そこにはただ楽園だけがあった
単純に言うと、これは”楽園”を描いた作品なのだと思います。そこには悪意が存在しない。登場人物たちはすべて愛すべきキャラクターを持っていて、絶対的な悪人は存在しない。そこには不幸は存在しない。どんな結論に至ろうともかならず救われる。そんな世界が描かれています。それはただの現実逃避のファンタジーであるかもしれないけど、同時にこの上なく幸福の表象なんだと思うんだ。幸福という概念を突き詰めたらこういう形になるのではないか、と思えるほど。この作品の幸福の表象として精度の高さは対立を描いているところからもわかるんだ。そこには立場、目的、利害の関係があり、その中で争いが起こるのは不可避であると描かれていて、けれど、対立が起こったとしても、それは決して残酷や悲劇には繋がらないこと、それは対立するもの同士の努力によって成し遂げられなければならないと言うこと。それによって、単に対立を描かないことよりも幸福の意味は広いものとなっていると思う。争いが描かれないのではない、争いがあったとしてもそれは不幸には落とし込まれないと言う不断の努力が描かれているのだ。僕はそこに最大の幸福があるように思えるのでした。
少し概念を弄びすぎたのでゲームの具体的な要素についても書きますね。つーか、書きたい。
女幹部をはじめとするキャラクターはそれぞれが魅力的で、正直嫌いなキャラクターがいない。まああえて一番好きなキャラを挙げるならルナルバース陛下で(別にロリババアだからではない。本当だ)、エロゲーらしい奔放なメンタリティと為政者としての覚悟がきちんと描かれているところがすごく良い。作中で幹部たちから絶対の忠誠を捧げられているのも、きちんと納得がいくレベルで描かれていると思う。個人的にエロというのはエロシチュエーションだけではエロくはなくて、キャラクターが描かれてこそエロスは生まれてくるものだと思っていて。そういう意味で、この作品は極めてエロいものだと思う。
あと主人公のキャラクターも良くて、抜きゲーの主人公らしくエロに積極的ながら、どこか小市民でお人好しなところがある。口ではせいぜい威勢の良いことを言いながら、本当には鬼畜なことは出来ないタイプってゆーの?むしろ誰かが困っていたらついつい手を差し伸べてしまう、ライトノベル的に言うとヘタレ・ヒーローの系譜に属するのかな。物語もそれに沿っていて、騙されて陵辱されたヒロインたちがなし崩し的に主人公に惚れてしまうのも、ただのご都合主義と流すことなく納得できるだけの積み重ねが感じられるだよね。これも”幸福感”と言う意味では重要なとことで、やっぱり尊敬できない主人公が理不尽に惚れられるのは納得いかないじゃないですか。僕は納得いかないんですよ。
そんなわけで、個人的には限りなく理想に近いほんわか系の抜きゲーであったわけですが、まああえてケチをつけるとしたらCG/シーンをコンプリートするのが凄まじくめんどくさいってことですかね。いや、むしろ嬉しい悲鳴なんですが。ただ、追加要素にあたるリゾート編が非常に長くて、CG回収のために何度も通らないといけないんですよ。エンディングを探してトライアル&エラーを繰り替えているときには、さすがに苦痛になりました。まあ、このゲームはエンディングに後日談がセットになっていて、それによるイチャイチャ成分の持つ多幸感は相当なもので、それを求めての苦痛ならば甘受出来るんですけどね(しかし、まりあルートだけは、残念ながら攻略サイトを見てしまった…。これだけは悔いが残る)。