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isumiさんの黒曜鏡の魔獣の長文感想

ユーザー
isumi
ゲーム
黒曜鏡の魔獣
ブランド
雨傘日傘事務所
得点
90
参照数
1467

一言コメント

燃え尽きました…。悪役を含めどのキャラも魅力的すぎるっ!!まさか悪役の方に肩入れすることになるとは。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ここでの評判の高さを見て購入。
雨傘日傘事務所さんの作品に触れるのは黒曜鏡が初めてだったのですが、正直まったく期待していませんでした。
燃えゲーそんなに好きじゃない、絵が好みでない…等々私の好みからはかなり離れていたこの作品。
なぜ購入したかと言うと他のゲームを買うついでに何となく、でした。
が…しかしですよ。このゲームめちゃくちゃ面白かったです。
パッケージ裏のストーリー紹介からはほのぼの抜きゲーのような印象を受けましたが、後半はうって変わって熱く燃え尽きるような展開のオンパレードで一気にクリアーしてしまいました。
ホントこんな購入動機ですいませんと作者様に土下座したくなるくらい素晴らしい作品です。


・シナリオ
主人公である召喚獣が召喚師に呼び出されたところから始まります。
主人公は闘技場でとある人物を殺すために召喚されたのですが、この目的は早いうちで達成(?)され以降は主人公と愉快な仲間たちの日常が中心になります。
特定のキャラにムカつきますが(ディアボロスとかディアボロスとかディアボロスとか)、魅力的なキャラクターが多いので日常シーンはとても楽しいです。
途中1か所えぐさ満載!なバトルシーンがありますが(バトルというか一方的な虐殺だよねアレ)、基本的にバトルは終盤に集中しています。
そして終盤でとあるキャラの目的や思惑が分かり、それまで見せられてきた「記憶」が現在と繋がることになります。
あのシーンは何なんだこれ??と疑問に思いながら読んでいたので、一気に繋がった時はとても爽快でした。
そして同時にとあるキャラの印象が180度変わりました。本当にかっこいいです。
ただ一つの物のために全てを犠牲にするなんていうのは実際にはなかなかできないからこそ、その強い意志に思わず感動してしまいました。
またギャグキャラにありがちなスキルが実は重要な意味を持っていたということにびっくり。
この使い方はうまいですね~。
バトルシーンはリィ・ルゥのアレはちょいやりすぎだった気もしますが、何だかんだ言っても燃えたので問題なし。
それまで敵味方に分かれていたキャラが協力して一つの敵に立ち向かうシチュが大好きな人間にとってこれはグッとくるものがあります。
それまで大嫌いだったキャラの印象がガラッと変わるのもたまりません。
燃えるセリフ、燃えるシチュが盛りだくさんで久しぶりに一気に読み進めてしまいました。
また、脇キャラが多いのに最後にはちゃんと主人公に見せ場があるのもよかったです。
ラスボスの彼との対決はどっちの思いも痛いほど伝わってきてとても複雑でした。犠牲もあったけれど、ハッピーEDで終わってくれて何より。
主人公たちも彼らも幸せになって欲しいものです。
そしてエピローグのオチには笑った。最後の最後まで彼らしいというか。

EDは2つあり序盤の選択肢で分岐しますが、ヒロインが変わる程度でそれほど大きな違いはありません。
ほぼ共通ルートのような構成なので仕方がなかったのかもしれませんが、もう少し差別化を図ってもよかったんじゃないかなと思いました。
今回もED後にヒロインそれぞれにアフターシナリオが追加されます。
個人的にアフターシナリオのアフターシナリオで彼らが登場したのがうれしかったです。
が、彼女ってばこんな性格だったのねと少しびっくり。いやはや、蛙の子は蛙とでも言いましょうか…元気そうでなにより。
ちなみに展開はほぼ同じなんですがアーベルED→リィ・ルゥEDの順で見ることをお勧めします。
そうすると主人公と彼女の因縁と何故エピローグであんなことをしたのかが(はっきりではないけれど)わかるので、すっきりすると思います。

・キャラ
めちゃくちゃ魅力的。特に主人公に魅力があったのが私的には高評価。
むやみやたらと熱いのではなく適度に冷静だけど熱いという設定がいいですね。
日常シーンでのリィ・ルゥとのやり取りも面白くって大好きです。
個人的にはリィ・ルゥの自慰の後処理をするシーンがお気に入り。
そこで襲わずに後処理をするだけってのはエロゲ主人公的にはダメかもしれませんが…。
ギャグもこなせてバトルも強くヘタレでもなし。非のつけようがありません。
…ま、エロシーンで豹変するのはご愛嬌と言う事で。
また、他の男キャラもいい味出しています。
カッコいい脇役が多いってのは個人的に高ポイント。
とあるキャラの最期は思わず涙が……漢の背中って本当に素敵。
それでは女の娘の方はと言うと、こちらも十分に魅力的でしたよ。
メインヒロインのアーベルとリィ・ルウは日常シーンでその魅力を余すことなく発揮しています。
リィ・ルゥはエルフ+メイドというおいしいキャラなのに色々残念な娘さんでした。もうちょっと恥じらいを持とうぜ。
アーベルはクーデレと見せかけてデレデレなのが可愛いですね~。
ところでアーベルもリィ・ルゥもそうですが、この作品の女の娘は「強い」人が多いです。
それは精神的な強さやそのままの意味での強さでもあるのですが、その強さには惚れ惚れしますね。
特にクリステルとリザリア。この2人の行動は特に強さが表れていたのではないかと思います。
それでは今回のお気に入りのキャラは上で散々べた褒めした主人公のエル…ではなくハクロとリンド・ドレイクで。
終盤になってからしか出番のないキャラなんですが、最期がとてもかっこよくて印象的。
またリンド・ドレイクは最期の一言に主従の絆が感じられてホロリときました。
次点は悪役の彼と最期の背中がカッコよかったあの人。その次がエルかな。
何だかエルのお気に入り度が大分低くなってしまいましたが、それだけ終盤で魅力的なキャラが沢山登場したということで。
ふとエロゲーでお気に入りキャラが魔物と男キャラばっかりなのはどうなんだろうと思いましたが、ヴィザルでも最萌えキャラが人外だったのでまぁいいか。

