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k.tucumoさんのアオナツラインの長文感想

ユーザー
k.tucumo
ゲーム
アオナツライン
ブランド
戯画
得点
40
参照数
2201

一言コメント

作られた青春に感動はついてこない

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

プレイしてまず強烈な違和感として襲い掛かってくるのが、“登場人物達の目線が青春を謳歌できなかった後悔に塗れた中年のそれ”である事。
青春というのは、身に宿った情熱で訳も分からず突っ走る若者達を、大人が言い表す言葉であって、青春真っ盛りな当の学生諸子は「自分達青春してるぜ!」なんて思わないし言わないんです。
必死こいて空回りしつつも、それが正しいと信じて足掻いている姿に心を熱くさせられたりするのが“青春”でしょう。
ところが、この作品は登場人物たちは常に自分達の行いを“大人視点”でジャッジして、青春してるかどうか、なんて基準で行動を決めて行く訳です。
全然青春してないじゃん……。

次に襲い来る違和感はキャラクターや世界観の設定に対する矛盾の嵐。
まぁ箸が転がっただけで惚れるようなチョロすぎるヒロインが溢れている昨今、お嬢様のティッシュ惚れからの転校までは所詮エロゲシナリオとして目を瞑ったとしても、それ以外も酷すぎるので無視できない。
主要人物(最初の3人友達グループ)の内、主人公以外はスクールカーストのトップ2を張っている人物達。
そんなくせに仲間が3人しかない事を悩んでたりして、もっと友達欲しいとか考えている。
あんな目立つ場所でずっとバスケやってて、否応にも目立ちまくってたくせに、今まで他生徒とのコミュニケートがなかったとでも言うのか?
かと思えばお嬢様を名乗る世間知らずがティッシュの一件から急接近してきて、それをスンナリ受け入れたかと思ったら矢継ぎ早に後輩まで仲間に入れちゃう。もう訳が分からない。
開始早々に“設定と状況が矛盾しまくり”な場面をこれでもかと見せ付けられて、いざ始まったと思ったら必要以上にウジウジウジウジしている主人公。
告白と同時にエッチしちゃって、そのあとはエッチ三昧になる程行動力あるくせに。
しかもその告白が、長い付き合いの親友に今まで何度も尻を叩かれておきながら、それでもウジウジしていたくせに上記の経緯で降って湧いた友人の一喝で急にやる気だしちゃったっていう理由。自分が親友ポジにいたら激怒します。
それに加えて、主人公の見せる“人の良さ”がとてつもなく空々しい。
理由のない無償の愛とか優しさってものは確かにあって、見返りを求めずに人にやさしく出来るなんてことは無い……なんてつまんない事は言いませんが、無償の奉仕ができる人間性があるならば、やっかみの視線に晒されたからってウジウジし始めたりしないんですよ。ホントに、一々設定と状況が矛盾していて突っ込み切れない。

そもそも主人公のウジウジの原因は、カースト上位二人に囲まれてやっかみの視線に晒されて~って所に起因してる訳ですが、それは実に個人的なただの劣等感な訳です。
その劣等感で周囲を振り回しまくった挙句、身勝手なその気持ちに自分の手で決着を付ける訳でもなく、終始友人頼りで物語が進行し、吹っ切れて猿のようにエッチするっていう。こんな奴が優しい性格?はぁ?

矛盾のオンパレードでとてもじゃないけどシナリオを読むとかそういう段階にすら至って無いというか。
青春ものって事ですが、まぁタイトルの通り、嘘っぱち青春物って事で私の評価は終了です。
青空と白い雲を強調した「青春っぽいイメージ」に騙されるユーザーが減る事を祈ってます。