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michiru_9029さんのユメミルクスリの長文感想

ユーザー
michiru_9029
ゲーム
ユメミルクスリ
ブランド
rúf(ruf)
得点
90
参照数
254

一言コメント

ねこ子ちゃん最高!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

田中ロミオが好きでこの作品を購入しプレイしました。まずテキストがかなり読みやすい。一応ロミオ作品ってだけあってギャグも日常会話も面白くてスラスラ読めます(シナリオはユメミルクスリ製作委員会となっているが)特に綾と公平の兄妹喧嘩のシーンはかなり笑えます。ねこ子は出てくるだけで面白い。背景、暗い雰囲気を感じさせないふわふわしたBGM、キャラデザ全部好きです。

以下感想ネタバレ注意⤵︎ ︎

どこにでもいる当たり障りのない平凡な生き方をしているただの思春期の主人公。クラスメイトがいじめられていても傍観しているだけ。関わったら自分まで被害者になってしまうから当たり前ですよね。所々思春期だった時の自分の考えと重なる部分があると思います。

【あえか】

自分は最初にあえか√をプレイしたのですがクラスで総スカンを喰らってるあえかと関わりを持つことによって主人公の無色透明だった日常に色がつき始めるのがしっかり描写されていてかなり引き込まれました。

正義の味方でもないし、喧嘩も強くないしただ他の有象無象と同じくいじめを見ていただけの主人公があえかを守るため行動に出るシーンは本当にカッコよかった。

屋上での告白シーンも、お互い利益を得るためだけに付き合い始めた二人の間に情が芽生える描写(自転車の二人乗りのシーンも細かくて良かった)、好きな人のためなら他人を傷付けるのも厭わないあえかの怒りの感情、その全てが尊く美しく感じました。

いじめは結局解決しなかったけど二人が幸せになれるレールを二人一緒に進み始める最後は暖かすぎて感動しました。家族が一人増えましたね…泣 やっぱ家族愛はいいよ… あえかも滅茶苦茶可愛いからあえか√のためだけでもプレイしてほしい。

DQNの彼氏が出た瞬間に胸糞ゲーか?と思いましたが、本当にレイプとか無くて良かったです。


【弥津紀】

弥津紀ルートは「ユメミルクスリ」というタイトルの意味そのままの要素が少しありましたね。明日を考えるのが不安でただ死んでないだけの生き方をしていた弥津紀が公平を連れ去ってカジノで豪遊したり薬物でキメセクしたりしてなんやかんやあってお腹に子を身籠り不安でいっぱいだけど明日を見つめられるようになる話。

弥津紀が失踪した辺り多分妊娠してる状態で再開だろうなと予想はできてたけどまさか出産シーンまであるとは驚きました(お守りが消えてたのも後からそういうことだと気付いた)

お腹の子が産まれたとき、「弥津紀の中の何かが死んで何かが産まれた」当然弥津紀の心境が変わったことの証明なんですけどこういうの本当にズルいよ… 最後のCGのセリフ「明日は、どこへ行こうか──」最初の弥津紀なら絶対に言わないであろうセリフ、こんなの感動しない理由が無い。最後には家族団欒とまでは言えないけどそういう描写があってユメミルクスリって家族ゲーか…?と思いました。

母性に目覚めた綾も可愛い。あえかルートに負けないくらい面白く見応えのあるルートでした。

【ねこ子】
ユメミルクスリ、自分に色を付けるための薬、自分じゃない自分を演じるための薬、ねこ子も透明な人間だったんやな…物語進めていれば大体正体は予想がつくけどやっぱり心にくるものがある。最後は自分の力で妖精郷を見つけ公平を選ぶねこ子、高みを目指すため別れを告げ再会を果たしたとき立派になってたけどやっぱり昔と変わってなかったり。薬物も克服して夢を叶えなりたい自分になれたねこ子ちゃんはとても輝いて見えました。年月が経っていても公平を思い続けていたねこ子ちゃん、尊すぎるだろ…

ヤク中が学校の優等生連れ回して幻追っかけてるだけなのに全てが美しく感じる。最後にプレイしたルートだけどユメミルクスリの最後を締め括るにはねこ子ルートが相応しいと思います。


最後に
やる前は鬱ゲー電波ゲーの類かと思ってたけど人の温もり、家族の温もりを知れる本当に良い作品だった。主人公、ヒロイン達の成長、生き方、心境の変化や本当の家族になる変化、色んな変化が見られます。辛いシーンもあると思いますがどのルートも最後は笑顔になれるしエンディングの「さよならしようか」ラストの雰囲気に合っていてかなり刺さります。こんな良い作品に出会えて本当に良かった。