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katudonさんのBradyon Vedaの長文感想

ユーザー
katudon
ゲーム
Bradyon Veda
ブランド
暁WORKS
得点
79
参照数
1072

一言コメント

瞬間的にはとても面白いところもあったし、好きな作品だが、難解な上に悪いところも多すぎて減点方式で点数を付けたら0点になりかねない作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・ヒロイン
 ハードボイルド風の雰囲気で軍人だったので、貞操も恥じらいも無い豪傑かアバズレかと警戒したが、普通で可愛かった。(特別良いわけではないが)拒否反応が出るユーザーは少ないと思う。処女だし。
 腹筋バキバキのエロもサブのクラウディアだけだったので、ノーマルな性癖の人でも安心。メインよりヴィヴァが好きだったのでルートもシーンも無いのは残念。


・バトル
 一見バトル物っぽいが、戦闘シーンはほとんど設定語りというかウンチクで映像化したら一瞬で終わるものがほとんど。具体的にはこんな感じ。

 元素クロムとニッケルを混ぜてまるまるを生成、CO2とH2Oと何々をむにゃむにゃ(ここまで化学)→しかし、何々という元素にはこういう性質があるのでこのままでは無理、しかし神術はこの物理法則を覆すのでやれます(ここ空想科学か超能力)→そしてここまでのことを発動するときは何故か印行組んで経文唱えて「不動明王の力を召請」(宗教)

 上記の流れがひとつ行動するたびに1ページは入る。その結果ビーム出したり、腕を金属にして攻撃止めたり、好み次第だが正直嫌い。テンポが悪いし、化学好きは化学式の羅列からの「しかし神術はそれらを覆す」を許せるのだろうか、そして何よりカッコイイからぶち込んだだけっぽいナンたら明王、ナンやら神の力を顕現とか言うのはない。(作中で各種明王・神は存在しない。未来人的な主人公達はそれらは存在しないし、宗教は克服されたと明言している。)しかも主人公は経文を唱えるのに、北欧神話モチーフの人なんかは口語で「昔何々を倒したオーディンの槍出てこいや」みたいなことをポエム仕立てに読み上げるだけ……いや、経文的なもの探してこいよと、せめて聖書担当、日本書紀担当は原典簡単に見つかるだろうに何故自作のポエムなの?


・シナリオ
 序盤の印象は難解だが、考えればまあ理解できるし、興味が無い化学式などは飛ばせば面白い。light作品に似ていると思うが、こちらのほうが雰囲気が落ち着いていて入りやすい。好き嫌いは激しそうだが、個人的にはここ数年で一番の傑作……などなどと草薙を倒す辺りまでは、思っていたが、ここがピーク。

 そして何の脈絡も無く唐突に始まるコレまでの印象と全く違うカウボーイビバップ風のカッコイイがわけの分からない次回予告、そして作中に登場しないが(多分)存在する宇宙生命体ガリオネアン、やたらとバーでバーボンを飲み倒し、死神のダンスに付き合ってもらおう的な事を言い出す中二病が進行しつづける主人公、戦闘は相変わらずオカルトと化学と空想化学が入り混じりSFと思えば真言を唱える。

 軍隊、復讐、内閣調査室、テロに社会主義、天皇機関説をモデルとした皇機関説や大政翼賛会などの近代史、愛国主義に国粋主義……政経モノかと思えば、仮現時空に四次元世界があって主人公達は人間でなく量子脳で同位体で全時空の危機で……

 拡がり続ける世界観と設定・要素にもうおなかいっぱいでわけわかめ。SF部分が難解なのは仕方ないとして、全部乗せのちゃんぽんは駄目だと思う。ほとんどの要素が中途半端。(架空の世界に浸りたい人とか妄想力の強い人には魅力的なのかもしれないが)

 結局、五章のスターウォーズが一番面白かった。他にも局所的にかなり感動的なシーンはあったし、ラストも良かったが、それまでに気持ちが冷め切っていた。