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mezamashiさんのランスIX -ヘルマン革命-の長文感想

ユーザー
mezamashi
ゲーム
ランスIX -ヘルマン革命-
ブランド
ALICESOFT
得点
90
参照数
1472

一言コメント

あ~面白かった。ランス最高!!……なのですが、ゲーム部分がママトトに近く、周回をあまり楽しめないのでさすがにファンでも100点はつけられません。長文感想はネタバレ全開なので、これからプレーする人やプレー中の人、購入を迷ってて参考にしようとしてる人などは見ない方がいいと思いますのでよろしくお願いします。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・ランスシリーズほぼ全部やってるファンが書いた感想です。
・ネタバレ全開なのでプレー後に読むことをお勧めします。
・2周目クリア、ルート全部クリア、CG184/188の時点で書いています。



【総評】

ランスシリーズのファンにとっては期待に応えられる作品だったのではないでしょうか?
ただし、ランスシリーズをやったことがない人が最初にやるには、全く不向きなゲームだと思います。
最低でも鬼畜王とか、2リメイクとか、6以後をやった上でプレイしないと楽しめないんじゃないかな……

ゲーム部分は1999年発売のSRPG「ママトト」のシステムを土台に、ビジュアル面などを2014年仕様にしたものです。
シナリオ部分は小さなエピソードをつなげていって大きな物語になる形式で、これは「Rance6」の仕組みに近いです。
つまり、ランス9はゲームとしては目新しい物ではなく、アリスソフトの過去のゲームを踏襲しています。

ルート分岐は正史のほかに7つのヒロインルートがあります。
7つのヒロインルートは、おそらく"IF"の物語として、ランスシリーズの正式な記録として残らない物語だと思われます。
正史以外に、物語がさまざまな分岐に分かれていって、時にはバッドエンドに行ったりするのは。ランスシリーズならではという感じです。

1周目のプレー時間は25~30時間ぐらいではないでしょうか?
そのうち半分以上は、シナリオを読んでいる時間になります。
1周目では正史のほかにヒロインルートを3~5個ぐらいしか見れないと思います。

2周目は既読スキップすれば10時間ぐらいです。
2周目で、ヒロインルートを全部コンプできます。

ゲームの難易度は、アリスソフトの過去作に比べるとかなり低めです。
また、「ママトト」や「にょ」シリーズを全部やっていると、ゲームとしてはあまり目新しさがなく、「そこそこ」程度だと思います。
「自由戦闘」というクリアしなくてもいい戦闘には難易度高めのものがありますが、ストーリーの続きが気になっている時は、自由戦闘は割愛したくなります。
実際、自由戦闘を全くやらなくても問題なくクリアできるでしょう。
(そのぶん、面倒な戦闘を長時間にわたって義務づけられるストレスはありません)

エロは今までのランスシリーズより、かなりボリュームアップしています。
一回のエロの尺が長くなっており、ランスシリーズでこんなに長時間エロテキストを読んだのは初めてだと思います。

私個人の感想としては、ゲーム部分はそれほど面白かったとは思いませんが、シナリオが良かったです。
馴染みの女の子キャラはみんな可愛いですし、織音さんのCGも素晴らしく安定してました。
おっさん達もいい味を出してましたし、「戦争してる」感じがシナリオから伝わってきました。
ランスファンのひいき目が混じってるかもしれませんが、じゅうぶんに「良作」だと言えるのではないでしょうか?

ただし、戦国ランスのように何周も夢中になってプレイし、100点を付けるようなゲームには届きませんでした。
やはり、ゲーム部分がちょっと弱いかなと。
2周目の時点ですでに満足してしまい、3周目4周目をやる気があまり残っていません。
(最高難易度まで上げていくと4周かかるのですが)
ということで、点数は90点と付けました。



※ここから先はネタバレ全開なのでご注意を!!




【ランスと運命の女たち】

ランス9では、ランスは気に入った女の子をメロメロにしたいらしいです。
このため、今までのような「セックスできればいい」という立場から、少し恋愛っぽいムードにもなる感じに変化しています。
ランスの口から、「好きだ」「愛してる」のようなセリフもぽんぽん飛び出してきます。
過去作のランスはあまり「好きだ」「愛してる」とか言わないタイプだったので、かなりの軌道修正です。

ランスが「好きだ」「愛してる」と言うようになった理由として、そう言った方が相手の女が俺様にメロメロになるから、という事があるでしょう。
つまり、あくまでセックスを充実させるための手段として言っているのです。
……しかしそうは言っても、お気に入りの女の子たちにしか言わないわけですから、全くの虚言だというわけではないのでしょう。

ランスシリーズのヒロインは「シィル」であり、ランスが一番好きなのはシィルである、というのがランスシリーズでの共通理解でした。
(登場人物のほとんどがそれに気づいていることになっていた)
しかし、シィルは戦国ランスで氷漬けになってしまい、ランス9でもほとんど登場しません。

正ヒロインだったはずのシィルが不在の間に、他の女の子たちと恋愛っぽいことをやって楽しもう、といったところだと思います。

ランスには「運命の女」が何人かいます。
運命の女はみんな不思議な夢に導かれて、「電卓キューブ」というダンジョンにランスと2人で行き、専用装備を手に入れます。

Rance6ではシィル、志津香、かなみが「運命の女」になりました。
そして今回、正史でシーラとチルディが、ヒロインルートでは戦姫とミラクルも電卓キューブに行って「運命の女」になりました。

