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hutida999さんのサフィズムの舷窓 ~an epic~の長文感想

ユーザー
hutida999
ゲーム
サフィズムの舷窓 ~an epic~
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
80
参照数
567

一言コメント

純粋に面白かった

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

プレイ自体はかなり昔だけれど、プレイ後のメモが見つかったため感想を書かせていただきます。
以下、もろにネタバレとなるため未プレイの方は回避してください。

以下、本編後のミニシナリオの感想を載せます。雑感という感じの書き方のため読みにくい部分もあるかと思います。ご了承ください。



【ひと夏の蜃気楼】
ちび杏里が可愛すぎ。

【凪の森】
 宝の地図の言うとおり、ホントに宝があるなんて信じる奴がどこにいる? ここさ、アルマは信じてる。そして、皆と一緒に何かをしたいと本気で思ってる。だから彼女は旅に出た。節度を持って小さな冒険の旅に出た。行き先は一枚の地図にある。それが何を意味するかも分からない。でもきっとどこかに、何かがある。
 たった一カットの絵に感動する。純粋なアルマを通して純粋な『誰か』を見ているのだ。

【wish】
 たった一人のために皆が駆けずり回って努力するシナリオがどうしようもなく愛しい。反論する気をなくさせるまっすぐな杏里の言葉が小気味いい。ついでに付き合ってあげてるワン公が可愛い。

【いつまでもいっしょ】
 「あんり」が可愛すぎてにやにやが止まらない。どうしてこういう最高に面白くて馬鹿なシナリオを考えられるのだろう。ため息が出る。

【ドレスアップ】
 自分を良く見せようと思わないものぐさなニコルが杏里を見返そうとする物語。一生払いきれないニコル通貨を杏里は持っているのなら、今後またニコルにおめかしをお願いすることだってあるかも。おめかししたニコルと杏里で地下賭場場にてギャンブルし、「こんな格好だから負けたんだ!」と憤るニコルとか見てみたい。

【組曲『花』】
 ピアノの演奏してたのに本番バイオリンで演奏したニキに萌え。ピアノも演奏したに違いないと勝手に脳内補完。演奏後、拍手喝采の中、杏里が「ブラボー」と言わないほど感銘を受けたとしたら、ニキはまた胸がきゅんと締めつけられただろう。杏里から言葉を奪うほどの演奏、聴いてみたい。

【ラズベリー水】
 サフィズムの舷窓で壊れまくったキャラのアンシャー・リーのもう一つの姿を描いた小編。語られなかった物語の一つが奇跡的にここにあるように感じるのは、普段の彼女があまりにもありえない言動だからか。普段と違うアン・シャーリーを他人が気づいたのは初めてで、それまで本当の彼女は思うようにならない自分に慟哭してきただろうか。それさえ忘れてしまっただろうか。杏里とまた会える時は来るのか。今後、物語でアン・シャーリーのもう一つの姿が再び登場することは二度とないかもしれない(二次創作する人がいないという意味も含めて)。けれどもし誰かが彼女のその姿を覚えていたら、その可能性は消えはしない。
 存在自体が奇跡で、キュートなアンが大好き。

【恋文】
 クローエを慕う一人の生徒をトリガーにクローエが何を大切にしているか、なぜ杏里を好きなのかを丁寧に描いている。気持ちをこうも揺さぶる杏里という存在はクローエにとってとても特別で、かけがえのないもの。口から先に生まれてきたような杏里に気づかされる自分の愚かさと他人へのいたわりの気持ち。

【メイドの花道】
 忙殺されるイライザの日常のある一瞬を切り取ったエピソード。昔日を思い返しながらも、かつてのクラスメートは今も変わらず傍にいることを噛み締めるイライザ。イライザが倒れた後、涙を流してイライザから離れようとしないニキに愛おしさを感じる。「頑張れ!ニコル!」で登場したイゾルデとルネの関係がこのようになる日は来るのかと思わずにはいられない。
 ラストのオチも小気味いい。イライザがもっとも大切な人に伝えたいのは、自分は今幸せで、杏里に傍にいてほしいということ。メイド仲間との関係や話が伝わる経路で笑わせつつも最後をきっちり締めるライターの力量が凄まじい。音声が流れていないことさえ忘れてしまうほどに各キャラクターには意思があって、それぞれの思いで今を生きている。

【天京院鼎の事件簿】
 コーヒーは俺も好き、というどうでもいいコメントを入れたくなるくらいコーヒー豆知識小品。

【瓶の中の乙女達】
 ソフィア教授がポーラースター号の歴史を語るところから物語が始まり、ポーラースター号の歴史に思いを馳せて終わる展開に感心せざるをえない。「幸せになるべき乙女達のために」。口にするのは簡単な言葉を実行に移し海賊となったものたち。4代目ポーラースターの生徒達と同様に、初代ポーラースターを作ったものたちにも人生がある。身ごもった二人は、相手を愛し合っていたのではないのか。身ごもるということは別の男性と交わったということ。意に沿わぬ出来事があったのではないか。それでもなお、幸せになるべき乙女達のために自らの財産を使うと決めた意志がポーラースターの精神に受け継がれているのだろう。おまけシナリオの目次であるそれぞれのキャラクターのイラストが良い味を出している。彼女らが主役だ。誰がどう言おうと。ヨーホー。

【頑張れ!ニコル!】
 an epic中最大のおまけシナリオで、ニコルの過去と現在が描かれる。大の親友であったイゾルデとの仲違いを解消できなかったのか。読み終えて、もどかしさが残った。

【めぐる季節】
 一年生視点で杏里ら上級生と出会う、an epic最後のシナリオ。子猫ちゃんたちがいつから杏里を好きになるのか、このエピソードを見ると分かる気がする。最初からなのだ。
 誰かを好きになる彼女たち、自分に正直である彼女たちが愛しい。


 以上、ほぼべた褒めな感想でしたが、今やってもきっと各キャラクターが愛しくてニヤニヤしてしまうことと思います。総じて満足度が高い作品でしたし、音声がan epic追加分はなかったとしても気にならないくらいに嵌りました。
 蓬莱学園というPBMをしたことはありませんが、きっとこの作品のように不条理だったりどうしようもなくしょうもないギャグをする参加者がいたりけーこちゃん的キャラがいたりするのだろうなと、高校生の時の心境(なんか良く分かんないけどスゲー)を感じさせてくれたんだと思います。
 クリエイターに敬意を表して。