伊月ルートだけなら90点近くつけたい
主人公は母を病で亡くし、父は別の女性と再婚。その後、父も他界。居場所だった柔道も奪われる。残されたのは主人公と父の再婚相手の継母、そしてその連れ子。キスシリーズとは思えない設定です。
この境遇を抜きにして考えるならば主人公のダメさが際立つ。考えているふりで問題をいつも先送り。結局見かねたヒロインに喝を入れてもらう始末。でも、この家庭環境を思うとそういう思考回路に至るのも分からないでもないので、ダメな子と一刀両断するのは気がひける。それより誰かに救われてほしいって思う。
そんな主人公に対して、主人公から見て違う立ち位置にいるヒロイン4人が個別ルートでどのように関わり助け舟を出してあげるかというストーリーを楽しむ作品だと思った。
特に伊月と葵は本当に主人公のことをよく見ているなって思った。
葵の場合は特にお祭りのシーン。ここでの葵の言葉に主人公はそれなりに救われたんじゃないかなと。個別は盛り上がりに欠けたけど。
個別までしっかり捉えたのが伊月ルート。伊月はいい女って言葉がぴったりのヒロインだった。ちゃんと主張するところでは主張するし、引くべきところは引く。芯の強い女の子の要素と、それでいて普通の女の子としての側面もちゃんと描かれていた。個別終盤は逆に主人公が悩んでいる伊月を受け止めていて、一方通行なストーリーにならなかったのは良かったと思う。エピローグ、大会で勝った伊月のお願いがこれまで解消されずに残っていた問題=家族と一緒に向き合おうってのもさすがとしか言いようがない。この強さが伊月ですねぇ。圧倒的なヒロイン力だった。
ということで、伊月一強の作品だと思った。『ホチキス』から今作まで、キスシリーズは全部プレイしてきたが一番好きなキャラかもしれない。
EDはキスシリーズにはお馴染みの安田みずほさんで、凄くよかった。歌詞もなかなか素敵です。