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nakka2007さんの空に刻んだパラレログラムの長文感想

ユーザー
nakka2007
ゲーム
空に刻んだパラレログラム
ブランド
ウグイスカグラ
得点
88
参照数
609

一言コメント

空に夢を馳せる少年少女が全力で打ち込んだらこうなるんだろうな、青春時代をやり直してみたい、全て終えて素直にそう思えた

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

スポーツに日々を捧げる人、その成長には背景がある
立ち止まってしまえばすぐに追い抜かれてしまう
競技に魅せられた者は、夢に向かってただ必死に飽くなき挑戦をしていく
学生競技としてのテレプシコーラを泥臭く描いた、僕が好きなシナリオだ

実際の所、スポーツには本当に挫折というのは付き物で
自分の中では必死に頑張っているつもりなのに、才能がある人はあっさりとそれを上回っていってしまう
小さな枠組みでは敵なしと言うほどまでの存在になっても、強者の中に打ち込まれそれに勝つことが出来ない
あっさりと心が折れてしまい辞めたいという気持ちになってしまう
スポーツ経験者なら誰しもが1度は抱えそうになる感情というのが、「挫折」「諦め」という部分ではないでしょうか


私はスポーツ有名校にいた訳ではありませんが、遠方からたくさんの人が集う学校には選抜されたメンバーか、そうでないメンバーかという格付けが、出られるメンバーが一握りに限定されている以上存在してしまうと思います
選抜外メンバーっていうのはスポーツが好きでありながらも、限界の壁を前に諦める者や、ずっとそこで数年間の青春時代を終えてしまうものも確かに存在しているし、それはどうしようもない負け犬ムードがそうさせてしまうもの

それでも虎視眈々と牙を研いでいる人物から発せられる、下剋上という展開は非常に愉快だし、それがこの第二のメンバーの原動力になっていたことは、桜坂空という人物が証明し、それに感化される周りの人間もあった
その上での絶対的な境遼二という存在、彼は口だけは本当に悪い人間でそれに絶望を見て辞めてしまう人もいるけれど、色々と知ってしまうと彼なりの不器用な所が、一部のメンバーには眩しく映る部分もやはりあったはず
最初の頃の「辞めちまえ」っていうのをこの環境に身を置いているからこその不器用な優しさだと感じることが出来るかどうかは、人間故に難しい部分ですが
(彼の場合は本心で目障りだから辞めろと思っている部分も大きく持っているでしょうけれど)
なんだかんだ、第二テレプシコーラ部は最悪の環境と言われていながらもそうでなかったという部分が後々の展開を生んでいきますし、見ていて気持ちよかった


勝てる奴というのはほとんどの場合が努力をすることに対して天才な人間
ここにいる奴らは誰もがテレプシコーラが好きで、諦めが悪く、本当に負けず嫌い
また、互いを切磋琢磨出来る人間に溢れていてとても眩しい
それを異なるタイプの4人の少女に視点を合わせつつ、その少女たちの魅力も余すことなく全員表現出来ていたという点で、高く評価しますし、スポーツっていうのは表面だけで分かるものではなく裏はやはりこういう泥臭さが培った土壌というものは確実にあるのだと
一朝一夕でどうにかなるものではない、スポーツが好きだからこそ、テレプシコーラという競技が好きだからこそ出来る努力に裏付けされた勝利に画面の前で釘付けでした
空を飛べるっていう能力を持っていて誘惑に抗える人間なんて普通少ないと思うし、逃れられないからこそ、ですよね


試合時間が長かったのは個人的な良かった点です
過去を挟みはするものの、それは各キャラの信念や、覚悟、背景に視点を当てて物語に深みを持たせることが出来ていたと思うし、
それが結果的にエロゲの枠組みの中でゲーム的に動きを持たせることに難しいシーンにドラマを詰め込めていて、一試合一試合の対戦が充実した内容になっていたと本気で思う
やっぱり名前有りのキャラが戦う大事な試合がダイジェストのようになってしまっては興醒めもいい所
だいたいの試合が1時間超に渡る、
少年誌の熱血漫画の一試合に何時間かけてやってるんだこいつらってのを想起させ、
でもそれがこれからの展開への期待を持たせてくれる部分も確かにあったんじゃないかと
第2の選抜トーナメント1回戦は涙腺という部分では反則でしたね


ここまでやるかというぐらいにチーム内不和が多かったので、こいつらまた仲間割れ起こしてるのかとちょっと笑ってしまう場面もありはしましたが、本気で思いを色々と抱える若者達がぶつかったから起こったのでしょうし、
それを乗り越えて噛み合った時のパワーがチームに勝利を呼び込むというのも王道ながら、納得です

また、チームが3人という数も表現上ちょうどいい塩梅になっていたと思います
不和を持たせるのにも2人だと互いだけで話が終わってしまいますし、4人だとごちゃごちゃし過ぎる


個別ルートはこういう未来を歩んでいったんだろうなと納得もしたし、
ダンス・マカブルルートも色々なドラマが待っていましたね
本当に正ヒロインに関しては大満足でしたし、脇役って言って良いのか分からないぐらいにヒロイン以外のキャラも輝いていて魅力的な選手ばかりでした
1番いいなって思えた個別ルートは里亜ルートでしたが、だからといって柚、玻璃、ほたるというキャラが負けているかっていうとそうも思えず、それはこのヒロインが全然違うタイプで一言で決められない良さがあります
誰に誘惑されても絶対耐えられないです
サブキャラで1番好きなのは遊佐硝子かな(というかTeamPrettyStars全体が好き)


イラストに関してで言うと、今回は肉感も良くなっていたし、
服が何より可愛いデザインのものが多かったですね
空に舞う競技テレプシコーラも当然ながら、個別ルートの私服衣装も必見です
空の話で言うと、玻璃ちゃんの空に飛んでいる絵は・・・・あれは履いてないようにしか見えなくて1人で勝手に盛り上がってましたし、赤坂先輩が追いかける絵は犯罪的でした


妄信的なぐらいの文章に見えるかもですが、それでもウグイスカグラでルクルさんが描いたシナリオの中で
いやーこの作品ほんと好きだわってなったのはこれが初めて
魅力的な心が折れるような内容もあり、そのうえで今回は納得がいく形で締めくくられていたと思えました
また時間が出来たらこの作品にもう1度触れたいと思えました、本当に大好きです