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haremloveさんの逆転裁判5の長文感想

ユーザー
haremlove
ゲーム
逆転裁判5
ブランド
CAPCOM
得点
90

一言コメント

3D化とムービー演出によって大幅にグレードアップした第2章第2弾、見抜け矛盾!暴け真相!心を読み解き、難事件に挑め!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

○雑感

NDSから3DSへと本格移行した初の逆転裁判。
(1~3の成歩堂セレクションと4の3DS版はグラフィックをアップデートした移植版。)
それに伴って演出面、グラフィック面はこれまでの作品から大幅にグレードアップしており、
レイトン教授VS逆転裁判で培われたアニメパートによるムービーシーンに3D化したキャラクターや背景のグラフィックなど、
ドット絵を主体としてきたこれまでのGBA,NDSで展開した作品とは一線を画しています。

基本的なシステムはこれまでの作品と変わりませんが、
「サイコ・ロック」や「みぬく」と言ったこれまでの作品に搭載されてきたギミックの続投に加えて、
今回は新たに新弁護士の心音が得意とする心理分析によって相手の心の機微を読み、そこに潜む感情の矛盾から真相を暴く「ココロスコープ」や、
これまでに明らかになった真実を振り返る事で真相に辿り着く「カンガエルート」などの新要素も盛り込まれています。
(ちなみに「みぬく」は逆転裁判4の様な法廷での使用が封じられており、本作では基本的に探偵パートで使われます。)

シナリオ面においてはよくよく考えるとトリックの粗や警察による現場捜査の不備といった突っ込み所はあるものの、
その点はキャラクターの面白さや華麗な逆転のカタルシスでもって真犯人をぶちのめす爽快さでカバーされており、
少なくとも逆転裁判4のような「明らかにおかし過ぎる」レベルの設定や描写の面における杜撰さは、
個人的な印象として本作からは感じられませんでした。


○今回のストーリー

・第1話「逆転のカウントダウン」

ある日、裁判所の法廷で証拠品の爆弾が爆発し、その現場から1人の女性刑事が遺体で発見される事件が起きてしまう。
それから間もなくして、新米弁護士である希月 心音はその事件の被告人の弁護士として法廷に立とうとしていた。
しかし、一緒に法廷に立つ筈だった王泥喜は、件の法廷爆破事件で負った怪我が原因で裁判に参加できなくなってしまう。
心音は裁判の被告人になってしまった幼馴染を救うべく孤軍奮闘するものの、
亜内検事の陰湿なイビリもあって過去のトラウマが蘇り、窮地に立たされてしまう。
そんな彼女を救ったのは法曹界に帰ってきた正義の弁護士、成歩堂 龍一であった。

心音に代わって弁護の矢面に立った成歩堂は、得意の心理分析でサポートに回る心音と共に、
法廷爆破事件の真相を暴いていく。

毎度恒例の法廷パートのみで進行するチュートリアルステージだが、
アニメパートによる演出やココロスコープのギミックなど、新要素がふんだんに盛り込まれている。


・第2話「逆転の百鬼夜行」

「法廷爆破事件」から遡ること半年前、王泥喜はみぬきと一緒に妖怪ブームに沸くとある村へ行くのだが、
そこで王泥喜はその村の村長が何者かに殺される事件と遭遇してしまう。

王泥喜は容疑者として捕まった強面の市長の弁護を務める事になり、
来日するなり事件の事を聞いて現場にやって来た心音と共に調査を進めるが、
事件の現場や目撃証言にはこの村に伝わる悪しき妖怪の存在が絡んでおり、
更に相手となる検事は現在の法曹界の歪みを象徴すると言われる囚人検事の夕神である事から、
王泥喜と心音は心理操作に長ける夕神に苦戦しつつ、魑魅魍魎が渦巻くこの不可思議な謎を暴いていく。


・第3話「逆転学園」

「法廷爆破事件」から遡る事2ヶ月ほど前、心音は成歩堂や王泥喜と共に私立テミス法律学園の学園祭に来たのだが、
そこで彼女達は学園の女教師が何者かに殺されていた事件と遭遇し、
心音は再会した幼馴染が容疑者として逮捕された事から、彼女を助けようと弁護を引き受ける。

