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mezamashiさんのパルフェ ~chocolat second brew Re-order~の長文感想

ユーザー
mezamashi
ゲーム
パルフェ ~chocolat second brew Re-order~
ブランド
戯画
得点
95
参照数
1807

一言コメント

【思い出レビュー】美少女ゲームとか純愛系とは合わないはずだったのだが、このゲームは最高でした。これは本当に「王道」なんでしょうか?なにはともあれ、肉食系暴走主人公の「仁」、きみのおかげですごく楽しめた!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

◎『距離感』について

美少女ゲーム系のエロゲに疎い私でも、「丸戸史明」氏が優れたライターであることは、すぐにわかりました。
「男女関係の距離感」を書くのが抜群に上手なのです。

「ただの同僚・知り合い」から少し打ち解けて、仲良くなってくると、男には下心が芽生えたりします。
「もっと仲良くなれるんじゃ?」「口説けるんじゃ?」って。
男は、ガツガツと女を狙うケダモノになったりします。

ところが、私の知る限り、大抵の「美少女ゲーム」の主人公は、そうではなかったです。
やたら鈍感で、自分からアクションを起こさない。口説かない。良く言えば純粋無垢。
そんな主人公を、女の子が先に好きになります。なんでモテるのかよくわからないけど。
でも、やたら鈍感なせいで、ちっとも気づかず、女の子はヤキモキします。

……とかそういうのが、私の「美少女ゲーム主人公」へのイメージでした。
「仁」はそうじゃなかった。
「仁」の言動は、スキあらば女子との距離を縮めてやろうという、「肉食獣」のものでした。
私は、「仁」をすぐに気に入りました。
こいつにならエロゲ主人公を任せられる。
鈍感奥手純粋童貞主人公より100倍は魅力的だ!

女子たちも個性的です。それぞれの「距離感」を持ってます。

由飛は、ベタベタと普通より近い距離まで近づいてきて、男を勘違いさせます。誘ってる?天然?
玲愛は、めちゃくちゃ遠い距離か、零距離のどちらかしかありません。両極端です。
明日香は、向こうから距離を縮めたいけど、うまくできずにジタバタします。嗜虐心を煽ります。
かすりは、距離の駆け引きをしてきます。油断してると主導権を取られそうです。
里伽子は、一定距離以内に近寄らせてくれません。難攻不落です。

このような個性が、すばらしく上手に描かれてます。
うまく距離感を描くことで、ゲームの中の話なのに、なぜか自分が恋愛に参加しているような、リアルな感覚にさせられます。

何なんでしょうか、これは?
美少女ゲームの世界に、恋愛のリアルな要素をうまく持ち込んで溶け込ませている、そんな感じがします。
ちょっとこんなのは、真似しろといわれても出来ないですよね。
称賛されてしかるべきなんじゃないでしょうか。



◎「仁」の暴走について

「仁」という主人公は、「はい」「いいえ」しか言わないドラクエ主人公と違って、随分と自己主張が激しい男です。

私が特に驚いたのは、カトレアルートに行こうとした時です。
プレイヤーの私は、カトレアルートに行きたいのに、なんと、「仁」は毎週、由飛とイチャイチャデートして、ブリックモールの超目立ちそうな店頭でキャッキャウフフして、おまけにシルバーのリングまで由飛に贈ってるじゃねぇかコノヤロウ!!

もはやどう見ても、「仁、由飛によって陥落寸前」の状態です。
そんな事、プレイヤーの俺は全く許可してねぇぞ!

しかし、なんか妙に納得してしまうわけです。
由飛は、人格はともかく、見た目はかわいいし、体はおいしそうだし、なんかベタベタしてきます。食えそうです。
肉食獣の「仁」には、スルーできるはずがないのです。
なんという人間味あふるる展開だ。いいぞもっとやれ。やっちまえー。

でも、成り行きで、結局カトレアとくっついちゃったりします。
「仁」、おまえに正義とか筋道はないのかw
カトレアにも指摘されてるじゃないかww
いや、嘘でもちゃんと否定しろよwww 
突っ込みどころ満載な主人公、「仁」。
いやー、こんな主人公でもアリなんですね。
真面目純粋鈍感主人公じゃないとダメなのかと思ってたぜ。

カトレアのキャラ付けも素晴らしい。
最初、ステレオタイプツンデレだとプレイヤーに思わせておいて、徐々にそれを崩していく。
見事にひっかかりました。
最終的には優秀な仕事のパートナーであり、完璧なる恋人になってみせたわけです。
そんなの想像できなかった。。。感無量です。
もう二度とひっかからないけどな!!(←負け惜しみ)

その可愛い可愛いカトレアを、「仁」は容赦なく弱らせて、ハイエナのように食っていくわけです。
「遠距離恋愛になって、俺が浮気とかしたら、どうするんだ?」
おおお!!こんな極悪なことを言って女子を追い込む純愛系主人公が居たとは!?

これはもう、純愛ゲームの中の、「心の陵辱シーン」です。
心の陵辱を受けた哀れなカトレアは、瞳孔が開きっぱなしになったに違いありません。
純愛ゲームでも、心の陵辱シーンがあれば、いい味が出て楽しめるものなんだな・・・

その後、「実は・・・」という話になるわけですが、まぁこれは作者のかけた保険かな。

しかし、肉食獣の「仁」は、いざHシーンになると意外と受け身な男だったりします(笑)
最後まで肉食獣でいてほしかったなー。(無理か・・・)
あと、変なあえぎ声はやめてね。似合わないから。



◎「里伽子ルート」について

世間では、「里伽子ルート」の評判がいいらしい。
それはやはり、「泣きゲー」というジャンルが、シナリオ重視で読まれているからだと思います。
私は邪道なのか、シナリオ軽視、キャラ重視、エロ重視で読みますから、里伽子ルートは「ガッカリ」の一言でした。

里伽子さんは、里伽子ルート以外ではとても魅力的なキャラに思えたのです。
クールで知的で、しかもドス黒い策士!! 
そんなイメージで見てたんです。丸戸氏の思惑にまんまと乗せられて。

クールで知的でドス黒い!なんて素敵なキャラなんだ!
そう思って期待しまくってたんです。

ところが里伽子ルートに入ると・・・
めちゃくちゃヘヴィーなハンディキャップが里伽子さんを襲います・・・
里伽子の個性的なキャラは壊され、ただの「か弱い女」になってしまいました・・・
こんな重い運命を背負わされては、誰だってこうなります・・・個性奪われます・・・
このシナリオは、もうエロどころじゃないです・・・そんなの不謹慎です・・・
私にとっては、「シナリオによってキャラとエロが壊された!どうしてくれんだ!」というお話です・・・

これだから泣きゲーは苦手なんだ。非18禁でやってほしい。
・・・と極端なことを言いたくなりますが、「泣き」は里伽子ルートだけだったので、まあいいか、とも思います。

「美少女ゲーム全般」が合わないとばかり思ってた私がやっても楽しめるぐらいだから、このゲームの守備範囲は極めて広いんじゃないでしょうか。
なんだかすごいゲームです。殿堂入りは間違いないな・・・

思うことはまだまだたくさんありますが、なんか自分の見方はズレまくってる気がするので、このへんでやめておきます。
あ、KOTOKOの Leaf Ticketはすごくいい曲だったなー。

最後に一つ、こういう美少女ゲームって、他にないのかな?
ぜひやりたい・・・