ErogameScape -エロゲー批評空間-

morufaさんのまほ×ろば -Witches spiritual home-の長文感想

ユーザー
morufa
ゲーム
まほ×ろば -Witches spiritual home-
ブランド
あかべぇそふとすりぃ
得点
82
参照数
1741

一言コメント

あかべぇが出したという点で思うところはあるが非常に良く出来た一作

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ムラっ気がすごいあかべぇそふとすりぃの新作。



タグは学園、魔女、魔法、寮生活とタイトルからも想像しやすい内容で固められており、
特筆して語るべき点は特に無い。



プロット構成は全5回ほどの選択肢を使った加算形フラグ管理方式に加え一部ヒロインに
ルートロックが掛かっているが、恐らく他のヒロインを一名攻略後に解放される模様。



さてそれでは問題の作品内容について言及していきたいと思うが、
今作の作風を簡単に表現すると

「ハリポタ風の学園ラブコメ」

ということになるだろうか。

一般社会に秘匿された魔法使いが通う魔法女学園とヒロイン達が住まう寮を舞台に、
社会人設定の主人公がヒロイン一人一人の悩みや課題に寄り添いながら一緒に生活をしていく
といった具合の、有体に言えば氾濫型の学園イチャラブコメ作品といえるだろう。

しかしながら今作はそういったありきたりと思われる作風の中で、攻略可能ヒロイン数6人という
一般定数よりも多くヒロインを扱いながらもヒロイン一人一人の魅力を日常生活から
ラッキースケベイベントに至るまで非常に色鮮やかに描ききることに成功している。

実際の所作中での設定やイベントはどれもこれも先が予想できるようなものばかりの上、
ヒロインと一緒に転んで胸や股間に顔を埋めるスタイルは何度も登場するが、
それ以外で描かれる

「苦難を乗り越え目標に向かっていく姿」

がヒロイン一人一人別々の形で表現されているので、攻略可能ヒロイン数6人だというのにも
関わらず久々に自ら進んで全ルート読みたいと思わせられた。



特にお気に入りのルートは静流、久遠、御影、エニスの4名で、特に御影に関しては共通部での
主人公への過剰なからかい描写が非常に危険なヒロインであったが、実際個別ルートに入ると
恥ずかしがったり嫉妬したりする姿は個人的にかなり効いた。

テーマに関しては「天才の初めての挫折」ということで物語内容もだいぶさっくりとしたもの
だったが、それ以上に単純に共通と個別の落差が読んでいて非常に心地よかった。

と、同じ理由で静流も同様に個別後の変化に富んでいて、こちらは一転御影よりテーマに
読み応えがあった分ルート毎の評価は高い。加えて猫娘エッチは単純ながらも枯れ果てた。


久遠エニス両名もそれぞれにしっかりと特徴的な失敗や挫折を設定し、それに向かって
主人公と二人三脚で進んでいく様を綺麗に描写できていたと思う。久遠に関しては御影同様共通部の
主人公に対する態度が結構危険域に入っていたが、個別ルートの出来は非常に素晴らしいので
避けてしまったユーザーはぜひ読んでみてほしい。

エニスは数千年を生きたロリじゃないBBA設定だったが、『Making × Lovers』の咲と同様に
年上だから、お姉さんだからと無理にリードしようとするような場面がほとんどなく、
主人公と等身大の恋愛を楽しもうとする姿が非常に魅力的であった。エピローグも
個別ルートのテーマと合わせて非常に良い内容だったと思う。


一方でこなつ、照両名の出来も悪くは無かったが、こなつに関しては共通部冒頭から
好き好きオーラが出まくっていた点に加えて、一切暈されていない幼少期の主人公との出会いなど、
定番設定を使ったが為に必要となってしまった乗り越えるべきハードルの高さが異常に
高くなってしまっていた点が非常に悔やまれる。

照に関しては共通部での魅力の掘り下げ部分がほとんど無い点に加え、性知識皆無設定が少し
的から外れていたなという印象を強く持った。個人的には快活元気っ娘はヒロイン属性でも
割と好きではあるのだが、ライターが御しきれてないなというのが素直な感想だ。

といいつつもこなつはこなつで「はわわっ・・・!」という感嘆詞が全体のセリフの約6割に
入り込んでいたにも関わらず細かな演じ分けで言うほど耳障りにも感じず単純にサラ氏の力量に
脱帽させられたし、照に関しても細かい点ではあるがムードメーカーという立ち居地として
寮生活のバランサーをしっかりと勤められていたと思う。



と、一方で悪い点も数点上げておきたい。

まずこれが他のユーザーも必ず声を上げることだと思うのだが、DMMクライアントへの紐付け連動が
非常に煩わしい。

Steamの様に多くのメーカーが賛同参入している状況ならまだしも、未だ整備が十分とはいえない
専用クライアントとの紐付けは面倒くささがただただ募るだけである。

加えて容量もどこでこんな使ってるのかよくわからないが結構な領域を要求されている。
かといってゲーム内の描写や動作に目を見張る点があるかといわれればそんなことは一切無く、
むしろスキップ機能に関してはスキップ速度が異常に遅く、加えて選択肢ジャンプも未読文まで
飛んでくれない旧式仕様(飛ばしてしまうのではなくそもそも飛べない)といった具合だ。

にも拘らず最終選択肢後の共通文がかなりの文量で、遅いスキップ機能とあいまって
ヒロイン5名分の周回となると感じる煩わしさも相当なものであった。

シナリオ部分に関しては先にも上げたとおり照に関する共通個別の魅力の掘り下げ不足と、
こなつにありきたり設定を打破出来るほどのシナリオを載せて上げられなかった点のみで
他にこれといった不満点は無い。




最後に総評となるが、粗も少ない上質な学園ラブコメ作品を読めたという満足感を得られたと
思う一方で、冒頭コメントでも述べた通り今作があかべぇそふとすりぃから出てしまったという
点において少々複雑な思いが混じる一作であったように思う。

別に同ブランドに対して個人的に恨みつらみや期待などがあったわけでもないのだが、
他の姉妹ブランドのようにコンセプト別にブランドを分けているようなわけでもない同ブランドから
このクオリティの作品が出てきてしまったという点に、えも言えぬ居心地の悪さというか、
ばつの悪さのようなものを感じてしまうのである。

ただそうは言いつつ単純に一作品として非常に良質なキャラ萌えゲーを遊べたという点で
感謝の念はあるし、ヒロインの瞬きやセリフ間の表情差分などブランドの底力もしっかりと
キープ、底上げも出来ているので今後の展開にも非常に期待できる作品となったのではないだろうか。



個人的に今年一番のダークホース作品だったかもしれない。