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nanachanさんのまほ×ろば -Witches spiritual home-の長文感想

ユーザー
nanachan
ゲーム
まほ×ろば -Witches spiritual home-
ブランド
あかべぇそふとすりぃ
得点
89
参照数
2461

一言コメント

(GiveUp) ラブ寄りのラブコメ作品としては最高クラスだと思います。この手のタイプの作品のお手本のような非常に優れたシナリオに、可愛らしい絵、声優さんたちの好演が光ります。点数は、作品内容に対して本来あげたい点数から、あまりにも非ユーザーフレンドリーなシステム・プレイ環境面に抗議の意味を込めて5点を差し引いたものです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

……いやね、最初は「ちょっとこれやべぇんじゃねえかな」って正直思いましたよ。

始める前にまずDMM GAME PLAYERとかいうクソが中々立ち上がらない。ぼくのPCにインストールされていたこいつからはアップデートを要求され、それが終わってもウンともスンとも言わないという状況の繰り返し。仕方なく一旦アンインストールからの再インストールでようやく起動に成功。ここまで約20分の悪戦苦闘。とてもめんどくさい。なんでこんなもんを利用しようと思うのか。

やっとプレイを始めてからも、動作がすこぶる遅い。普通にテキストを表示するだけで画面がカクつく始末。ぼくのPCはお世辞にもスペックが高いとはいえないが、他の紙芝居エロゲーで読み進めること自体に支障を来たしたことはなかったし、Twitterを見ても多くのユーザーが動作が重いことに不満を漏らしていました。キャラクターがヌルヌル動くE-mote作品ですら普通に動作することを考えると、明らかに不必要な重さでしょう。この他にも、ウインドウを非アクティブにしてから再びアクティブにすると、その際に発言していたキャラの名前が画面のどこかに残り続けてしまうという地味に腹立つ細かいバグも見られます。快適なプレイ環境とは程遠い。

こんな体たらくにも関わらず、一つのDMMアカウントと紐付けをするという画期的なオンライン認証システムを今作から採用したということで、買取不可という形でプレイヤーの退路を塞いできます。(ま、まあ、ぼくは最初から神ゲーと信じていたので、売る気なんて更々無かったんですけどねっ!)

発売前から「もしまほ×ろばが神ゲーじゃなかったら木の下に埋めて貰っても構わないよ」と豪語していたぼくですが、自らハードルをめちゃくちゃ上げていくあかべぇそふとくんのストロングスタイルにはさすがに戦慄を覚えました。ユーザーフレンドリーとは対極にあるその姿勢。悔い改めてくれ、マジで。



ですが蓋を開けてみると、シナリオ内容やイチャラブバカップル具合からして、歴代のラブ寄りラブコメ作品の中でも最高クラスの出来と言ってもよい素晴らしいゲームでした。あかべぇそふとくんはユーザーをガン無視していたけれど、ライターさんだけは俺たちのことを真摯に考えていてくれたということですね!!前作もあかべぇくんでライターを務められていた氏が、他のメーカで筆を執ってくれることを切に願います。

基本的な構成としては、共通は主人公とヒロインたちの寮生活を、ドタバタコメディとラッキースケベを織り交ぜながら描き、仲を深めていきます。終盤、皆で協力してとある問題を解決し、個別へと分岐。個別は、付き合うまでのあれこれとバカップル万歳なイチャラブを楽しめる萌えパートと、ヒロインをまた一歩魅力的な女の子へと生まれ変わらせる成長物語という二本の柱。他のヒロインたちも二人を温かく見守り、ユーザーを萎えさせるような性質の悪いシリアスも皆無の、ハートフルで優しい世界。自分が萌えゲーに求める要素が過不足無く詰め込まれており、萌えゲーのシナリオとして一級品でした。

もっとも、この手のタイプの作品の宿命とさえもいえる、「(恋愛的な意味で)大して好きではないヒロインのルートは面白くもなんともない」という嫌いは、本作にもやはり付いて回ります。言ってしまえば、この手のタイプの作品は、「この子とイチャイチャしたい」という欲求以外に、話を読み進める動機付けが非常に弱いわけですね。実際に自分も、本作でコンプしたのは、こなつ、久遠、静流、エニスの4人。攻略しなかった照と御影もサブヒロインのように見ると好きなんですけどね。でもまあ、3分の2を攻略したいと思えたのは、萌えゲーだとかなり当たりの部類と言えますし、4人という人数自体も、一般的な萌えゲーからするとヒロイン全員くらいに相当しますから、十分でしょう。しかも、攻略したいと思えたヒロインについては一級品のシナリオが待っているわけですからね。全体としては、大満足も大満足。あかべぇくんには死んでも礼なんて言ってやりませんが、ライターさん、本当にありがとうございました。

あ、でもエロシーンの射精選択肢、あれもうちょっとなんとかなりませんかね?某ALcotを彷彿とさせるような悪ノリ選択肢。ぼくはエロシーンに対して遊びの気持ちは一切なく真剣に臨んでいるので、そういうの好きじゃないんですよね。なんやねん、「ロリまんこに星三つをつける/ロリボディを大絶賛する」って。普通に「中に出す/外に出す」でいいんだよ。シンプルイズベストだよ。





