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namakesikiさんのシュヴァルツェスマーケン 殉教者たちの長文感想

ユーザー
namakesiki
ゲーム
シュヴァルツェスマーケン 殉教者たち
ブランド
âge(age)
得点
90
参照数
3683

一言コメント

エロゲーに夢中だった頃を思い出す。結局の所、ビジュアルノベルに求めている物は、小説では描ききれないほどの没入感を与えてくれる物であり、胸がえぐられるほど感情を揺れ動かす物である。それは萌えであったり燃えであったり欝であったり笑いであったりするものだ。アージュというメーカーは今も正しくプレイヤーの胸をえぐる。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

内田弘樹氏によるマブラヴシェアードワールドストーリー後編。残念ながらアニメは駆け足で内容はほとんど省略されていたが、これはアージュ独自のプログラムで原作小説を描ききった傑作。わざわざ電子書籍で全巻揃えなおしてしまった。短編集まで。アニメが始まる前は電子書籍は無かったのだがいつのまにか完備されていた。アニメ化さまさまである。


原作小説のカティアルートだけでなく分岐によるアイリスディーナ、リィズルートを備えていて、正直に言って購入理由のほぼ全てがリィズルートを見たいというだけだったのだが、さすがアージュ。流れを知っているカティアルートでさえ胸を抉られっぱなしで、これほど泣いたのはいつぶりだろうというくらいに嗚咽していた。
元々小説で読んでいるからか、ゲームの臨場感か、おそらく両方のおかげで感情移入しまくりで、この狂った世界の業を背負わされるキャラクターたちを見ているだけで胸が痛み涙する。でもこれこそが自分がビジュアルノベルにはまった理由であり、今でもやっている理由である。


戦闘シーンはアニメ効果かは知らないが、かなりアニメーションが豪華でいままでのシリーズでは断トツ。ただし音楽がチグハグな感じで、今までのピンポイントな使い方に比べてかなり甘い気がした。音量も。過去の想起でいちいち挟まれるCGが多すぎる、テオドール視点のみを重視した結果他の場面が削られている、地の文の解説がなくなっている等マイナス点も多数ある、が結局のところ、ここ数年の中でやったゲームの中で一番面白かった。割と出来がいい、という作品とは別物なのだ。elfは無くなり、月姫2はでないし、期待できるのはランス10と戦女神3あとはアージュだけである。悲しい愚痴。


以下はネタバレ感想

期待していた以上にリィズの処刑前の演説が強化されていた。あの胸糞悪くなる空気、反政府軍が正しい訳ではないという大義の喪失、国家保安省以下の何かを作り上げた経験のない隠れるだけの蛆虫という台詞が実のところ的を射ているのではないかと思わされその中で撃たないといけないというやるせなさが、声がつき、台詞が増えることですさまじい破壊力になっている。声ってすごい。この狂った世界の業の全てを背負わされたかのようなキャラクターたちの生き様、死に様をみる度に涙が零れた。そのあとに来るカティアという、最初は理想主義者で甘ったれた餓鬼だと思っていたキャラの芯の強い優しさはやはり凄まじい。操縦桿のリボンの演出もグッド、涙が止まらない。リィズの機体を駆るテオドールは燃える。まさにマブラヴ。
正直全ルートで死ぬと思っていたリィズはリィズルートで生還。というかまさかの全員。短編集で過去話を知っていて、リィズがテオドールのために国家保安省に入り何をしていたかを神の視点で知っているため(リィズやらアクスマンが仄めかしていたがアクスマンはなんかまるでリベンジポルノみたいな)テオドールがリィズの側に立つのはやはり心情的には嬉しい。仲間を殺してまでリィズを助けたいというのはやはりリィズルートでは欲しかったしあったのでグッド。悲しかったけど見たかったから。リィズは確かに目的をアクスマンによって摩り替えられていたけども、最初は間違いなくテオドールを尋問から救うためだったので。
結局のところ自分が国家保安省にいた頃をどうしても恥じていて、その記憶を持っている限りリィズに救いは無いので仕方ない最後なのかなと。本音を言うと最初に一緒に逃げればよかったんじゃないかなとも思ったけど、あのまま逃げていてもリィズは壊れたままでどちらにせよ詰んでいたのかな。
なんか最後までやって落ち込んでしまった。やっぱいい物語ってのは終わった後喪失感が半端じゃない。こういう喪失感が味わいたくて今でもやってるんだけど。なんかシュバルツェスマーケンキャラの幸せな物語も見たいな、出ないかな。サプリメント的な何か。短編集で小説でもいいんだけど。
最後のテオドールがテロドールになって続編に続いていくんだろうけどなんだかなあ皆死んだのかなあ。
続編も待ってます。