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k.tucumoさんのRE:D Cherish!の長文感想

ユーザー
k.tucumo
ゲーム
RE:D Cherish!
ブランド
CRYSTALiA
得点
60
参照数
661

一言コメント

駄作とは言わないが……

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

プレイして真っ先に気になるのは主人公の軽薄さ。
この軽薄さには理由があって、過去散々後ろ暗い仕事をしてきたが故、ある種普通の人間を装った張りぼての人格……みたいな事は無く、本当にDQNに片足突っ込んでるだけのただの軽薄男というオチ。
別にそれだけならまぁ、受け入れやすいかどうかは別にしてもキャラ設定としてはアリでしょうが……わざわざ嫌われやすい性格設定を主人公に適用したからには理由が欲しかったところですが、実際にはそんなもんは無いという。
初手ヒロインとの鬱陶しい絡みから始まり、「他人に甘えるなんて云々」と独白させ、平和な日常生活とは縁遠い生活をしていた事を露骨にアピールするくせに、その独白の寸前にはガッツリ無警戒で他人の行為に甘えたり、ガッツリ俗っぽい言動を垂れ流す始末。

そして次に襲い掛かってくるのが、上記した通り、設定に対して矛盾しまくりな登場人物たちの言動。

ユニカとの初遭遇時なんかも嘘臭ささとご都合主義がかなりキツく臭ってきます。
前提条件として……

・ユニカは“根は真面目で義理堅いが、愛想が悪く理屈っぽい上他人に興味が無い”(シナリオ上での周囲からの人物評)
・ユニカは“人と関わるのが苦手で、必要以上のコミュニケーションは取りたがらない”(公式紹介)
・エリュ―テリアは超治安が悪い

という設定の土台がある事を抑えておきます。
その前提を踏まえた上で、主人公が昔失敗した任務の護衛対象に空見したという理由で声を掛けられる所からスタート。この時点でユニカからすれば、見知らぬ戦闘用サイボーグの男(ユニカは一目でその事を判別できる)が知人を装って急に声をかけてきた訳です。治安の糞悪いエリューテリアで、です。
めちゃくちゃ危険な状況ですので、ユニカは当然一刻も早くその状況を脱しようとしてサッサと踵を返しますが……
ここから主人公がクソウザイDQN力を発揮。「人違いだった、済まない」「聞きたい事があるんだ。DDダイナーってお店を知らないか?」この二言で済む話なんですが、何故か主人公は無意味に「趣味は?」「名前は?」等とナンパ師も苦笑いのコテコテなナンパトークを繰り出し始めます(この辺りも必要性が無いのでプレイする身としてはDQN主人公の軽薄な言動に早速感情移入できなくなって嫌になる訳ですが)。
そして、そのナンパに対して軽妙なジョークを織り交ぜながらもきっちり反応を返すユニカ。

“人と関わるのが苦手で、必要以上のコミュニケーションは取りたがらない”女性が、“治安の糞悪い場所”で、“戦闘用サイボーグにウザ絡みされて”、ジョークを交えながらキッチリ反応を返すって、コミュニケーションが苦手とは嘘もいい所だし、必要以外のコミュニケーションを取りたがらないって何?
しかも舞台設定を考えれば、日本人女性がソマリアの裏路地で見るからに薬の売人と思わしい男に話しかけられてホイホイ相手しちゃうのと同じな訳です。

いや~キツイっす。

とにかくキャラクター達の言動に理由と説得力がミリも感じられないんですね。
その後見知らぬ女性(桜子)にアパートに連れ込まれて一夜を共にする件なんかもそうですが、そんな軽薄で短慮に過ぎる行動をさせておいた直後に「他人に甘えるなんて、もう長い事していない。日本で仕事をする時は~~でももうそんな事を気にする必要はないんだ」なんて寝惚けた事を独白させます。

なんかもう、全てが矛盾している上に破綻していて、シナリオは正直読めたもんじゃない。

戦闘シーンにもこれらの理由のない無駄行動が強く出ており、技名を叫ぶものの何が起ったのかはテキストに起こされる訳でもなく、なんだか判らない内に戦闘は終わるので別に必殺技が出たからといって熱くなれる訳でもなく、ただ中二病患者がなんか叫んでるだけっていう寒々しい事態に。
こんなんなら技名なんか叫ばせずに淡々と“今何をしたのか”を文字に起こして貰っただけの方が熱くなれるし、そこまで戦闘がメインじゃないというならこんな寒々しい「必殺技の名前」とかいう設定を持ち出さなくていい訳です。

とにかく『シナリオ上でライターがやりたかったから入れた』遣り取りが悪目立ちするくせに、そのやり取りには必要性が感じられないのでただただ矛盾の塊として悪臭を放つだけという最悪な結果になっています。

細かな時間軸の整合性にミスがあるだとか、超常的な力の設定が固まってないだとか、その辺の事は“ファンタジーだから”で片付けられても登場人物たちの思考や言動は“ファンタジーだから”で片付けることはできません。
今作で言えば、アンドロイドに関する設定や世界に関する設定がガバガバでも多少は無視できるけれど、主人公やヒロインが知的障碍者なのは無視できないって事になる訳です。

正直、なんだかなぁ~という感じです。