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k-qさんのFate/stay nightの長文感想

ユーザー
k-q
ゲーム
Fate/stay night
ブランド
TYPE-MOON
得点
100
参照数
1831

一言コメント

あまりに熱い『燃え』が世間で押されたがために、ゲームの印象がチープになった気がする(08.03.18最下段追記)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

世間的にこの作品のメッセージ性の無さや、話の整合性云々が問題視されているが、
私のこの作品に対する評価基準は実に簡単である。

『全体』として見て圧倒的に面白かったから、である。

プレイした当時の衝撃は忘れられない。
OPに入ったときの興奮は、今でも思い出せる。

何故あれほどまで引き込まれたのか。
はっきりとは言えないのだが、けっして『燃え』る展開に引き込まれたわけでないはずだ。

特にセイバールートに至っては、『燃え』るシーンが最大の見せ場というわけではなかったように思う。
では、何に引き込まれたか?

それは、圧倒的な世界観、緊張感。
そして何より、『先が見えない展開』だろう。
見えているものは一つ、『主人公が勝つ』ただそれだけ。

緻密に作りこまれた世界の中で行われる殺しあいに緊張感を持たせた、このゲームの肝はまさにそれだろう。

プレイ後に何が面白かったかと問えば、多くの人が『燃える展開』を挙げる。
『燃える展開』ばかり挙げられるのも仕方ないとは思う。
たいていの人は Fate→Unlimited Blade Works→Hea…× という感じになるので、
一番燃えるUnlimited Blade Works ルートが頭にこびりつく。
(私はHeavens Feelも好きですが)


しかし、よくよく思い返してみれば。
このゲームは本当に『燃える展開』ばかりだったか。
それがこのゲームの面白さだったのか。


サスペンス系のゲームをやったとき、それらにも確かに緊張感や怖さがあった。
けれど、この作品がもつ独特な怖さと緊張感、そして日常のバランスを越えるものは
無かった。(ホラーは緊張と言うよりは怖いばかりなので除く)

自分だけかもしれないが……
ランサーが衛宮邸を襲ってきたとき、どこから襲ってくるか緊張した。
バーサーカーとイリヤの登場シーンには戦慄が走った。
そして衛宮邸に帰ってきて、いつもほっとした。
言峰協会は主人公が向かう度にいつも緊張した。

あの『緊張感』がこのゲームの最大の魅力ではないだろうか。

このゲームをプレイした後、色々なサイトを駆け巡った。
考察サイトは片っ端から訪れたし、SSも多く読んだ。
MADも数多く見た。初めて他人に勧めたいとも思った。

ただ、悲しいことがある。

ここまで世間にPUSHされ続け、高評価を連発し、一時期はこの業界No1の作品かとも思われたこの作品。
発売当初から1~2年は100点が飛び交い、中央値は95に達した。

しかし、この作品を昔褒めちぎった人たちの中で、この作品を今も昔通りに
褒めちぎる人は一体どれほど残っているのだろうか?

いや、昔褒めちぎった人でなくてもいい。
今から新しく始める人の評価がかなり厳しいというのが現状としてある。
「最後まで楽しめた」と、言う人がいくつか問題点を指摘して50~60点など
ざらにある。

冒頭で述べた、メッセージ性の無さに後になって気づいて評価を変える人もいる。

作品自体は何も変わってない。これを超える名作が近年腐るほど出たわけでもない。
ただ、作品に付き纏う『印象』が変わっただけ。

この作品にチープな印象が付き纏い、この作品を褒めちぎってしまうと、
その人の感性が低いレベルだと思われるような雰囲気が間違いなく流れている。

なぜか。その要因の一つとして、『燃え』の印象が先行したせいで、『少年マンガ』的な作品だった。
そんな印象に変わってしまったのではないだろうか。

もしくは、あまりの人気の過熱ぶりにFateの世界全体が使い古され、飽きから来る嫌悪感が生じているのかもしれない。

人の記憶ほど当てになるものはない。
時の経過により輝く記憶もあれば、霞んでいく記憶もある。

正直、私も『Fate/Stay Night』が100点に値するゲームだったかは"今"となっては断言できない。
周りの情報を取り込みすぎたし、名曲などでもない限り、時の経過はその作品を霞ませる。

それでも、当時なぜあそこまで熱中したのか。なぜ様々なサイトを回ったのか。
それを思い出せば、この作品が楽しかったというのは疑いようがない。

これは当時の"感情"で点をつけているだけであり、今の冷静な判断のもとでつけた点数ではない。

冷静になったときにゲームを評価することは必要なことである。
ただ、このゲームの場合は、もはや冷静な客観的評価は難しい。

だからこそ、当時湧き上がった感情を頼りに点数をつけておく。