・エロシーン
毎度毎度のことなんですが、痛々しいというかもう何と言っていいか。
子宮が外に飛び出していたとか脱肛とかテキストにあった気がしますが、私の見間違いですよね?そうですよね?
膣はおろか、子宮まで飛び出したってそれ大変よ?
(ちなみに子宮脱は動物によっては分娩時などに起こるそうです。どうでもいい豆知識)
何だかこっちが痛くなります。
ちなみに今回は和姦が多め。
メインヒロイン2人のHはリィ・ルウは主人公との和姦H、アーベルは主人公とのラブラブハード調教H(矛盾してそうな書き方ですが間違ってはいません)で構成されています。
ただこの2人も和姦と言いつつ吐いたりいろんな液をまき散らしたりしてるので好みじゃないですねぇ。
特にアーベルは主人公が鬼畜なご主人様になるわ、アーベルは何だか大変なことになっているわで日常シーンとのギャップが凄かったです。
エロシーンは多めですがハードな割に単調なので実用性には乏しいと思います。
ここのエロシーンは何と言うかすっげぇ汚いです。貶しているわけではなく、汁とかいろんな液にまみれていますので。

・CG、立ち絵
普通のCGはCGモードに登録されないので正確な枚数は分かりませんが、値段の割にかなり多いです。
バトルシーンではCGが惜しげもなく沢山使われています。
しかも手抜きなし。
が、HCGはなんだかすごいことになってますね。
立ち絵はいいのにエロシーンになるとどうしてあんなにムッチムチになるのかなぁ。
男キャラやその他は問題なしなんですが。(少し正面の立ち絵とCGの横顔の差が気になるところですが、まぁ些細なことですね)
今回も目パチあり、立ち絵は豊富。
相変わらず立ち絵が動くので日常シーンも見ていて飽きません。


少し気になったのはシステム面でのこと。
セーブが使いにくく、セーブしたところから再会できないのが不満でした。
分岐があるのに既読スキップもなく、気づいたら見ていないシーンまで飛ばしてしまったなんてことも何回かありました。
ただ、これはこの作品のみに限った事ではないんですけどね。
毎回気になっているので改善してほしいなといつも思っています。
(ヴィザルではセーブは使いやすくなっていましたが既読は相変わらず…)



無茶苦茶な展開がたくさんありますが、しらけさせずに一気にプレイしてしまう魅力のある作品でした。
とにかく熱い!!熱すぎる!!!
そして脇キャラが魅力的すぎます。どのキャラにも見せ場があってみんな大好き!
絵で好みが分かれそうですが燃えゲー好きな人は是非プレイして見てください。
隠れた良作ですよ。

最後に
ここの作品に出会うきっかけとなったこのサイトに感謝を。
このサイトを利用して何年か経ちますが、こういう隠れた良作に出会えるのは嬉しいですね。

以下、ネタばれ感想




























終盤のカラスが最高でした。ギャグキャラだと思っていたら背負わされていたものはとても重いもので。
彼が気の遠くなるほど長い年月を色々な物を捨てながら、ただ娘のためだけに生きてきたのだと思うと終盤は彼に感情移入してしまいます。
最後は幸せそうで何より。…あの後修羅場になりそうですけど。
全ては一つの物のためだけにと言えばロードもそうですよね。
最愛の姉に忘れられてもなお姉を思い、そして黒曜鏡の魔獣を倒すためだけに生きる。
最期は少し切ない終わり方でしたが、それでも彼の本名をリィ・ルゥが呼んだことはささやかな救いなのでしょう。
たとえ彼女が彼を思い出せなくても。

それにしてもカラスとの決着が結局はガチンコだったのは苦笑してしまいました。散々召喚獣とかファンタジー出しておいて決着がそれかよと。
でも、こぶしで語り合うってのもなかなかいいですよね?
ねっ?
暑苦しい展開大好きなので、実はこのシーン結構好きだったり。

ネタばれになるので上では書きませんでしたが、他に好きなシーンはクリステルがディールの枷を外すシーン。
クリステルはそれまでエルに暴力を振るうのでそんなに好きではありませんでしたが、あのシーンでの彼女の強さにはグッときました。
ディアボロスもこのシーンで見直しました。
なのに隷妃双奏では……と、むこうの感想で散々書いたのでこれ以上はやめておきます。

ところで作中でははっきりとは明かされていないようでしたが、アーベルのエルに対する懐かしさは過去が関係していると見ていいのでしょうか。
それとリィ・ルウのエルに対する罪悪感は一体何だったのでしょうね。
ちょっとここら辺が説明不足だったかな。