20歳(笑)の少年少女の暴走を描いた話。シナリオの運ばせ方次第では欝な話になりそうなところだけれども、基本的に出てくるキャラクターはハイテンションでハジけたやつらばかりだから、暗い気分になるってことはない。エンディングもうまく丸く収めた形で締めてていい感じ。本作品のアンソロ本とか読んでみたいなと思うくらいには、キャラや世界観に思い入れがある。
20歳(笑)の少年少女の暴走を描いた話。シナリオの運ばせ方次第では欝な話になりそうなところだけれども、基本的に出てくるキャラクターはハイテンションでハジけたやつらばかりだから、暗い気分になるってことはない。エンディングもうまく丸く収めた形で締めてていい感じ。本作品のアンソロ本とか読んでみたいなと思うくらいには、キャラや世界観に思い入れがある。
先輩、ねこ子を筆頭にして、出てくるキャラはどいつもこいつも情緒不安定気味。時に公平自身でさえ、人が変わったように落ち着きがなくなってしまう。
コメディタッチで描かれてる。でもなんだか痛々しい、まるで急き立てられたようにはしゃぐ姿。ひとり悶々と考え込んで押しつぶされてしまわないための自衛的な行動なのやもしれぬ。傍から見ててオカシイことでも、彼女たちには必要なことだった。
二人のシナリオはそんな享楽的な交流のもと振り回される形で進む。型にはまった今までの生き方に違和感を抱いていた公平にとっては、目の覚めるような体験だったことだろう。
あえかシナリオに関しては、その二つとは際立って変わった内容だったと思う。状況はすこぶるヘビィで、公平には能動性が求められた。
あえかを救うため、積極的に彼女と関わっていく話になるわけなんだけど、想像していたような虐めが延々と続く陰鬱なシーンばかりというわけではなく。この話、全シナリオ中恋愛色が一番強くて、むしろやたら甘酸っぱい情緒的な交流の方が印象的だ。
そうして離れがたい存在になってさえ、大勢の前ではいまだ見え見ぬふりしかできない、無力で冷たい自分――。そういった心情を丁寧にテキスト化していて、読者を引き込む力があった。
どうか穏やかなままでいてほしい、守ってあげたいという公平の想いは、プレイ者の気持ちをそのまま代弁したようで、強い一体感を生んでいるように思う。
思えば物語スタート時点から、あえかは、公平に対してはガードが緩いように見える。周囲の目が届かないところでは、以前から公平はあえかに普通に接していたんじゃないかなー。公平も普段から彼女を目で追っていた節がある(クラスメイトの冷ややかな目とは違った)し、少なからずお互い意識していた、そこで屋上H、脅迫、の流れなんだろう。
個人的にこの二人が最萌カップルなんだけれど、なんでかって、最も強い絆で結ばれた二人だと思えるから。それは、あえかが、自分の身の危険を顧みず他人のために正面切って立ち向かったのが何よりの証明。これほど解りやすい愛の表現ってないんじゃないですか。
また、別れと再会のプロセスを果たし結ばれる二つのシナリオと違い、想っている限り、あえかはずっととなりにいてくれる。自分の思っていること、考えていること、何度も確かめ合った二人だから。「通じ合っている」という感じがこの人たちには凄くある。
赤の他人から見ればドロップアウトした馬鹿な若者、なんだろうけど、ラストでの各々の幸せに彩られた穏やかな笑みが「これで良かったんだ」と思わせてくれる、そういう申し分のないハッピーエンド。ひねくれた見方さえしなければ感動できる内容だと思う。ぼくは基本クレーマーだけども、素直に良いと思えたので、この作品については絶賛させていただく。称賛を込めて90点つけさせてもらいます。
余談ではありますが、あえかに関しては4、5周くらいしました。それくらいプレイするとさすがに「あー、次あのシーンだ」とか覚えちゃっててもう驚きとかなくて。そういった時すごく寂しい。もう既知の行動しかしてくれないのだと、もうこの作品世界で新しい感動はないんだと思うと、これがゲームの限界なんだなと感じます。せっかく好きになったんだ、もっとこのキャラ達を眺めていたい。
そのためのファンディスクやアンソロジーコミックなんでしょうけれども、keyやleafならいざ知れず、ましてや発売から8年近くたったこの作品が今更そういう展開を期待できるわけありません…。大人しく妄想するしかないのが非常に残念です。