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handmanさんのナツユメナギサの長文感想

ユーザー
handman
ゲーム
ナツユメナギサ
ブランド
SAGA PLANETS
得点
85
参照数
1294

一言コメント

粗は少ないですが、突出したものが無いかな。最後まで凪のごとく静かに進んでいく作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

プロローグでは、幻想的で不思議な感覚になるテキスト。
正直なところ、この作品のテキスト(描写風景や言葉の使い方・描き方など)で一番好きなところはプロローグといってもいいです。
流し読みではそんな感想もないと思いますが、色々想像を駆使させてくれて
またそのミステリアスのなかにも面白い描写を感じられる。
なるほど・・・全てのテキストを飛ばさずに読み通すのは面倒くさいけれど、隙が無いですね。
その後の伏線の回収も丁寧。

もう死んでしまった主人公渚は夢が終われば消えるだけの存在。
なのですが、綺麗な終わり方なので、私はいい終わり方だと評価したいと思いますね。鬱といえば鬱。でもまぁ嫌いではないです。


かなりのレビュー数が書かれているようなので、どうせダラダラ批評しても中身が他人とかぶるだけでしょう。
だから以降は、気になったこと・わからなかったことを中心にまとめます。

★音々がいてもいなくてもどうでもいいような存在だった。
月島に惹かれてると思っていたし、そう思われる描写も多々ありましたが、
明確にそういう台詞があるわけでもなく、月島が女だとわかるシーンでも 
「んーOK。そりゃショックだけど、それはそれであり。」と謎の言葉を残す。
あるぇ~?

本編に重要なキーキャラは大河内と歩にほぼ持ってかれて、キーキャラとしても存在感が薄い上、攻略できるわけでもない。
本当に微妙なお方。

★本編に入ってからの言葉でAV用語とかがある ちょっと雰囲気壊れるなぁ
つかさ日常ルートはしょっぱいテキストです。プロローグが90点ならその半分の45点くらい。
役人とのやり取りは必要でしたか?ライターの愚痴。

★潮の流れが急でダイバーでも近づかないよ⇒どれくらいか泳ぎ続けたら辿り着いた っておいww
そして渦潮にのみこまれる
記憶をその都度無くすとはいえ何度溺れるのかとw

★羊ルートのスカウトさん
芸能スカウトの人は、何故千尋と羊が同一人物であると確信することが出来たのか?
『君が知らされていないというのなら、
こいつ(=美浜千尋に関する資料)を見ないほうがいいのかもしれない。
君のためのも 彼女のためにも。 
それは君が決めるといい。きっと君だけが知る権利があるから。』
何ゆえ、火傷跡の無い羊を千尋とイコールで結べたのか。
NPCみたいな存在だった?それとも羊と千尋は繋がりがありそうだが別人という認識をしていた?
わからなかったこと1

★真樹ルートで、
真実に気づくと戻ってこれないとあったが、
何故本当の自分を取り戻した真樹が、はじまりの場所に居るのか。
はじまりの場所の意味は?ループ世界の入り口?
消える前の残留体だったが、とりあえず次の夏へ移動してはじまりの場所にいた?
それとも、止まった時間を進めたいと思わなければ戻ってこれるということなのだろうか。
わからなかったこと2

★診療所スタッフ有田のエピソードもはるかルートで混ぜたのはうまいと思った。
ここで一番気になるのが、夢世界でのサナトリウムの存在。
夢世界の診療所が辿りつけそうで辿り付けない場所のような感じだったのは何故なのか。
現実のサナトリウムに歩が眠っていたから?
夢世界での有田の台詞のように、「地図にも載ってない場所ですので、関係者か遭難者以外辿り付けない」
しかし、歩は夢世界ではほぼ居ないのと同じ扱いだったわけですし。
千尋に会いに行くのにここで戻れば二度と辿りつけなくなるという理由とも絡んで、
わからなかったこと3。

★真樹ルートでホープランドを出ると戻ってこれなくなるシーン。
ホープランド外部(本土)は当然歩の夢の範疇からは外れるはずだが、本土では現実世界に戻るのか?
それとも月島の夢の延長として半分夢の世界の話で、
しかし、クリスマスの効果範囲外なので、夢であることに気が付いた?
いまいちわかりそうでわからない部分。
わからなかったこと4。

★大河内が夢の特異点として存在できた理由は何か。
わからなかったこと5。



なかなか伏線を読みきれず難解な部分も少しありましたが、
大筋はナツユメルートであっけなくネタバレされるので、大した問題でもないでしょう。
萌えを期待しても羊以外はあまり良くないです。
シナリオの本筋のネタは、二番三番四番煎じくらいの新しいものでもありませんが
世界観の丁寧な作りこみ、昇華の仕方は粗が少ないので気になりません。
ただナツユメルートでのあっけないネタバレとかは目につくところかも。

粗は少ないですが、斬新や新鮮さには欠ける作品でもあり
突出したものがないのが点数伸び悩みの一番大きいところかな。
個人的にシご都合主義はありますが冷めるやり方ではない 綺麗にまとめる 粗が少ない などは評価し +5補正です。
泣くほどのものでもないですが、悲哀が嫌いでなければお勧めできる作品だと思います。