FDが発売されたということで、再プレイしましたが、『俺』とあざみさんの二人の関係でしか表現できない愛の形が好きだなぁと実感します。殺し屋と殺人鬼の二人だからこそ描かれる最後の結末がとても好きです。
FDが4年越しで発売される!ということで再プレイしました。
(FD前に再プレイした感想です)
記憶がちょうど薄れているということもあり、おさらいがてら再プしましたが、久しぶりに読んでもすごく楽しかったです。
今作品は歌舞伎町を舞台にしたハードボイルドさ、背景が濃すぎる魅力的な登場人物と、そして濃密に描かれる『殺人観念』の軽さとあっけなさだったりが好きなポイントです。
特に殺人への考え方については読むたびに考えさせられるものであり、権力や法律の突然の終焉に対する脆さや等々、とても面白かったです。
ただ、どうしても魅力的な登場人物たちが『突然の終焉』を迎えるがために、あっけなく退場してしまうのもあったりして一長一短の部分。
今作品の命のあっけなさを描くがゆえにだと思うのですが、最後の黒幕のあっけなさは改めて見ても辛いと思う部分でした。
こうした中で、私の中で一番好きなのは、やはり『俺とあざみの関係』でしか描くことができない愛の形が一番好きだなぁと実感します。
眠れぬ羊である『俺』は、過去の出来事から人は『突然の終焉』によって理不尽に終わりを迎えることに恐怖をし、眠れなくなるが、人を殺したときだけ、「終焉を迎えさせる側」として眠れるようになる殺し屋。
孤独な狼である『あざみ』は、過去の出来事から、特別な因果関係(本作で言う出力要素)もなく、ただ日常と同じように殺すことができてしまう殺人鬼。(けれど実際には自分の尊厳を守るために殺すという、ある意味生きるために必要な殺しをしていたのは二人共同じ立場という似た者同士でもありました)
その、『俺』にとってあざみを『征服(絶頂)』させることは、相手を殺すことと同じ意味合いとして眠れるようになる、かつあざみにとって『俺』は、獲物ではなく一人の男として見ることができる存在という関係性。
この歪ともいえる関係性によって描かれるお話がとても面白かったです。
特にその関係性の答えとも言える最後の結末がとても好きでした。
あざみを絶頂させることで快眠を得られる『俺』とは違い、あざみにとっての殺人衝動は、だんだん『大切な物との区別』がつかなくなってくるという時限爆弾。
そして最後にはとうとう大切なお兄ちゃんですら区別がつかなくなっていく。
こうした終わりを迎えようとする中で、あざみの隣に立つのは『俺』しかいないとして、最後の殺し合いへと向かう展開がもう本当に好きでした。
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俺「俺も一緒に行ってやるよ。おまえの世界に」
あざみ「たけちゃん……それって」
俺「おまえと獲物しかいない、透明な世界って奴へな……ただし獲物じゃなく、おまえと対等な存在としてだ。それができるのは、俺しかいねえだろ。付き合ってやるよ、最後まで」
殺すものと殺される者しか存在できない、あざみの世界。
その領域へ入っていき、この孤独な狼と命をぶつけ殺し合うこと──
ただそれだけが、唯一俺が示せるあざみへの愛や献身と呼べる何かだから。
心の問題に、ようやく決着は付いていた
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最初は、突然の終焉を回避させるためだけに必要だったあざみという存在だったはずが、
最後には、あざみの孤独な世界の隣に立つためにもう一度最後の戦いで決着をする姿。
それは『殺人』という行為によって相手の隣に立つ、二人にとっての愛の姿で。
この関係性がもうたまらなく大好きでした。
また海岸で戦うときにOP曲が流れるのがもうたまらなく熱いんですよね……。
そして最後の選択肢。
〇『頭を狙って打つ』
共倒れエンド。ある意味、どちらにも公平な終わり方だったと思います。
二人とも殺さなければ生きていけない呪いから解き放たれる終わり方。
羊√の東儀さんの言葉でいう『殺されることで不安から解放される』というものでした。
お互いに孤独にすることなく終わらせる結末は一つの幸せ(不幸)エンドとして好きです。
〇『撃たない』
あざみさんの呪いを解く終わり方。それはあざみさんにとって『獲物以外の存在もいるのだ』と、俺が死ぬ事で経験させる終わり方。そして全世界を愛してしまえばいいという終わり方でした。
とても悲しい終わり方。一番個人的に辛い終わり方です。
でも、俺の優しい声で「おかえり」というセリフがとても好きです。
〇『心臓を狙って撃つ』
あざみさんが死に、孤独な狼を救う結末。
『おやすみ、たけちゃん──』
そして俺の呪いがとける結末でした。
孤独な狼を救い、そして眠れぬ羊を狼の言葉で眠れるようになる終わり方。
この結末も、この二人でしか描けない終わり方としてとても好きです。
本編より
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俺たちが対極であると共に同類でもあるからだろう。
殺すことと殺されることの呪縛に囚われ、この世を琉離い生きてきた者同士。
あざみの瞳をすぐ近くから覗きこむ。目の前にいるのは、もう俺を脅かしつつも悩ませてきた異世界の怪物じゃない。
自身と繋がった一人の人間だ。
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何故なら、この女こそがこの世に二人といない俺の合わせ鏡にして同類なのだから。
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同類である、殺し屋と殺人鬼だからこそお互いにしか隣に立つことができず、歪な愛の関係を描くことができた作品として、美しく儚くもあるこの物語が私はとても好きでした。
そしてFDのEp5をプレイしたことでさらにその認識が深まったと思います。
とても好きな作品となりました。
ありがとうございました。