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meroronさんのニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期の長文感想

ユーザー
meroron
ゲーム
ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期
ブランド
スパイク・チュンソフト
得点
88
参照数
613

一言コメント

一部キャラが好きなのに、どうして自分はダンガンロンパ1、2にそこまでハマれなかったのか。過去作に何が不足していたと感じていたのかがV3でようやくわかった。自分が求めていたものがV3にはあったし、この作品の想いには共感する。そして、これにはダンガンロンパシリーズじゃなきゃ出来ないからこその重みがあったのだ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

評判良いからとダンガンロンパは無印と2に触れてみたが、これがどうしてかしっくりこなかった。
キャラクターは面白い。デザインも好き。狛枝は大好き。

でも最終的に感じるのは底知れない違和感で合って、ダンガンロンパという作品の波長に適合できずにいた。
それはなぜかっていうと、「希望」と「絶望」という単語のみに踊らされている作風がやっぱり嫌いだったんだと思う。

ダンガンロンパは終始それに尽きていた。希望、絶望、希望、絶望。
その言葉の深い意味の先などなく、ただただその二つの単語に踊らされてるだけ。
そう、それはキャラクターたちだけではなく作り手も、ファンも……ダンガンロンパという作品を取り巻く何もかもが「希望」と「絶望」によってコントロールされているかのようで、気味が悪かった。

つまるところ、僕はダンガンロンパという作品に一切のテーマ性を感じることができなかったのだ。
ダンロンの面白さはユニークなキャラクターたちによるコロシアイであって、残酷なオシオキであって、演出の力であって、それ以上が感じ取れなかった。

そう思っていた矢先に、まるで僕のような「視聴者」を狙い撃ちにしたかのようなこの展開……いやぁ、痺れます。
このようなメタ展開は他の作品で何度も経験してきた。
一番近い例はきっとあの同人の問題作なんだろうなぁというのはプレイ前から聞こえてくる評判で予想していたが、V3で実行したそれは、ダンガンロンパ「シリーズ」だからこそ意味のあるものだった。
僕も思っていました。ダンガンロンパってファンが多いし超人気作になったけど、このままずっと続けるのだろうかと。

ずっとキャラクターにコロシアイさせて、延々とそれをみんな楽しむのだろうかと。
どんな楽しみ方も、フィクションである以上自由だと思うんです。
でも、僕はそれを酷く「異様」だと思う。
ポップでコメディな雰囲気でやってるとはいえ、有望な高校生たちにデスゲームをさせるこの世界観……それが単発ならまだしもシリーズ化してみんな喜んでいるなんて、やっぱり異様だよ。

この違和感に対して、ダンガンロンパは一切触れずにずっと続けていくのかと思った。
けど、V3はそれを打ち破ってきた。
無印→2→V3ときて、衝撃的な最後を持ってこなくちゃいけないという制約があるからこのような結末にしたのかもしれないが、2→V3でハードル上げまくってる。

物凄く勇気のいる決断だったと思うし、メーカーの売り上げにも関係してしまうことだと思うのにやり遂げたのは素晴らしい。
それまで「面白い作品」だったダンガンロンパをまとめて「テーマ性のある面白い作品」に昇華させたことが、V3の何よりの功績なのではないでしょうか。
無印も2も、シリーズすべてを巻き込んだからこその重みだしV3は完結編としてこれ以上にないぐらい相応しい物語だと思った。


願わくば、最原くんの決断がただの茶番にならないように。
または、V3もまた覆うくらいの驚きの結末が用意されないと、続編の存在には納得されないでしょうね。



あとは箇条書きの雑感

・90以上にしようかと思ったけど酷いバグが放置されているのとゲーム性部分がやっぱり好きになれないのとアイドル声優ばっか使っていて女性キャラクターが微妙なの多かったからこの位置で……。

・もしV3を完全なメタフィクション作品にするのであれば「チームダンガンロンパ」ではなく「スパイク・チュンソフト」って言ってると思うし、やっぱり1、2の世界は存在すると思うんだよね。ちゃんと抜け道を用意してくれる当たりスタッフがそれまでのファンを虚仮にしているわけではないよ。

・書籍に書いてあった1、2と記憶の中の1、2が違うってことはV3で言われているフィクションの1、2は事実をもとに作られた微妙に異なるダンガンロンパなんじゃないかな。
あれは1、2がフィクションなんだ!ってことが大事じゃなくて、やっぱコロシアイゲームに熱狂する人々の異様さを自覚することが大事なんだと思う。

・僕が2で特に残念だったのは狛枝という圧倒的な存在がいるのに最後のラスボスがエノシマジュンコだったことで「うげーまたかよー」ってなったんだけど、V3はそれを上回るような「変化」が可能なキャラクターにしたのが好きだなぁ。
まずコスプレイヤーでダンロンというコロシアイが大好きっていう白銀つむぎって、まさに我々の現実世界にいるような存在じゃないですか。

・1章では「あんな砲丸そううまく当たるわけないだろ……陳腐すぎる結末だな……」と思ったし、2章では「なんか斬美さんの動機突拍子もなくない?」と思ったが、それを全て伏線として昇華させてきたのには驚いた。

・フィクションの中で意思を持った最原くんがやはり最後に持ってったけど、嘘をつき続けて最後まで抗った王馬くんもまた意思を持ったキャラクターとして魅力的だったな、と。