運命の女が増えた!増えまくったよ!
少なくとも正史で電卓キューブに行ったシーラとチルディは確定なので、ランスの運命の女は5人以上になったのです。

では、この「運命の女」とは何なのでしょうか?
少なくとも、本人たちが決めたことではありません。
ランス世界の不思議な原理で、なんだか良くわからない神様とかが決めているのでしょう。

じゃあ、「運命の女」になったらどうなるんでしょう?
これも、よくわかりません。専用装備を手に入れるだけで終わる可能性もあるのです。
(少なくとも、ランスはその程度にしか考えていないようです)

読者としては、「運命の女」になった5人は、ランスシリーズの最後まで出番があるんだろうな~、ぐらいの事は想像できます。
しかしシィルが他の4人に立場的に並ばれたとか、そういう判断をするための材料になるかどうかはわかりません。
個人的には、あまり信用できない気がしています。
「あまり気にしない方がいいんじゃないかな」という程度ですね。



【かなみ】

ランス9で正ヒロインに最も近い、破格の待遇を受けたのが、なんとヘッポコ忍者のかなみです。
かなみスキー歴15年の私でもこんな日が来るとは予想してなかったぜ……

もともと恋愛依存症のかなみは、ランスが好きだの愛してるのと言い出したら真っ先に陥落してしまいますw
ランス1で初登場してから、戦闘能力はあまり成長しませんが、女子力だけは着実にアップしてきたかなみのピークが、ランス9なのです。
かなみは人気キャラだしこれまで散々な目に遭い続けてきたので、「良かったなぁ、かなみちゃん」と微笑ましく思った人も多いでしょう。

しかし、かなみが正ヒロインに最も近い位置にいられるのは今回限りであることはほぼ確実でしょう。
どれだけかなみが幸せになっても、それは将来さらなる不幸のどん底に落ちるための伏線にしか見えませんw
なにしろランスシリーズで最も不幸が似合う子なのだから……制作スタッフに不幸娘萌えの歪んだ性癖持ちが揃っているから……
つかの間の幸せを楽しんでくれ、かなみちゃん……



【シーラ】

ランス9のヒロインかと思われたシーラですが、やや地味だったような気がします。
見た目は個人的にパーフェクトなのですが、キャラがちょっと弱かったかな。

ランスによればシィルの代わりの奴隷2号、ということですが、本当にシィルにそっくり過ぎたのではないでしょうか。
制作スタッフの好みで「かわいくて何でもいう事を聞いてセックスの相手にもなる奴隷」を描くと、どうしてもシィルっぽくなるんだろうなあ。
ランス世界の価値観では、ランスと対等な男女関係を結べる女は存在できないので、シーラもその犠牲になってるんじゃないかな。

シィル-シーラ型の従順な奴隷か、五十六-戦姫型の良妻賢母か。
理想的な女性を描くとそうなっちゃうというのは、やはり価値観が古すぎると言われても仕方ない気はします。そこは擁護できないね!!



【志津香】

志津香もランスシリーズでトップクラスの人気を誇るキャラですよね。
人気が高い理由はキャラデザが秀逸なことと、「ランスになかなか落ちない」ことだと思ってます。
チョロイン全盛時代にあって志津香のような存在は逆に貴重じゃないでしょうか。

ランス9ではランスが志津香をエロで攻略しようとして、志津香が一生懸命抵抗します。
その様子はランスシリーズのおっさんファン達には大変すばらしい物になったのではないでしょうか。(個人的には満喫できました)

志津香自身はラガール問題やナギ問題さえ解決すれば、特に何もミッションを与えられていない人です。
彼女はどういう方向に進んでいくのでしょうか?
ランスに依存しなくても自力で進んでいくのでしょうか?
ランス9まで来てもまだ、そこは不明のままだと思います。
最終作では、志津香の進む道を描いてあげてほしいなと願ってます。



【チルディ】

なんと正史で電卓キューブに行く予想外の大出世をかましてくれました。
エロ的にも一番おかずにしやすいシーンを提供してくれたんじゃないでしょうか(mezamashi調べ。異論は認める)
チルディかわいいよぉ……

しかし、彼女はランスヒロインたちには珍しく、自分の進むべき道を自分で考え、ビジョンを持っている人です。
ランスに頭をなでられて調教されてる場合ではないのです!!
(だからこそ、調教シーンがとても良いおかずになるんですがw)

ランスの運命の女になりながら、ランスの元を離れて自立していく姿を最も想像しやすいのもチルディなのです。
ランス10での出番もほぼ確保されたと思われますから、どうなっていくのか楽しみですね。



(戦姫、ピグ、ミラクルについては割愛)



【真・エピローグ集について】
全てのルートを見たあとで、CGモード最後の「真・エピローグ集」を見ると最後に重要なシーンがあります。
また、志津香は固有ルートと同じで子供になってます。
この「真・エピローグ集」は正史なのでしょうか?
正史だとすると、戦姫がランスの子を身ごもっていたり志津香が子供になってたりするのが公式記録になります。
う~ん、どうなんでしょうね。
個人的には、「真・エピローグ集」はすべて正史としてランス10につながっていくと解釈しています。
あと私の予想では、ランス10は「真・エピローグ集」のラストシーンと同じシーンから始まるんじゃないかと思ってますが、どうなるでしょうか。
だって今のままじゃ全ルートクリアした人しか見れないシーンで終わっちゃいますもんね。



【最後に】
ランス8→9は3年ほどで出てくれたので、正直助かりました。
ランスの感想では毎回言ってることですが、「ランス完結するまでエロゲは絶対やめないぞ!」

でもランス10は時間かかるだろうな・・・
ランスみたいに40代50代になっても(エロ的に)元気でいられるように頑張ろうw