このゲームの肝はメインヒロイン茉莉亜のヤンデレっぷりではなく、サブヒロイン美玖の哀れさだと思います。
エロCGの質は問題なく、ヤンデレという趣旨に合った、主人公が受け身なHシチュエーションが数多く取り揃えてあり、2000円弱という値段では十分なものです。
しかしシナリオ面を見ると、ヤンデレゲーとしては物足りないと思いました。
ヒロインの異常性を示す突然の奇行はこの手のゲームの定番ですが、いささか理不尽すぎるように思います。
押しかけ女房気質のメインヒロイン茉莉亜を彼女に持つ主人公厚志が、クラスメイトの美玖から放課後体育館裏に来て欲しいという手紙をもらうのですが、いざ厚志が行ってみると美玖の姿はなく、代わりに現れた茉莉亜に気絶させられ、気が付くと体育倉庫で逆レイプされます。
それだけならば押しの強いタイプのヤンデレと片付けることもできますが、犯されている厚志を写した写真が校内にバラ撒く行為までは許容が難しいところです。その写真を見た美玖は言葉を失い、厚志を見かけてもほとなく立ち去ります。
これがなんと厚志を犯した張本人である茉莉亜の仕業なのです。茉莉亜は美玖の手紙の存在を知っていて、厚志の痴態を目にした美玖がどう反応するかを見たかった、という目的での行動。あのくらいの写真で拒絶するようなメス豚にはあっくんに近づく資格はないの、だそうです。写真は合成ということで厚志はお咎め無しになったようですが、彼の校内での評価は地に堕ちました。一方茉莉亜の気はそれだけでは収まらなかったらしく、美玖が援助交際をしているという風説を教師に流すという暴挙に出ます。念のため確認しますが、美玖は厚志に手紙を送っただけです。単に美玖を排除するだけなら他に方法がありますし、頭脳明晰な生徒会長であるところの茉莉亜がそれに気づかないはずはないと思います。
これだけの理不尽さを押し付けるからにはその対価としてのデレが高くつきますが、それも不十分です。
両親の離婚騒動で厚志の家に同居することとなった茉莉亜。それでもめげない美玖のお弁当を食べた厚志に、排泄の目的で下剤を、美玖から遠ざけるために学校を休ませる理由で毒を盛った夕食をふるまいます。翌日学校を休んだ厚志はベッドに手足を縛られ、具合の悪さなどお構い無く当たり前のように逆レイプされます。その他にもフィギュアコレクション破壊など大小自分本位な行動の目立つ茉莉亜と共に最後までこの調子で続くストーリーから、厚志への愛を感じることはできませんでした。
むしろこのゲームの良心はサブヒロインの美玖です。前述の通りの名誉毀損を受けても真っ向から厚志のためを想い、「資格ならある、厚志のことが好きだから!」と茉莉亜と戦う姿にむしろ感銘を受けました。ヤンデレキャラ目当てでこの作品を購入したはずが、意外にもその泥棒(冤罪)猫を気に入るとはわからないものです。結果的に改めて厚志に告白して玉砕し、エロシーンもなく退場するという扱いが非常に残念です。ロープライスという事情で手が回らなかったのでしょうが、ちょっと名残惜しいですね。茉莉亜さんが風評被害を晴らしてくれたのかは、その後触れられません。かわいそうだとおもいました。