暗くて救いようがなくて、奇跡なんて起きない。けれど、仕方がない。これが彼らの選んだ道なんだから。……そう思わないとやってらんない。(2009/02/18 チエについての記述を変更)
彼らは、天使などではない。
フリーゲーム サバイバル推理ADV プレイ時間2時間
ここの作品で唯一女の子が登場します。
主人公のチエと担任のトーノの視点を切り替えて、トーノの机をボロボロにした犯人を見つけていきます。
チエは委員長ですがそういった方向の萌えはありません。そもそも犯人探しの動機からして正義感からではなく、自分の言いつけ(トーノには手を出すな)を守らなかった奴に制裁を加えるですからね…
ほかのキャラも可愛らしく、しかも全員中学生ですが萌え要素は一切ありません。というかこんな中学生いたら嫌だ。
場所移動式ADVでトーノとチエの視点を切り替えて進みますが、これが結構難しい。サバイバル推理ADV と銘打ってあるように、少しでも間違ったところに移動するとバッドエンド(トーノ死亡)に直行する可能性があります。
ヒントはほとんどありません。(その場面をどっちの視点で進めればよいかというヒントはあるらしいです。視点選択画面でジッポの音がすればトーノ、ルービックキューブのカチッという音ならチエで進めるところといった風に。まぁ分かりにくいですがね。) なのでどうしても自力でクリアーしたい人以外は攻略サイトを頼った方がいいかも。ただトーノ薬漬けエンドは見た方がいいです。とある人物の心の闇が浮き彫りになっています。こういうのをヤンデレっていうのでしょうか。まぁデレはないですがね。
えっとこのゲームまともな人が存在しません。
担任のトーノを含め皆どこか家庭に問題を抱えています。前のクラス担任を精神的に追い込んだという実績がありますし、一見まともに見えるスグルですら後半に行くにつれてまともではないと分かります。
ゲームを進めるうちにそれぞれの家庭の事情がわかってきます。結構重いです。育児放棄とか、娘に性的欲求を抱いていたりとか。
読み進めるのは気が重くなりますが、登場人物の意外な側面が見えて結構良かったです。(たとえばジローは最初ただのDQN、DV男だと思っていましたがDVの理由を知って少し切なくなりました)
推理よりもそれぞれの家庭の事情がメインなので、推理に期待すると肩透かしを食らうかもしれません。一応犯人はわかりますが、家庭の問題の方は解決しないのでクリアーしてもなんとなくモヤモヤした気になります。
あるキャラは解決しますがね。最悪な方法で。
チエについては一番狂ってると今まで思っていました。どう見ても異常な父親になぜそこまで従うのかと。
ただ、これって子供にとっては当たり前なことなのかもしれません。
どんなに傍から見て駄目な親でも、子供にとっては親ですから…
他のキャラの事情はあまりにも私の周りの環境からかけ離れているので、トーノくらいしかピンときませんでした。
こういう人実際にいそうですね。
追記
トゥルーEDについて。
おそらく一番のバッドEDはトゥルーEDです。
しかし考えようによっては一番現実的なEDなのではないかと思います。
追い詰められ壊された無力な子どもが、精一杯のことをした結果があれだったのではないでしょうか。
最後に何も解決しないのも、ある意味現実的。
ヒーローが颯爽と現れて助けてくれることなんてありえない。大人は信用できない。だからこのまま(壊れたままで)生きていく。
プレイ直後は「救われねー」と鬱になりましたが、プレイ後に考えるとこれが妥当な結末なのかも。
それにしてもプレイしてからだいぶ経ちますが、この感想が一番修正している気がします。
暇な時にこのゲームのことを考えると、つい書き直したくなってしまうんですよねぇ。
(2008/11/26)再プレイにつき得点修正 80→85
以下、ネタバレ感想
登場人物は皆、アダルトチルドレンです。(タイトルからして「オトナ/コドモ」を繋げて訳すとアダルトチルドレンになりますから)で、それぞれの苗字ないしは名前にACの役割が隠されています。()はACの役割、2番目の漢字が正式な漢字、3番目は私が勝手に解釈し変換したものです。
カリチカ(イネイブラー)→雁親→仮親
ドウケ(ピエロ)→道家→道化
ナグサメ(プラケーター)→名草女→慰め
ヒトカタ(プリンス)→一方→人形
ニエ(スケープゴート)→丹江→贄
カツミ(ロンリ―)→克己→一己
イチナシ(ロストワン)→市梨→?
オシベ(リトルナース)→忍部→?
ショウジョウ(ヒーロー)→笑上→?
イチナシ以下は分かりませんでした。なんとなくイチナシ→位置無、ショウジョウ→勝常かなー?と思います。役割的に考えて。オシベは何だろ?
この話、結局はエピローグのオカベの言葉がすべてだったのでしょうか?
彼と彼らは別の生き物だったから?
だけど彼らが化け物になった原因は間違いなく大人にあると思います。
彼らは「大人によって壊された」子供であると、私はそう思います。
オカベを壊したのも、ある意味では彼らの自衛行為ではなかったのではないでしょうか。
これ以上自分たちが壊されないための。
色々書きましたが、私は彼らの行為を肯定しているわけではありません。
彼らのやったことが正義とは思いません。
そこらへんのことは続編(コドモの時間は、終わりですよ)が公開された時に、答えが出せたらいいなと思います。
…本当に公開されるのかは分かりませんが、是非作って欲しいなぁ。
余談ですが続編のタイトルって子どもだからと許される時間は、終わりですよって意味なのでしょうかね。
(追記)
最初私はトーノが彼らを救う話だと思っていました。
しかしトーノは唯一の大人のくせに何もしません。
もう一人の主人公というポジションに居ながら、彼はEDに全く絡みません。
それはトーノの面倒なことに首を突っ込みたくはない、というスタンスのせいでもあるのでしょう。
でも一方では彼もまたコドモだったのかもしれません。
そう考えれば納得できる部分もあります。
だって、コドモが子供を救うなんて無理な話ですから。