メーカー自身にもユーザーに対しても一切手加減がない。様々な問題点はある。しかし、そのことを含めても100点をつける価値のあるクオリティーを誇る名作。数時間プレイした時点で既存のエロゲー群と比較して格が違うことを確信した。これはイラストが良いとかシナリオが良いというような一要素が優れているということではなく、イラスト・シナリオ・歌(BGM含む)・演出などの全ての要素において高水準であり、なによりも各要素ごとの評価というより複合的な効果として他を圧倒するほどの雰囲気を形成するに到っていることから感じたことだ。このゲームで不快感を覚える者(自分も含める)は多いだろうがクオリティーの高さは必見である。ただ、もっともプレイしたい内容は最後のシーン以降の展開であった。あの続きを望む。あくまで本質は生き方であり愛にある。(問題点については長文にて。)
最初にこのゲームにおいてユーザーに対するサービス精神や媚びるようなストーリー展開は期待するだけ無駄である。全くないとは言わないがないと思ったほうがいい。
このゲームを本当に楽しむためには前作をコンプリートしておくことが絶対条件といっていい。そのうえで一番気に入っているキャラが純夏であることが望ましい(この点が冥夜一筋であり、純夏が二番目に嫌いなキャラである自分にはかなり辛いところであった)。ただ、前作からの繋がりと話の展開上、純夏がメインヒロイン扱いはやむをえないと判断する。
グロイシーン、結局全滅するヒロイン達という部分については、前提として戦争であること、戦場を舞台としたライトな恋愛モノや萌えゲーを作ろうとしたわけではないことを考慮すれば多くのキャラが死ぬことについても致し方ないし、切迫した戦況を演出するためともとれる。その厳しい表現はユーザーに対してまったく容赦ない。中には単に「グロイから」と言って極端な低評価や地雷扱いをする人も存在するが悲しいことである。それと最後に全ヒロインに対する救済措置的なシーンがあったが効果としては薄い。あの続きが欲しかった。
主人公の失敗(もしくは挫折)→反省→成長という流れの繰り返しがパターンし過ぎに感じるほどに多くある。これが少しうっとうしく感じた。成長のきっかけとなる上官や仲間との交流やセリフは良かった。
戦闘描写は緊迫感があり雰囲気も出ていて非常に良かったが戦術機などの一枚絵たちをそのまま動かすことによる表現については賛否が分かれると思う。個人的には動かさないよりは良かった。
このゲームの本質は戦争でもなく戦いそのものでもない。戦争はあくまで状況でしかない。武の戦う理由は純夏への愛・仲間への愛・国への愛・人類への愛・世界への愛であった(左にいくほど身近な理由)。償いでもあった。そして純夏の愛のかたちも変化する。それは武が純夏以外を選んだ世界(可能性、結果)を奪い続けてループを繰り返していたのが最後の悠陽と霞を加えたエクストラへの回帰により変わったことが分かる。
長文の内容からも分かると思うが、このゲームはプレイによって心地良く感じたり、ストレスを発散したりすることのできる内容ではない。しかし、これまでプレイしたゲームと相対的に評価して表現力という意味では最高の作品だった。