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k.tucumoさんのキュリオディーラーの長文感想

ユーザー
k.tucumo
ゲーム
キュリオディーラー
ブランド
AXL
得点
50
参照数
1210

一言コメント

軽い

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

キャラクター達は単体で見ると、不愉快さを感じる事も少なく高水準だと感じました。

しかし、問題は何よりもシナリオの軽さ。
物語冒頭でも語られる通り、主人公は冒険への恐怖(両親が死んだかもという現実)を抱えていて、冒険の魅力と同時に危険性も十分に理解している、という前提があります。
にも関わらず、自分に近しい人物たちが全くの未経験から訓練も何もなくいきなり塔へ上るという状況を「不安だ」というモノローグの一つであっさりと流してしまいます。
互いに命を預けて塔へ挑む等と言っている割に、お互いの力量を確認するような事も無く冒険がスタート。

もうこの時点で開いた口がふさがらないというもの。
主人公は自分の親が冒険で死んでいる訳です。その冒険に、剣もろくに振るったことのない新人をそのままの状態で連れて行くんです。
しかも理由が、「危険を肌で感じてもらうのが一番理解が速い」という。
なんか尤もらしく聞こえますが、主人公の過去や心情を考えればあまりにも矛盾しているというものです。
一番最初のフロアくらいは準備なしでも自分が手助けすれば余裕?いやいや、冒険は何があるかわからないから、両親は強かったにも関わらず死んだんじゃなかったのか?そのトラウマ抱えているくせに仲間に対して冷たいなお前。
しかも、メンバーが初の冒険で浮かれちゃって忠告に耳を貸さないから仕方なくそうした訳でもない。もうこうなってくると主人公が相当バカなのか嫌な野郎なのかのどちらかです。

通路でゴブリンと出会い、敢えて手は出さず仲間たちの動きを見守る主人公。
という事は、戦闘時点では後方にいる訳ですね主人公は。敵は雑魚のゴブリン一匹なので、赤子同然のメンバーでもまぁ死にはしないだろうという考えがあっての事なんでしょうか。まぁ案の定武器すらまともに使えない面々を後方へ下がらせ、主人公がゴブリンを処理。
おう、何の危険も感じられない初遭遇だったな?分かったのはメンバーが弱すぎるって事だけで魔物の怖さも何もわからんな?というかそもそもこの魔物は武装した冒険者相手に一匹で何しに来たんだ?ここは冒険者が毎日のように通り抜ける、いわば魔物にとっての危険地帯or狩り場な訳だろ?

一事が万事こんな調子で、冒険という題材を扱っているにも関わらず緊張感が欠片も無い訳です。
AXLの作風にハードボイルドは求めていないってのは勿論ですが、冒険や両親死亡といったそれなりにシリアスな題材を扱っているのに、活かすどころか疑問しか生まれない設定になってしまっています。

シナリオライターにはもっと設定や、人物がなぜそう考えたのか/行動をしたのか、という理由まで考えてテキストを起こして欲しいものです。昨今のエロゲーのシナリオは頭が悪すぎです。