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hotaru82018さんの1/1彼氏彼女の長文感想

ユーザー
hotaru82018
ゲーム
1/1彼氏彼女
ブランド
SMEE
得点
86
参照数
567

一言コメント

メイラバのマイナーチェンジ版といった印象 コンセプトをきちんと活かせているキャラデザで敬遠するのはもったいない良作

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

メイラバ・ハレキンからキャラデザが大きくかわり不安があったので発売当日に買わなかったのだが、買っておけばよかったと思える良作だった。「人生に恋のチャンスは3度ある」というコンセプトをきちんと活かせていたのもポイントが高い。以下攻略順に感想と最後に総括を。

えいみルート 84点
 開始30秒で「あ、これいつものSMEEだわ」と分かるむせかえるほどのSMEE臭でスタートしたルート。高嶺の花の同級生との恋愛。その高嶺の花のヒロインは付き合ってみると等身大の女の子だったというもの。鉄板であるがやはりいいものだった。えいみの弱さをきちんと受け止める主人公に好感が持てた。お弁当を最初に作ったときにうまくいかなかったが、ルート内でうまくなるというのも好みの展開でよかった。あまりにバカップルすぎて羞恥心をおぼえる描写も少なくなかったが、作品全体のことを考えると、ここでバカをやっていた主人公がきちんと他のルートでは大人の男性になっているというのはコンセプトを活かせていて良いと思う。またこのルートはえいみとのメッセージアプリでのやりとりが軽妙で面白かったところも高評価だ。安定した面白さがあるルート。

千津ルート 90点
 家庭教師と生徒の恋愛ということでどういう流れにするのかと思っていたが、その点の葛藤はきちんと描きつつも重くなりすぎていないいいルートだった。この作品は主人公が年齢を重ねていきそのタイミングごとにヒロインと出会っていくコンセプトなのだが、えいみルートではやんちゃでバカをやっている学生だった主人公がきちんとした社会人の大人の男になっていたので、コンセプトがきちんと活かせているルートだったと思う。特によかったのは千津が学校で男子から罰ゲームで告白された際に、きちんとその男子生徒の気持ちも考えた発言をしたことだ。この流れは主人公の魅力が伝わってきてとてもよかったと思う。さすがに新卒一年目にしてはきちんとしすぎているところはなくはないと思ったが、まあそこはいいだろう。母親に認められる流れにしても、適度な緊張感はあったがキャラゲーとして楽しむノイズにならない程度にうまく描かれていてよかった。このルートはギャグもかなり面白く、特に主人公の自宅でキャバクラごっこをする流れは爆笑してしまった。千津も控えめでおとなしいが頑固なところもある魅力的なヒロインとして描かれていた。「告白する前に振られたくなかった」という告白のくだりも非常に胸を打った。散漫な文章になってしまったが、個人的に千津のようなおとなしい系ヒロインが好きなことや主人公とシナリオとギャグがよかったこともあり、かなり満足度の高いルートだった。

コレットルート 86点
 自称クソ女ルート、なのだが全然クソ女ではなく面倒臭いところもあるがいい女だった。なんというかSMEE主人公の誰にも物怖じせずしない態度と非常に相性のいいヒロインだと感じた。このルートでは仕事と恋というものがテーマとして据えられていたと思うが、それが終盤きちんとまとめられていたと思う。特にコレットが両親のような関係に憧れていて寂しさを感じており、主人公との関係でそれを得るという締めかたはよかった。ギャグもシナリオも安定して面白い、いいルートだった。

多恵子ルート 85点
 30歳のヒロインはキャラゲーの年上ヒロインの中でもかなり年上のほうではないだろうか? かつ年上のしっかりしたお姉さんというよりはかわいい感じのヒロインで新鮮味があった。このルートは主人公の積極性がすごいところに人によっては好みが分かれそうだが、結局ここまで3回のモテ期を棒に振ってきた主人公がチャンスを掴むためにはこのくらいの積極性は必要だと思うので個人的に好印象だった。「他のルートを見たら分かるこんだけ魅力的な男でも能動的に行動しなければ恋愛なんてできないんだぞ?」という風にも捉えられてリアリティーがあったと思う。実際多恵子の言うように「ここまで積極的にアプローチされれば落ちない女はいない」というのはその通りだと思ったのでよくできているシナリオだと感じた。多恵子の男子に対する偏見も面白く、楽しめたルートだった。

その他
 これはHOOKSOFTとSMEEの作品をするたびに言っているのだが、このUIはセーブとロードが誤操作しやすすぎるのでいい加減どうにかしてほしいところ。キャラデザに関しては目と眉が好みじゃなくなってはいるものの、人体のデッサンに関してはメイラバやハレキンのときより良くなっていると感じた。vtuberといういまホットな属性をヒロインではなく主人公のお婆ちゃんに付与するSMEEの頭のネジが飛んでいるところは嫌いじゃない。

総括
 どのルートもキャラゲーとして安定して面白く、楽しくプレイできる作品だった。smee作品の中でもメイラバに次ぐくらい個人的には好みの作品だった。キャラデザがさすがにこの方向だと売上につながらないとは思うので、メイラバの方向性に戻してほしくはある。とはいえプレイしはじめたら30分もしたら慣れたので個人的にはいいかなとも思った。コンセプトをきちんと活かせており、ギャグと恋愛描写のどちらもよく、主人公とヒロインの両方が魅力的な良作だった。次回作にも期待をしたい。