ノベルゲーム寒気の令和の世に嘗ての時代を喚起させるような還帰した月姫が出来ることの純粋な歓喜。
月姫 —A piece of blue glass moon—
アルクェイド√終わり。序盤から他√への足懸りとなる設定や伏線を丹念に鏤めつつ、世界観や関係を拡げ深めていく展開が巧みだった。終盤が駆け足と感じたが、一気呵成に読みきれる感じは良い。ラストはやはり凄絶に美しかった。奈須きのこ作品には確かな質量のある喪失と寂寥がある。
以下プレイ中リアルタイムで記録したメモ(ちゃんとした感想は完走したら)
5h
アルク護衛開始から
ネロ→ヴローヴ
新キャラといいけっこうかわってる。リメイクというよりかは新作。時代に合わせてお色直しと言うことだろうか。
謎のオタク媚要素。FGO後だからか。
「寝る」という行為(休息)
6h55m
2・26
+2h05m
9h
+10m
マーリオウ様?
安堵—
埋葬機関?
なんだかめちゃくちゃだ
群像劇?
9h10m
+10m
控えめに言って
いや、その、~~ませんか、○○?
ネットミームに汚染されてるな、やはり購買対象はFGOを経てTYPEMOONに入門した方たちなのか。
9h20m
+10m
+25m
斎木業人=琥珀?
思わせぶりな描写多いな。
~10h45m
やはり事件は終わらない
現代風アレンジ
演出がところどころFGOっぽいね
12h15m
恒例の世界観説明
12h45m
ノリがいちいち軽めなんだよなぁ
15h20m
取り敢えず色々纏め
2004 養子→志貴
九年前
ノエル先生はシエル先輩の後輩?
色々と錯綜してる
相変わらずノリは痛々しい。
16h
フードコートdate()
ミハイル・ロア・バルダムヨォン ラスボスは同じなのか
17h14m
漫画版5巻辺り
埋葬機関
マーリオウ
ノエル(豚)
ラウレンティスのジジイ
東方慰問司祭代行
吐息
息遣い
描写が一一艶めかしいな
聖職者が悪人? なのが型月っぽい
原理血戒(イデアブラッド)
日本語でおk
ロアがラスボスではない?
転生する吸血鬼 いちいち属性が天こもりだ
月姫 -A piece of blue glass moon-
~20h15m
ちょっといろいろ情報が奔流のように来たので纏め
志貴と四季の入れ替わり、過去の事件が現在と繋がる、ほんとこういうの多いな(好き)
蜃気楼めいた……
七夜志貴 存在を抹消……遠野槙久に皆殺し(冒頭の月を見上げるシーン、ってことか)
志貴は家族や自身を存在ごと抹消され、アルク(姫)は自分の生みの親の真祖たちを皆殺しにしてしまった。どちらも孤独で、帰属主体を喪った迷子的存在。Fateの士郎くんと桜ちゃんを彷彿とさせる関係性だ。似た者同士ではあるが、決定的に違えてしまっている。そういった歪な結びつき、微細な関係の変化の機微を描くのが相変わらず抜群に巧いな。
アルクも歪だが遠野志貴くん、きみも十分すぎるほど歪です。割れ鍋に綴じ蓋といったところか(失礼過ぎる)。
アルク→ロア/シキ→志貴、という殺意の関係性。まるで鏡合せのように主人公、ラスボス、ヒロインの因縁が結びついている。自己陶酔感と周囲置いてきぼり感は否めないが、志貴が語るアルクを助けたい理由そのものは普遍的で王道そのもの。可哀そうな女の子を颯爽と助ける、やはり王道作品の主人公はこうありたいなと思う。
あいつはあんなに苦しんだんだから、報われないと嘘だ(割に合わない)。Fateの凛もアーチャー(真名伏せ)へそんな思いを向けていた気がしたような。お馴染みのニセモノと本物の問題も登場し、空の境界やFateといい、割と同じ主題を繰り返していないか?(一貫して表現されたテーマがあるのは良いことではある)
壁越しの遠回しで不器用な告白(無自覚)、そしてクライマックス。
学校での最終決戦。
アルクェイドが遠野家から学校まで屋根を飛び移っていくシーン、異様なまでに良い。
月のウサギ。一人称はオタク創作物といった感じだが、三人称は抒情的というか、文学作品的な余韻を醸してくる。作品全体を象徴するような、凄い綺麗な美しいシーン。型月作品、毎回最終決戦に向かうところが一番の盛り上がりじゃないか?
“大好き、大好き、大好き、大好き―!
時間にしてたった数秒の記憶。
それが、千年に渡る旅の酬いだったと微笑みながら。“
文章としては正直奇妙な感じを受ける(無礼)だけど、ノベルゲならではのヴィジュアルとBGM、美麗な背景が詩的な文章と非常にマッチしている。これは小説では出来ない「読書体験」で、まさしくビジュアルノベルと言ったところ。ブラーのかかった画面に顔を薄っすらと載せる演出がいかにもFG〇の宝具演出的で、首を垂れて感涙に咽びそうになった。
視点切り替えでの三人称への移行もスムーズというか、違和感を感ぜずに読める。
シエル先輩VS.大型屍鬼は露骨な時間稼ぎで笑った。
アルクVSロア。宿敵(怨敵)という割にはあっさりしている。いかな~とて、~には及ばない。みたいなセリフ、型月の悪役が毎回喋っている印象ある。大仰で傲慢だがそういった所作が登場人物の背景にそぐっていて、あまり奇妙さは受けない。型月作品は毎回、説明放棄というか、考えるな、感じとれ。ついでに震えろ~。的なテンションなのでもう慣れてる。読み馴らされてる。
アルク退場。まあこれはいつものフラグでしょう。
ラストまで。やはり面白かった。素晴らしい。
武骨でいてポエミー、重厚でいて繊細。そんな相反する概念が奇妙に同居しているようなしていないような、捉えどころのない芯の強さ的な物が奈須きのこの文章を読んでいて受ける概観なのだけれど(あと過去を無駄にしたくないと言うような前向きの直向きさ)、本作はラストの別れに特にそれが集約されていたように感じる。
やり場のない寂寥感、どうしようもない虚しさみたいなもの(言語化を明確に出来てしまっては意味がない)を抱えながら、しかしそれでいて前を向き、辛い現実を噛み締め踏みしめるように生きていく、やはり、奈須きのこ作品からは悲惨な過去を無意味にせず厳しい現実を生き抜き有意味な未来を勝ち取る、というような力強いメッセージとか哲学を感じる。意図してのモノかは知らないけれど、しかし私には確実に突き刺さる。
前を向いて、生きていってね。
ヒロインから与えられる最後に美しい記憶。それを繋ぎ止めようとするのではなく、ただ、見上げる月の美しさに押し込めていくのが良い。彼の人生はこの後も続いていくのだから。
世界観説明は難渋で厄介、けれど登場人物たちの抱える葛藤や懊悩、価値観はどこかズレて/はいるもののその世界に寄りそっている。奇妙なバランス、絶妙なブレンドで醸成される型月ワールドに今回も酔わされました。奈須きのこの文章でしか味わえない絶望や希望が、確かにある。
シエル√は後編発売されたらやります。多分2027年秋くらいには出てるだろ(希望的観測)