以下、ヒロインごとに雑感を。

【こなつ】
・プレイを通してイメージが一番変わった子。正統派メインヒロインかと思いきや、暴走妄想な残念な子。でもそこが良い。時折見せる怖い笑顔もまた良い。
・魔法のせいで主人公と手がくっついて離れなくなる展開は、ベタだけど好き。トイレもお風呂も寝るのも一緒。魔法万歳。
・「自信がない」という弱点の克服が主題でしたが、共通の時点でそれが見えるわけではないので、唐突さを感じてしまいました。そのためか、久遠や静流と比べると成長したという感じが薄かったのが残念なところ。

【久遠】
・本作のベストルートかつベストヒロイン。というか萌えゲー全体で見ても、「LOVESICK PUPPIES」有希ルート、「ゆきこいめると」たるひルート、「フレラバ」陽茉莉ルート等と並ぶ、最高クラスのルート。
・萌えパートは付き合うまでの中々素直になれない久遠ちゃんがかわいい!それを見かねたイチカワさん(久遠ちゃんが持ってるぬいぐるみ)の魔法で主人公がイチカワさんになっちゃった!っていう展開は、やはりベタだけど好き。四六時中久遠ちゃんと一緒。魔法万歳。
 いざ付き合ったら、超絶甘えんぼになる久遠ちゃんがかわいい!これまでこなつにべったりだったのが、そのまま主人公にきた感じ。やばいよやばいよー。
・主題は、人見知りで寂しがり屋で甘えんぼからの自立という成長物語。幼少期に一人で過ごすことが多く友達もいなかった久遠ちゃんは、寮の仲間と過ごす楽しさを知り、極度の寂しがり屋で依存体質に。そんな久遠ちゃんが、皆が自分をどれだけ想ってくれているかを知り、「たとえ将来離ればなれになってしまったとしても絆で繋がっている」と思える強さを手に入れるお話はとっても微笑ましい。本当に温かく優しい世界。ぼくはこういうのに弱いの。あまりの読後感の良さに、萌えゲーのくせに放心してしまいました。終盤の久遠ちゃんの笑顔が見られる貴重な二枚のCGはマジで卑怯。
・個人的にすんごい好きだったのが、主人公への依存体質を克服し、真の意味で恋人となった直後のエロシーンが対面座位の全裸セックスというめちゃくちゃ想いが伝わるもので、しかも選択肢無しの中出し固定だったことですね。ここでこのエロシーンを持ってくることができるというのは、18禁作品であるエロゲーにおいてはエロシーンもシナリオの一部であるということをライターが理解している証。もし仮に本作がCS化されたとして、このエロシーンが削られることで数段下の完成度になるのは間違いない、そういうレベル。あまりにも尊すぎる全裸セックスに震えろ。

【静流】
・残念ツンデレ暴走娘。リアクションが一々面白く、カウントダウンムービーでもネタにされた、公式が認める弄られ役。コメディとしてみると、この子のルートが一番面白い。他のルートでは、割り箸を尻に挟んで割るというあの宴会芸をガチで披露しようとするまでに成長します。結局割らずに事なきを得ましたが、もし割っていたらヒロインとして色々致命的だったと思います。でもね、そこがかわいいの。
・主題は、天才と言われる姉へのコンプレックスの克服。姉を見返してやろうと思うあまり、好きでもない変身魔法に入れ込み、それに対して人一倍の頑張りを見せる不器用な努力家。そんな彼女が、魔法を教える先生役を務めることになった幼女の指導を通じて「好きなことをやること」を逆に教えられ、姉とは違う自分の道を見つけるお話。うーん、幼女有能。ずっと擦れ違っていた姉妹が仲直りする終わり方は、「まあこれしかないよね」とはいえ、いいもんはいいです。
・変身魔法が失敗して、頭の中身が猫になっちゃったネコミミしっぽ静流ちゃんとエッチするシーンが非常にセックスです。魔法万歳。にゃーにゃーいいながらおちんちんぺろぺろしてくるのがヤバい、完全に発情しきった猫ちゃんとの交尾がヤバい。

【エニス】
・魔法使いを見守る、そのために自らの成長を魔法で止め、役目を果たしてきた齢ウン千年の彼女が、その人生の最後に普通の人間としての幸せを掴むストーリー。彼女が育ててきた魔法使いたちが感謝を示すかのように、クライマックスで主人公に協力したり、彼女を温かく迎えたりするのがとてもよかったです。
・既に人間として完成しきっているため、成長物語という要素は無し。でも、ウン千歳の魔女らしからぬ隙があるところがとってもかわいい。><な顔とか、頬を///って染めちゃうのとかね。イチャラブも主人公にべったり。甘すぎる。
・彼女の生涯のバックグラウンドを多少なりとも描いてくれたらより「今まで良く頑張ったね」という気持ちになれたと思うので、そこが唯一残念なところでした。