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minami06さんのONE ~輝く季節へ~の長文感想

ユーザー
minami06
ゲーム
ONE ~輝く季節へ~
ブランド
Tactics
得点
94
参照数
2067

一言コメント

「kanon」→「CLANNAD」→「AIR」→「ONE」→「MOON.」→「智代アフター」→「リトルバスターズ」という邪道なプレイ順。リアルタイムでプレイしたわけではないので当時からのファンの人とは温度差があるだろうし、何もわかってないと怒られそう

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・折原浩平
折原浩平に対して、自分は「繊細」「モラトリアム」という印象を抱きました。

長森瑞佳ルートでは、折原浩平がどういう人物なのか解りやすく描かれていたように思います。
彼女のルートでの折原浩平は、鬼畜と評されています。それもそのはず、浩平が瑞佳に対してした仕打ちは酷いなんてもんじゃない。まさに鬼畜の所業。
その鬼畜じみた行動の理由が、どんなにすげない態度をとっても変わらず自分を好きでいてほしかったという、なんとも子どもっぽいもの。
無意識とはいえ、人を試すような言動はとても褒められたものじゃないです。
けれどこのルートがなければ、折原浩平という人物が永遠というものにどれだけ執着していたのか、プレイヤーに伝わらなかったと思うんです。そういう意味で、やっぱりこのルートは必要だった。
鬼畜じみた行動もさることながら、瑞佳ルートでの浩平はあらゆることに懐疑的な思考をします。面白いのが、その思考が捻くれてるけどわりと的を射ているところ。今の麻枝准にはない鋭さみたいなのがこのルートにはあったように思います。

他のルートではヒロインの成長を手伝ったり精神的に救ったりと、主人公然とした行動をするだけに、瑞佳ルートはどうしても浮いて見えるし、茜やみさき先輩に隠れてあんまり評判がよろしくない。けど、自分は浩平の二面性が垣間見えるこのルートが一番好きだったりします。
あんまり関係ない話ですが、以前ラジオで「悩んでいる人間は魅力的だ」みたいなことを誰かが言っていました。これを聴いたとき自分は、確かにそうだと思いました。浩平があんなに酷いことをした瑞佳ルートが好きなのも、浩平の悩んでいる姿が魅力的に見えたからなのかもしれません。

・その他
永遠の世界について少し。
ONEが評価されているのはやっぱり、ありきたりな表現だけれど「永遠の世界」について多くを語らなかったところにあると思います。
人が消えるなんてぶっ飛んだ現象、科学的に説明できるはずがないし、もし非科学的な形で説明されてしまったら(たとえフィクションの世界だとしても)、「いや、それはありえない」と感じて途端に色褪せてしまう。少なくとも自分はそう。想像の余地を残しながらプレイヤーを煙に巻く塩梅がONEは絶妙だったと思います。
また、永遠というものを題材にしたことも人気のひとつだと思います。モラトリアムな人にとってはたまらない題材だったはず(自分もその一人)。逆にそうでない人にとっては、電波過ぎてツマンネとなる。ここが評価の別れどころなんだと思います。

ヒロインについて少し。
ONEは障がい者を扱っていて最低だ、という意見をたまに目にします。
自分はあまり深く考えずプレイするたちなのでつい忘れがちなんですが、よくよく考えてみたらヒロイン数人はそうなんですよね。
で、障がいをもったヒロインを登場させる必要がONEにあったかと言えば、自分はノーです。ONEはそういう特殊な事情を持ったヒロインがいなくても成立する話でした。だから、そういった理由でONEを駄作と断じる人がいるのは当然だと思います。

MOON.について少し。
ONEも尖った作風だけれど、それに負けないくらいMOON.も尖ったゲームでした。
見所は、やっぱり郁未がドッペルと対峙するシーンです。郁未にとって消したい過去、忘れたい過去をドッペル郁未は容赦なく何度も突きつける。まるで自分の秘密が暴かれていくようでドキドキしたのを覚えています。
完成度は「Kanon」「AIR」「CLANNAD」に遠く及ばないけれど、型にはまっていないMOON.も十分面白いと思います。

・まとめ
古くさいし、ビジュアル面でも人を選ぶし、電波すぎてついていけないかもしれない。今やろうとするとかなーり敷居が高い印象。けれども波長さえ合えば嵌る。そんなゲーム。
麻枝准の最高傑作は何と聞かれたら、自分は迷うことなくONEを挙げます。そんくらい好き。お気に入りキャラは七瀬。