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nejimakidoriさんのONE ~輝く季節へ~の長文感想

ユーザー
nejimakidori
ゲーム
ONE ~輝く季節へ~
ブランド
Tactics
得点
80
参照数
453

一言コメント

現在のエロゲー業界の流れを作った始祖的作品。すべてはここから始まった

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

elf、アリスの2強+F&Cのすくみにリーフが『to heart』で殴りこみをかけた時代。
elf、アリスはエロゲーにゲーム性を持たせるジレンマに悩みつづけ、
その隙にF&Cは「質のいい原画師」と適当なシナリオの大量生産で真っ向から挑んだ。

リーフはその戦いに『雫』『痕』で培った、シナリオの力を全てキャラクターの萌えという物に集約させた。

これがエロゲーでの萌えの勃興であるといえる。

しかし、皮肉にもそれはエルフが『DK4』『YU-NO』等で、アリスが『闘神都市2』『デアボリカ』『アトラクナクア』等で育てられたシナリオ重視ユーザーが行き場を失ったことを意味していた。

『雫』『痕』で「リーフなら、リーフならきっとなんとかしてくれる・・・・。」
そう思っていたユーザー達は『to heart』で愕然とした。

そう、リーフはあろうことかいままでのリーフユーザーが忌み嫌っていたF&C的な路線に進んでしまったのだ。

そしてリーフはF&C的路線、すなわちキャラをグラビアアイドル化し、ゲームだけでなくその他のグッズ商品でも利益を上げていくという方式で成功を収めた。この成功により
(もう一ついえば、ホワイトアルバムの失敗)リーフは以降シナリオ重視の作品は陰を潜める。

そういった時代背景のもとにoneは生まれた。
設定とか画面とかは明らかに『to heart』のパクリ。
この頃散々生まれた、劣化『to heart』か、と誰もが最初は思った。

しかしそれもendingまで行くと誰もが悟る。

「これはfakeなんかじゃなく、 only 『one』」だと。

『to heart』のシナリオが劣っているわけではない。こと「キャラに萌えさせる」、この一点に絞れば『to heart』は最高の部類に入る。

だが、『one』のシナリオは「いかにユーザーを感動させるか」に特化している。
もちろん、現代であれば感動させることにおいて同程度のレベルのシナリオはたくさんある。『Air』や『CLANNAD』に比べればまだまだ荒さが目立つ。
しかし、この時代においてそれはまさにエポックメイキング的なシナリオであった。

もう少し説明すると日常パートで笑いを提供し、個別シナリオで鬱にしていき、
クライマックスで泣かせる。この現在のエロゲーの一連のテンプレはこの時に誕生したといえる。

そうして、シナリオ重視ユーザー達は気付いた。
「われわれが求めていたものはグラビアアイドルではなく、女優なんだ」と

そしてこの気付きでエロゲーユーザーの中で派閥ができた。

エロゲーはあくまでエロのためのもの
エロゲーは萌えのためのもの
エロゲーはシナリオ(演出含む)のためのもの

厳密にはこの三つの派閥は互いに重なっている部分も多いが、
掲示板上での論争は基本的にこの派閥のどれかの代表者のような人が
自分と趣旨の違う派閥を叩くことから始まる。

そういう負の意味においてもエポックメイキングな作品とも言える。


しかし当時は、ここまですごい作品になるとは思わなかったので現在の評価は異様っちゃ異様かも。

もちろん、シナリオの良さには気付いていたんだけど、薦める人、薦める人に「絵がへぼいから嫌だ」って断られたあの時代・・・・。

俺「to heartの絵も似たようなもんだろうが・・・・」
友人「いや、東鳩はあれは下手でも光るものがあったんだよ。これはないwww」
俺「つーか、to heartの時も俺が薦めなきゃやらなかっただろ・・」
友人「まあ、それはそうだが、これは東鳩とは格が違うよ」
俺「今に見てろよ、いずれこの絵が今の東鳩より上の地位に立つことになる・・・」
友人「それはないわwwwwwwwwwwww」

その友人が言った『Air』が発売された後の一言

「本当にお前の言った通りになったな・・・・」

実はこの頃、『月姫』の噂だけ流れてて、自分は手に入らない状況だったのでそんな話どうでもいいくらいパニくってたんだが今思い返してみれば、自分も一つの時代を見たんだなと実感する。