宗教画のような作品だと解釈すればむしろ救いはあります。Innocent Greyの作品の中で一番「綺麗な」シナリオ。
結末からすれば一見誰も救われていないように見えます。
しかし「殻ノ少女」こと美砂が生み出したパラノイアの再生は「瑠璃の鳥」となった冬子によって断ち切られています。
主人公も過去と区切りを付けることができ、パラノイアに取り付かれて犯罪を犯した人も「その病」から開放されています。
また、冬子が単為生殖で生まれたとされる描写と四肢を失って近い将来死を免れない体になった状態はキリストの降誕と死をモチーフとし、冬子という存在の神性を示唆させるものなのでしょう。
少なくともこの作品は、明確なテーマに沿ってシナリオが書かれ、理屈で納得させるだけの構成力は持っていると思います。
あとは好き嫌いの感情で認められるかどうか。
穿った見方をすれば、誰かと恋仲になることや奇跡を乱発させることがヒロインや関係者を救う解決手段として用いられている諸々のエロゲーに対するアンチテーゼとも取れるけど、そこまで考えてしまうと妄想の領域になるかなぁ。