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himmel00さんの星彩のレゾナンスの長文感想

ユーザー
himmel00
ゲーム
星彩のレゾナンス
ブランド
Yatagarasu(八咫鴉)
得点
70
参照数
6643

一言コメント

由布・恵ルートは展開が酷すぎる…が、奈岐ルートは神!百合好きは買って損はない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

恵ルート以外はなるべくネタバレしないように書いてます。

体験版の最後にあった巫女に関する選択肢で各々の個別ルートに入るかと思いきや、選択肢の結果で由布側と奈岐側に分かれ、その後の選択肢で個々に分岐する仕様のようだ。由布側のルートでは多少の共通ルート後に由布、真琴、恵、緑子が攻略できる。由布側は体験版のシナリオとライターが違うみたいで、誤字や支離滅裂な文章が多く見受けられ全体的にできはあまりよくない。一方、奈岐側のルートはハ弥子・奈岐・未来が攻略できる。文章は非常に丁寧に書かれており、巫女同士の絆というのも深く感じられ、攻略キャラクターに愛着が持てる。日常パートも面白く、物語の秘密が徐々に明らかになっていく過程のうまさを考えると、由布側のルートとキャラ設定等の矛盾がある点以外はかなり良い出来である。由布側のルートとは全くの別物。はっきりいって、こちら側のライターが全ルートを担当すればかなりの良作に化けていたであろう。非常にもったいない作品。

・推奨攻略順 恵・由布・縁子<真琴< ハ弥子<奈岐BAD<未来<奈岐TRUE
由布・恵ルートは攻略する価値もないので、スルー推奨。但し、全ヒロインを攻略しないと未来ルートに入れないので注意。

ちなみに体験版のシナリオより後は主人公だけパートボイス。
以下に個別ルート毎に評価する。



・由布ルート
展開の進め方が下手で、後半は話がどんどん進められていき、プレイヤーを置いていったままあっさりとエピローグに入ってしまうので、これで終わりなのかと呆然としてしまうほど酷い展開だった。また、百合の醍醐味は両思いになるまでの話だと個人的に思うのだが、場の雰囲気に流されて濡れ場に入ってしまい、その流れで何と無く付き合いだしたのにはガッカリした。また、由布は主人公とエッチしておきながら先輩にも未練があるようで、遠山先輩か主人公かどちらが好きかをはっきりと選ぶと言ってくるのだが、由布ルートではその話は結局回収されないままいつの間にか主人公と付き合いだすので違和感があった。全体的に心理描写が不足していて文章が薄っぺらく、何故この人はこういう行動を取ってしまったのかという理由にいまいち説得力がなくて腑に落ちない部分も多々ある。心理描写不足で百合場面も盛り上がらないしとにかく全てが薄っぺらい。巫女同士の絆が重要だとか言っておきながら、主人公との間に愛を感じられないのは正直どうかと思う。


・恵ルート
由布ルートのバッドエンド的位置付け。殆ど由布ルートと共通しているので個別はかなり短い。主人公と由布がイチャついてたら、後半になっていきなり由布が先輩に寝取られて傷心の主人公が恵と付き合うという超展開。上記に記載した、由布が遠山先輩か主人公かどちらかを選ぶという話がこのようなかたちで回収されるとは思わなかった。百合に寝取られなんて誰得なんだと言いたい。由布が主人公と関係を持つ前に普通に恵ルートに分岐すれば良かったのに、何故このようなかたちにしたのか意味不明。また、由布が葛藤する心理描写も何もないままあっさりと寝取られるので、単なるビッチにみえて仕方が無い。寝取られた後も由布は主人公に対して何ら謝罪もせずに、あからさまに主人公を避けて目の前で先輩とイチャつきだす始末。ヒロインがプレイヤーに嫌われるようにするのは製作者として避けるべきであろうにこのライターは何をしたかったんだろう。恵との関係も由布にフられたもの同士の単なる傷の舐め合いで、話も短すぎるのでちゃんとした個別ルートとは言えない。


