、それをはっきりと表した作品とも言えます
後で触れますが、とにかく最後まで救われない
メーカーファンからすれば本当に驚きの展開だったんじゃないでしょうか
世界というものは自分ではどうにもならないということを、全体を通して伝えてきています
ですがこのテーマに正面から向き合ったからこそのこの評価
それだけのものをこのゲームからは得ることができました
そしてもう1つ自分が考える今作のテーマ
それが、キャラクターたちの成長物語です
主にカイムの近くにいる人たちが、物語を通して成長していきます
断片的に見るとあんまりぱっとしないかもしれませんが、こういう見方もあったということが伝われば幸いです
プロローグ~1章
世界観の確認と、今作の方向性が大体決まってくる場所になります
自分はこの時点ですでに面白さを感じ始めました
続きが気になって仕方がないんです それくらいいい掴みの場所だったと思います
1章におけるテーマは分かりやすかったと思います
兄を殺さなければならない理不尽さと、兄を殺すことで自分の心に決着をつけるフィオネの成長です
ここで大事なのが、兄を殺すのはフィオネ自身でなくてはならないということです
それも、フィオネ自身の兄に対する気持ちに決着をつけないと、今後のフィオネの職務に対する気持ちが定まらないからです
羽化病罹患者は殺されていると知りながらも、職務を続ける決心をするためには、この過程が必要だったということです
2章
主に牢獄での生活と、エリスの依存の取り払いの話になります
この章については自分もあまり評価できないです
単純に起伏が少なく、このゲームの中だと退屈する章でした
しかしこの章がなければ、最終章の展開がなかった それくらい大事な章だとも考えます
この章のテーマは、エリスが依存から突き放されることによって、自分で考える道を選ぶようになるということだと思います
描写は少ないのですが、これが5章の、カイムにお金を渡しに来るシーンに繋がります
人にやらされる人生を辞めて、自分のやりたいことをする人生を選ぶ、これが、エリスの中の成長になります
3章
舞台は一気に上層へ 空中都市の謎に迫ってきます
この章で大事なのは、
カイムの視野が牢獄民視点から上層民視点へと切り替わり始めること
聖女が都市を浮かせているのではないことを知って、コレットが何を考えるかということ
この2点になると思います
上層へと足を踏み入れることによって、牢獄とは全く違った環境の中で、全く違った思想に触れることになります
ここから始まる上層民の見方が、5章のカイムさんの優柔不断さにも繋がってくるというわけです
そして、コレットについて
3章前半のコレットは、信仰心が高く、聖女としての仕事を一生懸命にこなしている人でした
それも、自分が都市を浮かせていると信じ込んでいたからです 自分の頑張りの度合いで世界が変わる、そう思い込んでいたからです
しかし現実は残酷なものです 聖女は牢獄民の注意をひくための見世物に過ぎなかったんです
これを知って、5章に入ると、聖女ではなく牢獄民の旗として、戦いを繰り広げることになります
コレットはこれについて否定の意志は見せません 自分の意志でやっていると解釈しても良いと思います
ここではコレットの成長というのはちょっと無理があるかもしれませんが、聖女としての自分と決別し、牢獄民の旗として頑張る姿は、1つの成長の形ととってもいいのではないでしょうか
4章
上層の王女であるリシアの成長と、何より世界の謎が解ける話です
この章の評価が全体的に高いのは、メッセージ性が読み取りやすかったからだと思います
実際ここは自分も良い章だと思いますし、最終章への繋ぎを十分に果たしています
分かりやすいテーマとして、リシアの成長と、悪役の打倒があります
ただの何もしないお転婆な王女だったが、牢獄の現実を知り、それの解決のためにひたむきに頑張る
そして最後には刃にも屈しない意志を見せてヴァリアスを説得する
好きで生まれたわけではないという感情から、王女としての役割を精一杯こなそうという感情への、本当に分かりやすい成長の形になります
あとは、諸悪の根源であるギルバルト殺しです
本当に分かりやすい悪役です 私事に盲目になるあまり、世界を崩してしまう
分からない感情ではないのです そして、この感情との葛藤がカイムの中で行われるのが、5章になります
5章
今作のメインであり、理不尽さを一番に感じる章でもあります
この章は基本的にはカイムが右往左往してるだけです
一般的に評価が低いのもそのせいだと思います
どうしてこんなにだらだらしてるのか、さっさとティアを助けに行け
そんな感情は自分にもあったし、途中は同じことの繰り返しだったのも事実です
しかし、自分はこの章は高く評価します
逆に考えると、このカイムのじれったい葛藤がなければ、ティアを救うという決断には至れないからです
いつまでも迷ってないで早く助けろ、と思うのではなく、
こんなにも迷ってる理由はどこにあるのか、こう考えるだけでも大分面白くなると思います
ティアには世界を助ける力がある、でも彼女が苦しむのを見てはいられない、こんな葛藤だったのではないでしょうか
人物に置き換えれば、ギルバルトになるかルキウスになるかです どっちを選ぶにしろ、捨てなければならないものがあるということです
そりゃあ世界単位のものが天秤にかかってるとしたら、迷うのも当然です
こんなの決められるわけがないとひたすら迷うのが、5章の根幹であるということです
最終的にカイムは、エリスが後悔しないために自分のやりたいことをやる様子に感化され、ティアを助ける道を選ぶことになります
ここは、エリスに言われたから助けに行くというよりは、エリスの行動を見て、自分の意志を再確認したと取ることも出来ると思います
しかしティアも決意を固めていたんです
カイムさんのためなら自分が消えて世界を救った方が良い
そう考えるがゆえに、最終的にはカイムの意志とは正反対に、ティアが自ら世界のために消える道を選んでしまいます
ここに見られるのは、世界を天秤にかけてもなおティアを助けようと決心する、カイムの心の成長
ティアが自分の意志でカイムさんのために世界を救おうと決断する、心の成長
ティアの成長はすごく分かりにくいです だからこれは自分の考察でしかないのですが、
一度覚醒しても尚、カイムの言葉に耳を傾けることができたのは、心のどこかにこの意志があったからではないかと考えます
この2人の決断はすれ違うんです お互いが正反対の決断を下しているのだから当然です
しかし、最終的に優先されるのはティアの意志、プレイヤーからすれば、カイム視点を見ているわけですから、理不尽の塊なんです