雰囲気はいいのだが
元々スローライフ感のあるお話である上、丁寧口調の主人公が大真面目にいきり立った股間を見せ付けて戦闘を行うというシュールギャグに全力な本作。
物語の冒頭とか絵の雰囲気から、復讐だとかそういったへヴィーな題材を主軸に置いたものを想像しますが、全くそんな事は無いです。
それにしたって、一応人間に弾圧されている魔族が魔族の力の根源を奪い返し復興しようというからには当然人間との軋轢が産まれて然るべきというか、実際シナリオ上でもそれが心配なのでひっそり奪い返そうとか言ってスタートするくせに、最初期に仲間になる(ターン数で言えば10ターン以内)初対面の人物相手にベラベラと目的から何から全てつまびらかに明かすっていう締りの悪さには唖然としてしまいました。
それも相手が目的を共有できそうな同族だとか、そういう事も一切なし。ちょっとバイトに応募してきました~ってくらいの感覚の人物にいきなり全部明かして協力を求める。ちょっと頭悪すぎるっていうかなんていうか。
一応秘密を明かしたところで始末できるのでという余裕から来る行動ではあると説明されているものの、周囲への影響を考え慎重に事を運ぶならそうはならんだろうという物。
のっけからそんなんで整合性も糞もあったもんじゃないので、ああこれはお話を楽しむのではなく雰囲気を楽しむ雰囲気ゲーなんだなと思っておかないとキツイと思います。
私はそう切り替えました。
そして、ギルドマスターの際にも(個人的に)問題と感じていた“サブキャラの話が独立し過ぎ”という点が今回も出てしまっています。
サブキャラを仲間にするタイミングをある程度ユーザーに任せている自由度がある分、メインシナリオへの齟齬を警戒してかサブキャラクター達はメインシナリオに一切絡んできません。サブキャラ同士での絡みも一切ない。これがちょっと悲しいです。
サブキャラを仲間にしている事をメインシナリオの進行フラグに設定してしまえ良いだけだと思うんですが……。
サブキャラの数が多くなるとメインシナリオでの描写がその分分散してしまう……という部分を問題視しているなら、それはつまりキャラクター数を処理しきれないという偏にシナリオ班の力量不足な訳ですから、それを自覚しているならキャラクター数を減らしてメインシナリオの質を上げた方が余程良いのではないかとも思えます。
プログラムにもやや問題を感じる部分があります。
場転(暗転して背景が変わるとか)の度にブチッ!と音楽やら環境音やらが全部ぶつ切りにされて不安になるし、オブジェクト処理がなされず、チュートリアル等はまるでパワポを操作しているような感覚(次に進む画面上の←→ボタンを押してチュートリアル画面を前後させるとかではない。レターボックスをクリックすることでチュートリアルが書かれた背景が入れ替わる)、そしてセーブデータをロードして再開すると、ロードした場面が一瞬表示された後1クリックを挟んで再度同じ場面からスタートする(恐らくセーブ画面の画像データ内キャッシュを読み込んだ後、再度シーンをロードする等、何等かの理由で二重ロードが行われている)、テキストを高速でクリックするとテキストデータの読み込みが間に合わないのかたった今クリックした文章と同じ文章が再度表示されるetcetc....再現性100%とは言わないものの、それなりの頻度で起るこれらの不備が色々と同社のプログラム班に対する不安を掻き立てます。
恐らくはギルドマスターのアレコレの時に、プログラムに関する主力人材が抜けてしまったんだろうなぁ~と。
同社の作るゲームの雰囲気は非常に好きなので、これからも頑張ってほしいと思っているのですが。
うーん、まだ完全復活という訳にはいかないようで……。