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meroronさんのネットハイの長文感想

ユーザー
meroron
ゲーム
ネットハイ
ブランド
マーベラス(マーベラスエンターテイメント、マーベラスAQL)
得点
73
参照数
291

一言コメント

リア充の嘘を暴くADVと謳っていますが、大部分はオタクたちへの鎮魂歌です。オタクスラングなパロネタ多いけど、演じてる声優さんがみんな上手く、杉浩太郎さんの描くキャラクターの表情が多彩で笑える。そしてなによりヒロインのシルがクッソ可愛いし、それだけではなくMCや対峙するリア充たちがほんと魅力的。かなり秀逸なキャラゲーです、これ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

トンデモ設定で始まるネットハイだが、逆にそれさえ受け入れてしまえばもうドンドンのめり込めます。

本作はFランクからSランクまで、計7回のボス戦が用意されてますが、このボス戦に外れがないのが凄い。
最初だからつまらないとか、中盤は微妙とか、そんなことないんです。全部面白いんです。

最初はリア充たちを貶めてランクを駆け上がるバトルかと思いましたが、真逆なんです。
本作の肝は、見栄と虚構で作られたランク王者たちの真実の姿を見極め、彼らを救うことにあります。

世の中には嘘が溢れてると思います。有名になるため、もっと儲けるため……と、ありもしないことを謳っている例は少なくないと思います。
ネットハイの主人公である「俺」はそれを暴く。
決して私利私欲のためではなく、人道として許せないことがあるから、ぶつかっていく。
そしてぶつかり、倒した後で「俺」は相手を追い詰めたりはしない。だからこそ爽快! 石川さんの熱い声も相まって清々しくプレイできる!

「こんなんで炎上しねーだろw」
「こんなやつがなんで53億人フォロワー持ってんだよw」

とか細かいツッコミどころはいくらでもあるけれども、あんま気にしなくさせるような作風を作るのがとても上手いです。
その大きな要因はやはり、声優陣の力によるものでしょう。

みんな上手い人たちですが、他の作品よりも上手く演じていると思いました。
音響監督にあたる人がすごく良い働きしていると思います。

特筆したいのはやはり内田真礼さんゆかなさんです。
メインヒロインのシルは驚くほどの可愛さなんですけど、真礼さんじゃなかったらここまでの破壊力じゃなかっただろうなと思います。
杉さんのデザインから声から台詞やら、すべてが調和してクソ可愛いシルというキャラクターが完成している。
いつもならこういう「普通に可愛い」キャラクターハマらないんですけど、そんな趣向すら押しつぶすくらいの圧倒的な可愛さです。
「んまっ!」という口癖の声の出し方とかがも~~~~どうしてここまで可愛く表現できるんだろう。

MC演じるゆかなさんは、それはそれはもう大袈裟な演技をするのだがこれがまた楽しそうで。
ENJバトルに突入するときの台詞回しは何度も聴きたくなるような中毒性を持っています。
シルもMCも、ギャップのあるキャラクターではないのだが、それでも「あ、うまいなぁ……可愛いなぁ……」と思わせてしまうのはまさにプロの声優のなせる技だと思いました。

シナリオは特筆して面白いわけではないんだけど、それを補うだけのキャラクター性が本作にはあります。
それだけで「楽しい!」と思えてしまうし、この楽しめた気持ちに嘘はないんだと思います。




以下、ネタバレありの各ランク戦


























●Fランク:Mr.エリート

「見栄はらなくたっていいじゃない」

Mr.エリートは一番最初の敵であり、全体的に見れば雑魚なのだがここまで憎めないやつだとは思わなかった。
見た目は間違いなく嘘の姿の方が良いのだが、真実の太った姿でもなんか許せてしまうあたり上手いキャラメイクだよなぁ。

戦った後は「俺」とマブダチになってるし、何より結構良い奴なんですよね彼。
やっぱりオタク同士で通じ合うものがあるというか、本当の自分を認めた方がより魅力的に映るよなぁと思う。

もうこの時点で分かっちゃうんですよ。
「あ、このゲーム心置きなく戦える爽快ゲーだ」ってね。



●Eランク:hime

「ありのままの自分でいてもいいじゃない」

プリンセスだったhimeとオタサーの姫だったヒメのどちらが魅力的かって聞かれたら、そりゃあヒメの方ですよね。
これひとつのギャップ萌えってやつです。
最初は嘘くさく警戒しちゃうけど、その後に見える姿がものすごく自然で、なんだか接していて楽しくなってしまう。

ここで気づくのが、この物語の構成の意味。
暴かれた姿の方が魅力的に思わせることで、ありのままでいることへの安心感を与えてくれる。



●Dランク:昏71

「怯えて生きていかなくてもいいじゃない」

シナリオ的にはこの話が一番好きでした。

茜ちゃんが可愛いのは勿論なんだけど、大洋Pとお父さんのギャップが凄すぎてねw
まさかあんな陽気そうな外見の中身がごっついヤクザだと思わないでしょ普通w

また、この話は何気に社会性も織り交ぜてきていて、人間じゃないということで売りに出すことにより誹謗中傷を軽減させるというのは「なるほどなぁ」と思ったね。
確かに、この方法なら、中の人がいないと思わせれば本人へのダメージは少ない。

こんなことをしてまで娘を守りつつ、強いリア充にしてあげたいという親心は結構グッときます。
普通にええパパやないか……。

だから「俺」の最後の答え合わせは普通に大好きなんですよ。

「PはPでも―――」ってやつ。

でもお父さん、茜ちゃんの格好あまりにも卑猥すぎるのでなんとかしてあげてください!!w



●Cランク:逢坂真愛

「夢に嘘つかなくたっていいじゃない」

元ネタは恋空だろうけど懐かしすぎるでしょw

けど実際は漫画家で、ホントは人気を得るためにやりたくない方向で売りに出していた悲しい子だった。
ここも結構社会性感じる部分で、こうやって本来の夢とは違う形で有名になる人もいんじゃないかと思います。

結局それは誰かの傀儡であり、いくら売れるからと言ってそれが本当に良いことなのかはわからないのだ。
逢坂真愛の嘘の姿はきっとどこかにあるはずなんです。結構普遍的なんですよこれ。

それを暴き、許す「俺」がやっぱりかっこいいんだよなぁ。
本当の逢坂真愛も普通に可愛いしね!
実は「俺」と同じで対異性に慣れてないしめっちゃええ子やん……。

やっぱり自然体が一番ですよ。



●Bランク:GLG

「演じながら生きなくたっていいじゃない」

これもまたガチで芸能界にありそうな例ですよね。
バンビーナ事件というのもこれ以前本当にあったよね。 パーナさん事件だっけ?

そんな元ネタから分かるように、この戦いでのメインテーマは「尊重し合う関係」です。
行き過ぎたファンの暴走というのはたしかによくあるし、それを増長させるような行いを当事者はしてはいけない。
実はD~Bランク戦って結構社会性富んでるんですよね。

実際この後のA、Sランク戦よりここら辺の戦いが一番好きだったりする。



●Aランク:シュバインシュタイガー

「働かなくたっていいじゃない」

ギャグだろほとんどこれww
でもシュバインが掲げる絶対定時退社という理想は決して悪くないどころは実現してほしいと思ったわw


●Sランク:KING

「背伸びしたっていいじゃない」

予想できなかった展開だけど、蓋を開けてみるとあっさりだなぁw


●最終戦

あれってつまりシルとMCはもともとあの子から独立した人格になっていたってことでよいのかな。