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henahenaさんのてとてトライオン!の長文感想

ユーザー
henahena
ゲーム
てとてトライオン!
ブランド
PULLTOP
得点
85
参照数
2158

一言コメント

学園モノなんですから、日常シーンに力を入れないでどこに力を入れるんですか。

長文感想

この作品の一番の魅力はなんといっても、層の厚いサブキャラたちでしょう。
彼らと主人公・ヒロインがうまく絡み合うことで、主人公とヒロインだけの狭い関係ではなく学園モノの持つ独特の賑やかさを演出できています。
特に『あの』ラストシーンはそれが一番うまく生きている部分じゃないでしょうか。
「あぁ、このノリが獅子ヶ崎学園だ」みたいな感じで。

ただ、残念なことにそこに至るまでの日常部分に最低限のシーンしか与えていないせいで、すんなりと「終わりよければ~」という思いになれないのも事実です。
例えば学園祭のシーンでは夏海ルート以外は「学園祭があったね」程度の描写しかされていませんし、他のシーンでも盛り上がってきたかなと感じたところで暗転し場面転換。
お祭り騒ぎをしているのはテキストや演出で理解できるのですが、ユーザーが一緒になってそのノリを楽しむ前に場面が終わってしまっていて、頭では納得できているものの感情の方がなかなかついていけません。

キャラのノリや性格・変にシリアスにせず爽やかな展開で通した雰囲気が良かっただけに、何故それをもっと生かそうとしなかったのか。
この作品の魅力であり力を入れていれば確実に今以上に面白くなった日常シーンの描写不足、ひいては作品自体のボリューム不足がこの作品を普通の良作程度の評価に落としてしまったと考えると何とも悲しいものがあります。
PRINCESS WALTZから2年以上もかけてこれだけしか作品中に詰めることができなかったという事実は次作以降に若干の不安を残しました。