奇妙な事にその殺人事件は学園祭の目玉であった模擬裁判の内容に酷似した見立てが行われており、
成歩堂が語る今の法曹界を包む闇、「結果の為なら手段を選ばず、冤罪や捏造が横行する」と言う「法の暗黒時代」の渦中にあるこの学園と、
ある出来事がきっかけとなって友情に亀裂が入りつつあった被告人とその友人達の関係が事件を混迷させる中、
初めて弁護を主導する立場として法廷に立った心音は、幼馴染を救うべく、王泥喜達と共に謎を暴いていく。


・第4話「星になった逆転」

その日、王泥喜は心音と共に宇宙センターで起きた殺人事件の被告人の弁護を請け負っていた。
事件で亡くなった被害者が昔からの親友だった事もあり、
王泥喜は何時にもまして気合を入れて法廷に立ち、圧倒的に不利な状況から逆転への突破口を見つけ出すのだが、
その時、「法廷爆破事件」が発生し、王泥喜は大怪我を負ってしまう・・・。

それから数日後、「法廷爆破事件」は成歩堂と心音の活躍もあって一応の解決を見たが、宇宙センターの事件は未解決であり、
入院した王泥喜に代わって成歩堂と心音が調査に乗り出す事となった。

調査の中で成歩堂達は今回の事件が7年前に宇宙センターで起きたある事件と関連があることを知り、
その一方で王泥喜は独自に事件の真相を追い求める為に、成歩堂の事務所を出て行ってしまう。

かくして再び裁判は開廷し、成歩堂と心音は事件の謎を暴いていく。


・第5話「未来への逆転」

宇宙センターで起きた事件の裁判は最後の決め手となった駆け込みの証拠品によって一応の解決を見る筈であった。
しかし、その証拠品は成歩堂の身近な人物が犯人であると示すものであり、裁判は新たな様相を呈する事となる。

被告人達を信じ、真実を暴かんとする成歩堂、
殺された親友の為にも事件の真相を暴こうと別行動を取る王泥喜、
7年前に宇宙センターで起きた「UR-1号事件」が原因となって心に深いトラウマの枷が掛けられた心音、
大切な者を守る為なら命すら賭ける夕神に、法曹界の闇に関わる存在、無貌の「亡霊」を追う御剣、
真実を求める者達は弁護士と検事の2つの立場から未来を切り開く為に、全ての真実と「亡霊」の正体を暴いていく。



・特別編「逆転の帰還」

その日、成歩堂は8年ぶりに弁護士の資格を取り戻し、復活を成し遂げた。
しかし、そんな彼の感慨に対して事務所に所属する弁護士である王泥喜と心音は最近話題の水族館のショーに夢中になっていた。

そんな時、その水族館のショーに出演している女性従業員から事務所にとある弁護の依頼が舞い込んできた。
これを弁護士復帰の最初の仕事にする事となった成歩堂は現場の調査を行い、懐かしい顔とも再会しつつ、
その復帰戦となる前代未聞の裁判が開廷する。

このエピソードは有料DLCとなっている。


・クイズ 逆転推理

ある日、王泥喜とみぬきは事務所に閉じ込められ、クイズクンなるものからの挑戦を受ける事になる。
その挑戦とはクイズであり、王泥喜とみぬきは事務所内に隠されたカードに記載されたクイズに答えていく事になる。

何とか全問正解する王泥喜であったが、クイズクンは所用で外出中だった成歩堂や心音にも同様のクイズを仕掛けており、
成歩堂なんでも事務所の弁護士達は、出題されたクイズを解いて行く。

クイズ集で構成された有料DLCのスペシャルコンテンツ。




●難点

本作ではシリーズお馴染みの「調べる」コマンドが使える場所が限られており、
現場の捜査に特化したシンプルさがある反面、「調べる」を使った際の小ネタに物足りなさがある感は否めません。
また、証拠品の立体的な検分やカガク捜査系ギミックも大幅に省略されており、
ココロ・スコープやカンガエルートと言った新ギミックを存分に楽しめる反面、
旧来のギミックは「サイコ・ロック」や「みぬく」を除くとそんなに無いです。

ゲームとしては良く言えばシンプル、悪く言えば物足りなさがある本作ですが、
逆転裁判4の反省点を活かし、逆転検事シリーズに続いてシリーズの復権の立役者となったのもまた事実であり、
本作自体の反省点はあるものの、逆転裁判シリーズらしい面白さもたっぷりあります。

また、有料DLCではありますが、
やり応え抜群なスペシャルエピソードの「逆転の帰還」や、多数のクイズを解いていく「クイズ 逆転推理」と、
本編に加えて後から遊べるDLCの面白さとボリュームの面では、続編の「逆転裁判6」にも勝る面があると思います。