ErogameScape -エロゲー批評空間-

nakka2007さんの果つることなき未来ヨリ X-RATEDの長文感想

ユーザー
nakka2007
ゲーム
果つることなき未来ヨリ X-RATED
ブランド
FrontWing
得点
85
参照数
337

一言コメント

リアを最後に攻略してしまったため、非常に後味の悪さが残る終わりになってしまったが、シナリオは練り込まれていて終わり方以外は生き方を色々と考えさせられる作品になっていた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

(以下、2015年12月時のメモ帳より)

主人公の三森一郎は軍人かくあるべきという人物でありながら、
ユキカゼルートでの最後に見せた一郎の素顔は、
とても印象に残ったし、戦争という苛烈極まりない日々の
非情を物語るシーンでもあったように思う。
そしてどのルートのどのヒロインにも、
『戦争を終わらせたい』『大事な人を守りたい』
そういう想いが強く現れていたと感じた。
ルートの数だけ、三森一郎の心の起こった変化と一郎が愛した女性、
そして仲間たちと掴んだ平和という形が見えました。



平和であることを噛み締めるられることはとても重要。
だけど、ずっと受け身の平和っていうのではダメで、
いざという時は平和な未来の為、平和な場所を守るために立ち上がらなきゃいけない。

自分に出来るのがどんなに小さなことだとしても、
戦えない人たちや、これから産まれるくる命のために、
何よりも日本人であって日本が守りたいと思える場所だからこそ
強制は良くないまでも、人任せではいけないよな、
という意識にしてくれる話だった。
ずっと平和が続くならそれに越したことは本当にないんだけど、
戦後70年という節目の年に、
フロントウィングが出した戦争と平和に関しての1つの答えと言える作品。



戦争が始まるのが愛故にならば、戦争の終わりも愛によって終わるのだろう。

誰もが人を殺したくて戦争をやっている訳じゃない。
戦争が始まって簡単に収拾がつかなくなってしまって、
母国の人々の為に、どうにかして戦争を終わらせる為に必死になって皆が戦った。
気持ちがどちらも同じぐらい強いからこそ、
戦争と云うのは、長く続いてしまうものなんでしょう。

戦争ってのが如何にどうしようもないもので、
今ここにある平和ってものが如何に素晴らしいことかを今一度確かめて欲しい
っていうメッセージを個人的には受け取りました。
だから終わりは突然に、意外にも呆気無いものにしたのかもしれない。

僕達の平和はたくさんの犠牲の上に成り立っているってことを忘れずに、
それに感謝して生きていきたい。そして戦前の人が楽しめなかったエロゲを
死ぬまでたくさんプレイし続けられたら最高だなって。
それが出来なくなる時が訪れるっていうことは、つまりはそういう時が来てしまった。
それほど平和ボケ出来ている今も貴重な経験なんだと。

日本の歴史の教科書っていうのは
起こった事実の歴史しか書かないから、
教師が何も語らずに本の通りに授業を進めれば、
悪い人がいた、良い人がいたという、
その本を綴った人が語る個人的な事実だけになってしまうし、
逆に教師が思想に基いて授業をするとそれもそれで問題がある。

大人になってから調べて見て分かる驚愕の事実ってのは多いもので、
あれほど教えるのが難しいジャンルはないと思う。
『実際に調べてみる』ということが出来るかどうか
興味を持たなければそれまで、なんですよね。
そういう意味では高校の世界史の授業の先生は、
物語風に史実を語ることで、興味を持たせるということに関しては上手かったんだろうな
と改めて思った。


(以下、17/12/25追記)
やはり昔も今も変わらず、思考の海に入って没頭出来る作品というのが、自分は好きなようです。
戦争に対する愛というのは、上からすると国への愛。それが参加させられる国民レベルになると守りたい隣人への愛。
と、視点は色々と変わってきますが、引けないものがあるからこそ、どっちも最後まで必死になって死体の山だけが築かれるというどうしようもない結末を産み続けてきました。
今行われ続けている圧力も、どうか戦争に発展せず話し合いで終わればいいなと、それを望むばかりです。