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irohameguriさんの紅殻町博物誌の長文感想

ユーザー
irohameguri
ゲーム
紅殻町博物誌
ブランド
raiL-soft
得点
94
参照数
304

一言コメント

ここまで人を選ぶ作品もなかなかない

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

この作品の特徴は、何を於いてもまずその特徴的すぎる文章。
結構な割合の人が、序盤で投げたくなるんじゃないだろうか。いきなり実在した翻訳家の話やら、マイナー(?)な小説家とか語られてもわけがわからんとしかならないだろうし。
(自分は稲垣足穂は知っていたが、川島忠之助は全く知らなかった)

エロゲによくありがちな文章どころか、一般的な小説でもなかなかここまで堅苦しい文章はない。あまり本筋に関係ない雑学なんかも時々挟んでくるし、テンポは悪い。
それになんでもかんでも文章で描写するから、絵でも表現があるエロゲという媒体とあまり合致していないようにも感じる。

だから、合わない人にはとことん合わないけど、それらがいいという(おそらく)少数派の人間には非常に刺さる文章、雰囲気の作品になっていると思う。
それでもダメな部分はあるのだけど、それが気にならないくらいこの雰囲気に没頭できる本作は、非常に希少だと思う。

自分もこの作品の主人公同様、懐古主義の一面があるので非常に共感できるテーマではあったし、音楽や背景でもそれらは楽しめた。

自分はこの作品が大好きだ、という前提でもマイナスと感じたのは、個別√の物足りなさか。
作品自体もそんなに長くないが、テキスト量の割に異常に読むのに時間のかかる文章だからあまり物足りなさはない。むしろこの文章で長いとそれはそれできつかっただろうし。
ただ個別はほぼほぼ同じ展開で、エンディングがそれぞれのヒロイン毎に代わるだけ。
せっかくの珍奇物品も前半だけであまり後半は目立ってないし、ヒロイン毎にもう少し展開が変わればよかったのになと。そうしてエロシーンも、√分岐後にやった方が絶対よかった。

ちなみにお気に入りのヒロインは圧倒的に松実さん。
エロシーンは官能小説を読んでるようで(読んだことないけど)よかったです。