ブランド名から来る期待に添え切れなかった一作
田舎を舞台にした学園部活物、という人気ジャンルを併せ持つ有力タイトルであったはずが、
蓋を開けてみたら他のレビュワーたちが評するように、「圧倒的に短いシナリオ」で台無しになってしまっている。
1990年代を代表する映画、『グース』の再現を用いたプロットとなっており、
同作をみて心を揺さぶられたユーザーにとっては一粒で二度美味しい作品であることは間違いない。
しかし導入部から思わせぶりに隠されていた主人公の航空学校からの転校など、
蓋を開けてみたら案外しょぼい内容の割には簡単に夢を諦めているようなスタンスでいたり、
そもそも途中から整備課に転課した理由も共通部で語られないなどの回収面で粗が目立つ。
また個別ルートへの入るタイミングも、こういった「ゴールに向かって協力する」
という場面が売りの部活物にしてはかなり珍しい、「目的達成前に個別入り」をする。
この手のジャンルは共に困難に立ち向かっていく中で、
特に特定のヒロインとの交流を経て思いを募らせ確かなものとして認識していくという、
読み手にも分かりやすいステップを踏ませることが常套手段として用いられるが、
今作はその辺の心模様が殆ど描写されず、それどころか目標達成前に個別入りを果たす。
そしてさらにみんなの共通の目的であった、朝焼けを背景にカナダガンたちと飛ぶ、
という大事な場面に、主人公と一緒に飛ぶのが必ずメインヒロイン固定という、
他のヒロインルートに入ったユーザーから「えっ、俺ルートまちがえた?」と疑問の声が聞こえてきそうな作りとなっている。
とはいえ個別ルートにも個々の抱える問題の提起と解決はなされるため、
一応個別ルートの体は成されているが、これもその前に達成される大きな共通目標の前に霞んでしまっているため、大きな情動に結びつくには至っていない。
それでも孵化時の刷り込みから始まる育成描写は一見の価値はあるし、
活動中の描写は心躍るものがあったことは否定しない。
それと、何気にエロ方面は抜きゲーと思う程に充実している。
嗜好としては大体基本的な部分は踏襲しているが、着衣フェチのユーザーはあまり期待しない方がいい。
いい意味でテンポがよく、悪い意味で味気がない為、さっくりと分かりやすい感動を味わいたいのであればかなりニーズにはあっているが、値段がそれに見合うかどうかは各自の判断の元慎重に行って欲しい。
ちなみに今作の体験版は体験版の範囲内が最好調期と捉えた方がいいことを付け加えておく。
体験版で判断をしようとしているユーザーがいれば、よく注意した方がいい。