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nakka2007さんの冥契のルペルカリアの長文感想

ユーザー
nakka2007
ゲーム
冥契のルペルカリア
ブランド
ウグイスカグラ
得点
81
参照数
274

一言コメント

演劇っていうあまり表現されないジャンルで読み応えがあった。これがルクルだと言わんばかりの悲劇の応酬には読んでいて心を痛めたので、沈んでる気分の日にはやりたくなかった。ここの作品で1番キャラ背景の掘り下げ具合は凄かった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

クソほど雑に言うと根幹にある所は妹ゲーなんだよ、そりゃ途中で何度も妹要素は出てくるしね、やっぱり妹って最高。妹好きはやれよな。
・・・という感じ。でも自分は極度の妹スキーなんで、これが曲解な部分は否めませんが。

それがあってもそれ以外の部分でも話の大筋は面白かったし、演劇パートも非常に見応えがあった。
展開が進んできて、「あ、そういう感じだったのね?」ってなってからは同じような展開を迎える某別ゲーを想起したりもするのでそういう部分で終盤が新鮮味を感じられず微妙と思う人はいそう。

終わり方はかなり綺麗にまとまってる方だと思います。
あえて言うなら1番面白かったのはフィリア公演が終わる所までだったかなーって気がします。
後は実はこういうことだったんだよっていうきっちりとした掘り下げによる伏線回収が進んでいく物語になるので、
熱量としてはそこからは下降気味、感動も泣くほどではない。おそらく重きをそこには置いていない。
演劇を主体として動く登場人物たちの、悲喜交交のあり方を楽しんで欲しいと思っているようにも感じられたし。
終わりに向かうにつれて妹幸福感の上がり具合はそこそこ良い。


読んでいて思ったのは、掘り下げが凄いんだけどやたらと過去回想の回数が多いので話を進めて欲しいな、と思う時はあったかもしれない。でも、邪魔している訳でもなくその後の本筋につながるので、作品の内容自体は頭にはしっかりと入っては来たのですが。
ただし、人によってはしつこいと感じる量かもしれない。

かみまほをやった事があると宝石タイトルと言い回しに凄くかみまほ感を感じて、もしかして繋がってるのかなとか思ったけども、
別にシナリオとしては繋がってはないので単品でやって良い。同じような蛇足はない。
繋がっているのは妹の価値観ぐらい。

これだけ見るとこの作品妹だけなの?って勘違いしそうだけど、他のキャラも好きになれるようなお話になっているので、そこは安心して触れてみてもいいと思う。脇役の男キャラも良い味を出しているので。
でも1番好きなキャラは誰?っていう点については最終的には『折原 氷狐』で落ち着く。これは仕方ない。



今回読んでて1番考えた所は妹というものを自分がどう捉えているか、
自分の中の妹感の有り様を一緒に考える場面が多かった。それが貴重な経験で良かった。

作中で表現される、表現したかったのだろう妹たちを見ていて、
妹だから無条件で好きなのではなくて、僕のことを一途に好きになってくれる妹だからこそ好きなんだろうな、
エロゲって数こなしてるとそういう兄ラブな妹が多いから妹が好きってなっちゃう側面もあるんだろうなと。
それは何よりリアルだとあり得ないような妹を味わうことが出来るからこそ・・・。
そうなると近親相姦という甘美な蜜に抗うことが出来ないんだろうし、世界全てに反対されてもやっぱり妹が好きっていう一種の美。
熟考した上で、自分の妹好きを確固たるものにしてくれる要素をくれたことには感謝。
やっぱ妹パワーって凄いんですよ。生きる糧。


終わってからの自分の価値観に対する考察をこうやって色々書きながら文字に起こしていくといい作品だったなって思える、そういう作品。
逆にあまりそういう考察が好きじゃないと刺さりは弱いと思う。
演劇モノとして評価してる人は多そうですかね、何しろ声優の演技も凄いので。

ps.双葉の中の思いには決着ついてないよな…結果的に連れ出したことは答えであるとも言えるんだろうけど、ちょっとそれだけは終わってからも引っかかってますね。
あくまで1つのお話として考えると70点台後半の出来かなという気もする。