ストーリー、絵、テキスト、どれも同人としては高いレベルでまとまっており、少し不安だったボイス面も商業には及ばないものの十分なレベル。ただ、構成としては主人公視点と主人公+ヒロイン視点が用意されてはいるが、全体で見るとやや寝取り男主体の物語になっているように感じた。厳密な寝取られ作品としてはヒロインの描き方に欠落している部分があるが、それをどう捉えるかによって評価が変わってくる。
シナリオの問題点としては
まず、ヒロインが寝取り男に従う理由が希薄であること。
これは寝取られ物ではよく問題になる部分だが
男と関係を持ち続けるよりは真相を打ち明けたほうがどう考えても利口だと思える。
疑心という引け目があったにせよ処女を奪われたという事実だけならばそこまで必死に隠す必要はないのではないか。
最終的には初めから肉体面で堕ちていたという様な言及はされているが
それならもう少しそれを確固としたものとして仕込んでおくべきだと思う。
上記と伴ってクリア後にいまいち釈然としない、何か引っかかりを感じるのは
ヒロインの主人公に対する愛情があまり伝わってこない点である。
2人の間で何か印象的な出来事がなかったのも大きい。
結局の所デートは2回ほどだし関係の進展も手を繋いだだけ。
コンセプトとして付き合い始めた恋人が寝取られるというのを描きたかったというのは分かるが
それにしても関係が浅すぎて、奪われた時のショックが少ない。
この寝取られる理由の希薄さと恋人同士としての関係性の希薄さ
その2つが原因で寝取られに求められるガツンとした焦燥感というものが足りない。
シナリオの構成としては主人公視点と主人公+ヒロイン視点という
ほとんど寝取り男の視点が介在しないにも関わらず全体を通して見ると寝取り男が主役だったのではないかという感覚に陥る。
主人公が真相を知らずに終わるのは1つのアイデアとしては有りだとは思うが
寝取られ作品は主人公が味わう衝撃や絶望が重要だと考えるものとしては
その点では物足りなさが残る作品だった。
少なくともヒロインが主人公の何処に惹かれ、どのくらい愛情を持っているかをもっと描くべきだと思うし
両者の告白のシーンの後でヒロインが自宅でどんな想いで過ごしたのかがまったく描かれないというのは
主人公は無論、ヒロイン目線というよりは寝取り男目線でのシナリオの構築がなされていると感じてしまうのは無理もないことだと思う。
他のレビュアーの感想を見ると「性悪女」や「殴ってやりたい」等の意見があったが
個人的にはそういった感想は持たなかったし、寝取られ作品のヒロインにそういった要素を求めてもいない。
主人公を悪く言うというのは性格が悪いからではなく寝取り男に屈服された結果であるべきであってその点を履き違えてはいけないし
そもそも性格が悪い女ならば寝取られても何の衝撃も受けない訳なので、寝取られとしての根底が崩れてしまう。
ただ、このような意見が出ることがおそらくこの作品のヒロインについての「煮え切らないもの」の原因であり
彼女をどういった立ち位置や背景で見せるかは描き方の問題だろう。
主人公はヒロインが魅力的だから惹かれるのであって、それはプレイヤーも同様である。
愛し合うもの同士が奪われるからこそ、そこに寝取られとしての意味が生じるのであって、
ヒロインに対して負の感情が生まれるのは寝取られとして焦点がズレていると感じる。
エロに関しては絵は高品質で
差分や尺、ボイスも問題なく、淫語もそこそこあるので値段を考えれば十分なレベルだと感じた。
欲を言えばもっと淫語を増やして堕ちてしまう姿が見たかった。
シーンの尺がそこそこ長いが、前戯や焦らしなど堕ちるまでの過程が長めで
その後の尺がやや狭まっている感があるのでその点では少し勿体無いと思えた。
絵についてやや乳首が小さすぎる点も気になる部分ではある。
シチュとしてはハードなものは特になく、プレイヤーにとっては物足りなさを感じる点だろうか。
低価格作品ではエロシーンも限られているのでどこまでプレイ内容を広げるかは難しいところ。
フェラは4シーンほど用意されており、キスシーンも度々挿入されるのでそちらの面では良かった。
ボイス自体はチュパ音はそこそこ出ているもののイマラチオや飲み込むなどのもう一歩踏み込んだところまでは届いていないので物足りなさは残る。
■総評
同人作品であり1620円という値段を考えれば、十分な出来。
寝取られ作品としては、裏で寝取り男がヒロインを肉体によって奪う様子をただ見せられるという感じで
主人公側としての焦燥感や衝撃、後悔などの鬱方向の要素は少ない。
初めから寝取り男がヒロインを奪う気満々で主人公視点のみでもその状況が容易に察知できるので
その点では起伏の無いストーリーと言えるだろう。
個人的に寝取られ作品は主人公の視点、存在があってこそだと思っているので、
他の方の感想にもあるように、主人公が存在せずとも単にヒロインがチャラ男に堕とされる陵辱作品としても解釈できるという点が
そのまま寝取られ作品として欠落してる部分があることの証明にもなっている。
おかず度:
「だいぶ使えた」