長い共通ルートに中盤以降への期待は高まるが結論から言えばシナリオ配分のバランスが悪い。頻繁な妄想エロにテンションは下がり、リテラシーを疑われる表現もあり。作品独自の癖がマイナスに作用している。
まず誤字脱字が多い。
修正パッチを当てればマシになるが、ゲーム内にver.表記が無いので分かりづらい。
パッチ適用後も「最後」が「最期」になったままだったりと頭を抱えるシーンも。
共通ルートがかなり長めなのは加点対象だが、
プレイヤーを飽きさせないようにしたかったのか
イベントCG&ボイス付きの妄想Hシーンが頻繁に挿入されるのは難点。
『裸足少女』が冒頭に妄想エロを持ってきて大幅に減点したことがあるのだが、
テキストのみのエロ小説ならまだしも
エロゲでイベントCGとボイス付きで妄想Hシーンをやられてしまっては
それは「ヒロインとの初体験」と何ら変わりない。
プレイヤーにとっては、主人公とヒロインがキスすらもしていない日常シーンの段階であり
この先どんな流れでエロい関係になっていくのか期待しながらプレイしている状況なのに
唐突に、しかも何度も妄想によるエロシーンを挿入されてはガン萎えもいい所。
作り手は、プレイヤーが「この妄想シーン抜けるぜぇぇぇ!!!」と喜んでくれるとでも思ったのだろうか?
こういったある種のエロシーンの「ネタバレ」に近い無駄な演出は本当にやめて欲しい。
初エッチより前にフェラシーンや腹ボテHシーンまでもが妄想で挿入されるのは
流石に酷すぎるので10点くらいは減点している。
妄想で裸の立ち絵が表示されることもあったが、その程度なら許容はできる。
というのも、同居している家族ならば「裸くらいは見た事がある」からだ。
逆に言えば、主人公がヒロインの裸を過去に視認しているかが肝心なのであって、
もし裸を一度も見た事がない相手なら裸の立ち絵は表示するべきではない。
妄想というのはぼんやりとしたものであって、それはプレイヤーにとっての「画像」や「ボイス」ではない。
つまり、プレイヤーにエロCGを見せてしまっては、主人公の妄想の域を超えてしまうことになるのだ。
加えて、妄想シーン専用のエロCGではないことは確かだし
「本当のエロシーン」のネタバレになってしまうのを避けられない時点でそれが利点になる可能性は0である。
ホームページで STEP1 STEP2 と段階を踏んでエロを見せる部分を押し出している割に
初体験シーンよりも前に妄想でエロシーンを見せてしまうのは余りに理解不能な構成である。
全体の流れは、長めの共通ルート→キャラ選択ルート→個別ルートと進行していくが、
個別ルートに入ると他のキャラがパタリと出なくなってしまうのはとても残念だった。
普通の学園ものならまだしも、複数のヒロインと同居している環境なので、
彼女達との挨拶や日常会話すら一切なくなってしまうのは違和感がある。
個別ルートのヒロインとのエロシーン三昧を見せたいのは分かるのだが、
それは家族との会話や存在があってこそ際立つものではないだろうか?
舞ルートでも七菜ルートでも、伯母の佐和子は何度か登場するが、同居してるはずの姉妹は
エンディング直前の臨海学校に少し登場するのみで、母に至っては最後まで全く登場せず、
これではまるで閉鎖空間に閉じ込められその中でただエロいことをしているだけのような感覚になってしまう。
個別ルートに入るまでは家族と毎日のように
これといった内容のない会話を散々していたことを考えると、
いくらでもやりようはあったわけで、シナリオ構成のバランスが悪いと言わざるを得ない。
共通ルートから主人公はモテモテではあるが個別に入るまでは誰ともエッチせず
個別ルートは基本そのヒロインとのエロばかりなのでハーレムエロ好きは注意が必要。
システム面は、攻略対象キャラが8人も居る割にセーブ欄が100と少ない(一人当たり12個超しかない)。
スキップボタンを押しても一日の終わりのフェードアウト(約4秒)が飛ばせないのでテンポが悪い。
フルスクリーンがワイドモニターに対応しているのは良かった。
リテラシーに関しては、主人公の独白ではあるが
「先輩と普通に話せる奴が居たら、そいつはホンモノのアスペ野郎だと言い切れる」
というような文章が出て来る。
これまで数あるゲームやアニメに触れてきたが「アスペ野郎」なんて文言を見たのは
間違いなくこの作品が初だろう。
アスペルガーは発達障害の一種であるはずなので自閉症や吃音などと同等であり、
いくら低俗なエロゲという媒体だとしても一表現者が安易に使用していい言葉ではない。
これは人様からお金を取って販売している商品であり大手掲示板サイトや個人ブログとは訳が違う。
どうしても表現したいのならせめて「KY野郎」だろう。
一応、幼くして両親を亡くした孤児という設定があるので
「そういう歪んだ身の上の人間ならではの独白」のつもりなら目を瞑ることもできるが。どうだろうか?
少なくともライターはこの主人公を善人に描こうとしているように見えたが。
他にも、DQNなどのネットスラングが名前欄に平然と出て来るのも嫌悪感がある。
不良で十分伝わるし、この辺りのライターのリテラシー(情報モラル)の問題が露見している部分が多い。
総評
抜きゲーでありながら共通ルート(日常ルート)がかなり長く、
複数の攻略対象ヒロインと同居という設定もあって序盤から賑やかなので
「これは個別ルート以降にも期待できそう」と思っていたのだが、
個別ルートに入った途端に家の中は静まり返り、
ルートヒロインとひたすらHするだけというガッカリな構成。
3Pエロもあるにはあるが、それはあくまで個別ルートの最後のおまけに過ぎない。
個別ルートに他のキャラを出すとなると労力が掛かるのは分かるが、
それなら長すぎる共通を削って補填すればいい。
所謂、家族に声が聞こえるかを気にしたり、外出を見計らって行為に及んだり、逆に怪しまれたりといった
姉妹ものや同居ものエロゲに必須と言えるシチュがほとんど無いのは
そもそも何のためにこのコンセプトの作品を作ったのか疑問符が浮かんで仕方ない。
日常シーンから会話の7割超が「胸」のことしか話していないので
作り手は基本的に女性の肉体の魅力にしか興味がないのだろう。
「ここでこのキャラを絡ませて」だとか「ここでこんなイベントを入れよう」などという
シチュエーションへのこだわりはほぼほぼ感じられなかった。
夕暮れの海でのHシーンなのに背景が青空だったりとその辺りからも気配りの無さが伺える。
本来なら80点以上を付けられるポテンシャルを持っているにも拘らず、
妄想シーンも含めて余計な部分に力を入れて肝心な部分が疎かになっている。
エロのテキストの濃厚さに関しては特筆すべきものがあるだけに残念。