某家庭用妹ゲームを彷彿とさせるデザインが良い。女性ナレーションが雰囲気作りに一役買っている。特筆すべきは豊富な差分による擬似アニメーション演出。紙芝居でもなく単純なループアニメーションでもない、ある種このジャンルの理想形ともいえる。
サークルとしてはアニメーションに移行する前の最後の作品。
状況に応じて細かに変化する擬似アニメーション演出は素晴らしく、擬似といっても
現在よく見られるアニメーション導入作品と比べてその臨場感は数段上を行っている。
この臨場感の違いは、アドベンチャーゲームのプレイ時間の大部分を占める「間」の使い方と
一枚絵による「説得力」にある。
アニメーション導入作品では
プレイヤーのクリックを待つ間において、現実では存在しない「ループ」という概念によって
ループ音声とループアニメーションで間を繋ぐ必要があるが
この擬似アニメーション演出では
静止時には一枚絵で補完しつつ状況説明文によって細かい所作を描写することが出来
また擬似アニメ時にはその状況に応じた演出を的確に挿入することで
ループアニメーションよりも数段濃密な効果を生み出すことが出来る。
勿論、状況説明文を使用しないフルアニメーションの動画作品では
この「間」の問題からは開放されるが
視覚では描写しきれない細かい動作を描くには静止画による補完が最も適している。
また、視覚で描写するダイレクトな行為についても
「一枚ごとに描かれたCG」とアフターエフェクトによる「部位の移動や拡張」とでは
説得力に歴然とした差が生まれる。
一見すると、一枚絵とループアニメーションでは後者の方が見栄えがいいのは確かだが
実際にプレイしてみれば一枚絵による擬似アニメーション演出は、ループアニメーションの利点を
補って余りある効果があり、またループアニメーションでは描けない細かい描写を補完してくれるのである。
高い評価点が期待できるリリース当初において
パッチ前のシステムの煩雑さが足を引っ張ってはいるものの
それでも中央値70というのは注目すべきポイントだと思われ、再評価を期待したい作品。