・縁子ルート
おまけルートなのでかなり短め。相変わらず心理描写はなく、なんとなくエッチしてなんとなく両思いになる。ただ、デレた縁子は結構可愛い。


・真琴ルート
奈岐側と比較すると劣るが、由布側で唯一まともなルート。素晴らしいツンデレ百合。個別に入って急にデレだしたのは当初のツンドラな対応を考えるとかなりの違和感があったが、その点以外は由布・恵ルートとは違って心理描写も多少丁寧に書かれており、普通に読めるレベルの文章になっている。途中で何度か真琴に視点が変わるので、彼女の心理的葛藤も分かるようになっていて、それもあってか主人公と真琴の間に愛情が感じられた。百合分もまぁまぁ多め。が、他の由布側のルートにも言えるが、告白して付き合う前になんとなく雰囲気に流されてエッチする展開は何とかして欲しかった。


・ハ弥子ルート
終始話しの進め方が丁寧で、百合度もかなり高い。理事長と中村さんの設定が由布側のルートと矛盾している点以外は何も言うことはない。ハ弥子良いこすぎる。奈岐についで幸せにしてあげたいキャラ。


・奈岐ルート
奈岐ルートで島の秘密が全て明らかになる。奈岐はこのゲームのメインヒロイン待遇。他のルートと比べて話も長めで、彼女との信頼関係の構築過程が丁寧に書かれている。百合的にも文句なしで全ルート中で一番百合度が高く存分に堪能できた。奈岐の可愛さは異常。また、この奈岐ルートは数ある百合ゲームのなかでも一、二を争うほど素晴らしい百合であると言っても過言ではない。私見だが、単に女の子同士がイチャイチャしているのは本当に良い百合であるとは言えない。百合で一番重要なのは精神的結びつきであり、お互いを思いやり慈しみ合う姿が素晴らしいのだと思う。その点、奈岐ルートは安易に主人公と奈岐が付き合ったりはせず、二人が少しずつ仲良くなって信頼し合うようになる過程が非常に丁寧に書かれているため強い絆というものが充分に感じられ、二人のエンディング(TRUE)を見た時はずっと見守ってきた者としてとても感慨深いものがあった。この奈岐ルートだけでも百合好きには是非プレイしてもらいたい。
但し、一周目は強制でBADエンドになり精神的ダメージを被るので注意。必ずTRUEエンドを見て最後まで二人を見届けて欲しい。


・未来ルート
本格的に書くと膨大なシナリオ量になる、または、矛盾なく新たな解決策を呈示できなかったからかしらないが大事な部分を端折りすぎて尺が短い。全エンドを見ないとルートに入れないし、裏ヒロイン的位置付けかと期待してたが単なるおまけ程度の話だった。俺たちの戦いはこれからだという風に未解決のまま丸投げしたのにはビックリ。個人的には未来さんが一番好きだったのでかなり残念。頑張ってファンディスク等で補完して欲しい。


【 総評 】
2人ライターの場合、片方がハズレでもう片方がアタリだというのはエロゲ界のジンクスか何かなのだろうか。この作品も例に漏れず由布側は目も当てられないほど酷い文章だが、奈岐側は未来ルートに不満はあるもののハ弥子・奈岐ルートは文句なしに良い出来であった。ただ、全体を通して恵、由布、真琴の待遇が悪いのは印象が良くなかった。恵は数あわせのためだけに存在する空気で、由布は由布ルート以外では先輩のために主人公に攻撃してくることもある薄情者、真琴は真琴ルート以外では家の犬として主人公を攻撃してくる悪者に見えてしまう。この三人は不遇すぎて可哀想だった。特に由布と恵は個別ルートも出来が悪いし、最初から攻略人数を減らすなりアクションパートをなくしてシナリオに予算と力を注げば良かったのに非常に残念。まぁ今回は片方のライターが足を引っ張りすぎて良作になり損ねたが、ハ弥子ルートはかなり良かったし、奈岐ルートに関しては神レベル、八咫烏さんがまた百合作品に挑戦してくれると嬉しい。個人的には奈岐と未来さんの後日談を含んだファンディスクを次回作にお願いしたい。