主人公にイラつくが、そこも含めて実にリアル
良く出来ている。テキストが上手い。
ごく一般的な倫理観と貞操観念、そして心優しくもプライドが先走る男。そんな、その辺に掃いて捨てる程いそうなありふれたリアルな主人公が、ゼミで知り合った美人と静かに恋仲になったはいいものの、自覚しないままに好き合っていた幼馴染の子への感情に遅まきながらに気が付いてしまい板挟みになるというある種逆NTR要素がありそうな無さそうな微妙なラインのお話。断じてハーレムではない。
この板挟み感が本当にリアルで、主人公は自分が幼馴染相手に性的な好意を向けている事に内心気が付いているものの、倫理観という観点から見て、自分は彼女持ちでありながら他に好きな人が出来てしまった最低野郎という事を認める訳には行かず、しかし幼馴染という対象へ急に態度を変える訳にも行かず。
もっと言うならば、ずっと昔から好意を向け合っていた筈の幼馴染がいたにも関わらず、事実だけを拾えば今も想ってくれているその幼馴染を裏切って恋人を作ってしまったという後ろめたさから、今更幼馴染の事が好きだったんだと開き直る事もできず。
美女二人の間で揺れ動くハッキリしない最低野郎、などとは口が裂けても断じられない板挟みのリアルが描かれていて、グロテスクな程です。
とにかくシナリオを読み進めて欲しい。
勿論、ゲームであるがゆえに嘘も多分に感じられますが、それでも思わず唸ってしまう程度には理屈の通った感情の話が展開されています。
ライターの狙い通り、とっても嫌な気持ちにさせられました。恋愛ってのは醜いですね……。